search地図から探す
ぶれすと尻手ほいくえんのインタビュー「自分を信じてやりたいことに挑戦できる「心が自由な人」になってほしい 大沼由美先生」のトップ画像

自分を信じてやりたいことに挑戦できる「心が自由な人」になってほしい 大沼由美先生

ぶれすと尻手ほいくえん
公開日2024年12月18日

今回お話を聞いた方

大沼
大沼由美 (園長)

出身地:神奈川県横須賀市 勤務先:神奈川県横浜市・認可保育園 保育園勤務歴:7年 園長先生歴:4年目 趣味:料理、手仕事、近所のスパで岩盤浴

「理想の保育」を追求しきれなかった20代の頃

ー大沼先生は、保育士になる前は幼稚園の先生をされていたそうですね。

はい。幼稚園教諭の免許を取得したあと、自宅から徒歩で通える幼稚園に3年ほど勤めていました。


ー幼稚園の先生になりたいと思ったきっかけはなんだったのでしょう。

大学受験に失敗して、何がしたいのかわからず悶々と過ごしていたころ、友人から幼稚園でのボランティアに誘ってもらったんです。園で課外活動のお手伝いをしていたとき、ふと中学時代の体験を思い出しました。

当時、中学の美術の授業で「10年後の自分を描く」という課題があったんです。10年後って全然想像がつかなくて、それなら「10年前」はどうだろう? と思い返してみると、幼稚園時代の記憶が湧き上がってきました。そのとき「そういえば、幼稚園の先生が素敵だったな」と思い出して、幼稚園で働く自分の姿を絵に描いたんです。

優しく大好きだった幼稚園の先生、中学時代の絵、そして高校卒業後、幼稚園のボランティアで感じた充実感から「幼稚園の先生になりたい!絶対なる!」と決意しました。親には「大変な仕事だからやめておきなさい」と反対されたので、一般企業で事務員をして、自分でお金を貯めて資格を取ったんです。


ー幼稚園の先生になられたあと、海外の園でもボランティアをされていたと伺いました。

今も昔も好奇心旺盛でやりたいことがたくさんあって(笑)。海外に興味があり、1年ほどイギリスへ語学留学して、そのうちの半年は、現地の幼稚園でボランティアをしていました。

日本で勤めていた幼稚園では、鼓笛隊の指導を通して、集団行動ができることや宗教を重視した教育を行っていました。でも、留学中にお手伝いしていた園では、個々の成長段階や興味にあわせて、一人ひとりに寄り添った活動をしていたんです。それを見て、「幼児教育ってこんなに多様なんだ!」と感銘を受けました。そして、違うやり方を知った上で、日本の幼稚園時代を振り返ると、子どもたちをクラス単位で見ることが多く、個々をしっかり見て保育した覚えがないことに気づきました。

イギリスで学んだことを持ち帰って、子どもに向き合いたいと思い、帰国後は日本の無認可の保育園に就職しました。そこで、初めて園長職を経験しました。


ーその当時、園長になった経緯を教えていただけますか。

最初は保育者として入社したのですが、働き始めてから数か月後に新しい保育園を立ち上げる話が持ち上がったんですよ。「園長になれば、自分が理想とする個々を見る保育や教育が実践できるかもしれない」と思い、自ら立候補して、イギリスでふれたモンテッソーリ教育の考えをベースに保育園の運営を進めていきました。

2年ほど園長を務めたあとは、保育園を運営する会社に転職し、園の運営をサポートするスーパーバイザーとして働きました。当時の主な仕事は、保育園の売上アップのための企画を考えること。例えば、近所の映画館とコラボレーションしたイベントを企画したこともありましたね。


ー持ち前の好奇心を活かして、いろんな現場で活躍されていたのですね。

園長の仕事もスーパーバイザーの仕事も刺激があって、すごく楽しかったんですよ。ただ、当時働いていた園の方針は「利益の追求最優先」でしたし、スーパーバイザーの仕事も「売上アップ」が何よりも重要視されていました。もちろん、売上は園を運営していくうえでは大事なことのひとつです。でも、「子ども主体の現場なはずなのに、どうして真ん中に子どもがいないんだろう」とモヤモヤすることも多かったですね。

ちょうどその頃、結婚をきっかけに渡米することになり、日本の保育現場を離れることになりました。そこから約20年間は、子育てをしながらアメリカの自宅で小規模な親子教室を開催したり、日本語幼稚園の先生をしたり、日本語学校で小学校低学年を受け持ったり、現地校のキンダーでアシスタントをしたり……子どもにまつわるさまざまな仕事を経験しました。

自宅での親子教室は、我が子を通じて仲良くなった日本人のママ友から「日本語を学べるクラスがほしい」と相談されたのが始まりです。我が子の成長に合わせて対象年齢も上がっていって、振り返ってみると1歳から小学生くらいまでの、幅広い年齢の子どもたちに日本語を学びながら遊べる場を提供していました。そして、そこでの経験から、「やっぱり幼児期こそ、子ども主体の教育が大切だ」と強く思うようになりました。

幼児期は、土の中で非認知能力が育つ「種まきの時期」です。子どもによって、種の種類も植える時期も違います。芽が出る季節も、花が咲くタイミングも人それぞれ。私たち大人が「この時期に一斉に花を咲かせなきゃ」と必死になっても、うまくいくわけないんですよね。私たちにできるのは、それぞれの種にあった環境を整えてあげることだと再認識しました。そして忘れてはいけないのは、保育者自身も子どもにとっての環境そのものだということです。


子どもの主体的な育ちを見守りたい

ー現在はアメリカから帰国されて、日本の保育園で園長として活躍されています。

もともと、「息子が大学生になったら子育てはひと段落。日本に戻ろう」と決めていました。そして戻ったら、また日本の保育園で働きたいと考えました。20代の園長時代を振り返ると、どうしても不完全燃焼の思いがあったんです。当時はとにかく情熱と勢いで、自分の理想を追求していましたが、保育業界のこともマネジメントの方法も知らないことだらけでした。人生経験を積んだ今、園長としてよりよい幼児教育の追及に再チャレンジしたい、と思っていました。そこでご縁があったのが、現在働いている園です。「違いを認めて学び合う」という理念が心にひびきました。


ー園長に再就任されて、現在4年目となりました。以前園長をされていたときから、どんな変化を感じていますか?

この20年で保育業界が大きく変わったと感じています。保育園の数も増えて、働きたい人が園を見つけやすくなりました。ICTの導入が盛んなことにも驚きました。保育所保育指針も改定され、保育も変化しています。私自身もこれまで、さまざまな場面や役割を経験してきました。だからこそ、いろんな角度から物事を見られるようになりましたし、それに応じて柔軟な対応ができるようになったんじゃないかな、と思います。


ー「多角的に見られるようになった」と思う、保育園でのエピソードを教えていただけますか。

海外生活を経験したことにより、異なる文化や生活習慣の違い・価値観を理解できるようになりました。今働いている園には、多国籍のご家族や職員が多く在籍していますが、皆さんそれぞれをオープンな気持ちで受け入れられていると思います。

また、子育ての経験から保護者の立場になって考えることができるようになりました。仕事と家庭の両立の苦労、家庭内の複雑な状況、忙しい中での子育てに悩む保護者に対して、自身の経験をもとに具体的なアドバイスをしたり、しっかりと気持ちに寄り添うことができるようになったと感じます。

保育に関しては、子どもの主体性をより尊重するようになりました。例えば、2歳の子どもが高い段差を登ろうとしているとします。安全第一の観点から、以前は「危ないから登らないようにしようね」と言葉をかけ、制止することが多かったように思います。でも今は、「身体の機能が発達して、いろんな動きができる喜びを味わっている時期」と捉えられるようになりました。子どもの主体的な行動は、遊びであり、学びですからね。ケガをしないよう注視しながら、その挑戦を見守る大切さを感じています。


保育士は、「未来」そのものである子どもたちと関わる仕事

ー園長として、今後挑戦したいことはありますか?

まずは、若い先生方にとっての「よいお手本」になりたいですね。そして、先生たちの「やってみたい!」を支える縁の下の力持ちでいたいです。そのためには、私も自分の能力を磨くため、学び、成長し続ける必要があります。実は今は、シュタイナー教育を探求しているんですよ(笑)。先生方には、多くを楽しく学んで「いつかは園長に!」と思ってもらいたいです。保育士のキャリアパスとして、園長を目指す方が増えると嬉しいです。

あとのことは具体的に考えているわけではありませんが……もし、「園長」という立場でなくなっても、一生子どもたちと関わる仕事をしていきたいですね。子どもは「未来」そのものだと思うんです。つまり、保育者の仕事次第で、未来は変わるかもしれません。だからこそ、本当の意味で子どもたちに寄り添える教育をこれからも追求し続けたいですね。


ー「子どもは未来そのもの」とのことですが、大沼先生は子どもたちにどんな大人になってほしいと思って保育されているのでしょうか。

自分を信じて、やりたいことに挑戦できる「心が自由な人」になってほしい。その結果、成功したらとても素敵ですが、もし失敗したとしても「挑戦した自分」を認めてあげられる、挑戦できたことを幸せに思える大人になってほしいです。失敗から学ぶことは必ずあり、失敗は次の挑戦へのスタートになるのだと思っています。あともうひとつ、自分の大事なものと人の大事なものを大切にできる人になってほしいですね。


ーありがとうございます。最後に、保育士を目指している方に向けてメッセージをいただけますか。

保育士は子どもたちの日々の小さな変化や、成長を隣で見守ることができる、とてもやりがいのある仕事です。 子どもたちから学ばせてもらうことも多く、そのたびに「大人になっても、まだまだ成長できるんだな」と実感できるのが嬉しいんですよ。発見の連続で、私は毎日楽しく過ごさせてもらっています。

ただその分、大変なことが多いのも事実です。子どもたちのことを真剣に考えている方ほど、「自分に務まるだろうか」と悩んでいるかもしれません。そんな方は、まずは自分が「子どもたちとどう関わりたいか」を考えてみてください。保育現場は、ひとりではなくチームで子どもたちと関わっています。だから、悩みや不安をひとりで抱える必要はありませんし、自分らしい保育ができる現場はきっとあるはずです。

未来をつくる子どもたちに寄り添う保育士さんが増えることを、心から願っています。


(取材・文:仲奈々、撮影:池田博美、編集:ホイシル編集部)


「すてきな園長先生」ほかの記事を読む

【推薦募集中】あなたの周りの「すてきな園長先生」教えてください

施設情報

形態
認可保育園(60名)
設立
2017年
所在地
神奈川県横浜市鶴見区尻手1-4-51
掲載施設数
No.1
ネット受付施設数
No.1
2024 年 7 月期_指定領域における市場調査
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構