「保育士になりたいけれど、進学できる金銭的な余裕がない」という方や「別分野の大学に進学したけれど、やっぱり保育士になりたい」と進路変更を希望する方、「今の仕事をやめて、保育士になって転職したい」とお考えの社会人の方など、保育士になる夢をお持ちの方はたくさんいらっしゃると思います。しかし、資格取得のために保育士の養成校に通うのは難しく、保育士の夢を諦めなくてはいけないとお思いの方も少なくないのではないでしょうか。
今回の記事では、養成校に通わずに、国家試験を受験して保育士資格を取得する方法についてご紹介します。保育士を目指す人はぜひ国家試験の受験という選択も考えてみてくださいね。
そもそも保育士とは?
保育士とは、児童福祉法において「保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。」と定められています。名称独占資格であるため、資格のない人は保育士を名乗ることができません。そのため保育士として働くには養成校を卒業するか、国家試験に合格し保育士資格を取得必要があるのです。
保育士資格の取得方法
前述のとおり、保育士の資格を取得するには大きく2通りの方法があります。ひとつは都道府県で実施されている保育士試験という国家試験を受験して合格する方法。もうひとつは養成校に通い、単位を取得して卒業する方法です。
国家試験で取得
国家試験ではありますが、その試験は都道府県ごとに実施されています。年2回実施されているのでそのどちらかを受験しましょう。合格後は、都道府県に保育士としての登録が必要になります。
養成校で取得
卒業することで保育士資格を取得することができる、保育士養成施設と認定された学校に通います。
4年制大学や短期大学、専門学校など自分に合った学校を選びましょう。詳しくは『保育士資格を取得できる学校の種類』を参考にしてください。
通信講座で勉強する
通信講座とは、オンラインの教材や郵送での添削で資格取得に向けてサポートしてくれる勉強方法です。筆記試験への対策に加え、最近では実技のサポートをしてくれる通信講座も出てきています。
メリット
通信講座は、現在保育と関係のない学校に通っている方や、社会人の方におすすめの勉強方法と言えます。新たに大学や専門学校に通うことを考えると、時間も費用も大幅に節約できるからです。
また、通信講座は自分の好きなタイミングで勉強できます。夜寝る前や、朝活、もしくは昼休みなどを使って自分で勉強時間を決めて取り組めることが大きなメリットと言えるでしょう。
デメリット
学校と違い、決まった時間に講義に出席すれば教えてもらえるというわけではないため、自分で勉強スケジュールを立てて取り組むのが苦手な方にはおすすめできません。好きな時間に取り組めるということはメリットでもありますが、同時に自分でモチベーションやスケジュールを管理しなければならないという点は、人によってはデメリットにもなります。通信講座の中には数年のサポート期間を設けているものもありますので、受講の際には自分のタイプに合った教材を選ぶ必要があるでしょう。
参考書をもとに独学で勉強する
一般に販売されている保育士資格取得に向けた参考書や過去問題集を購入して、自分で勉強する方法です。筆記、実技どちらも多くの参考書が出版されています。
メリット
一番のメリットは費用の安さと言えるでしょう。メインで勉強する参考書を数冊買っても、通信講座よりさらに安く済みます。通信講座と違い、添削物の提出や期限もありませんので、より自分の都合のいいようにスケジュールを立てたり、途中で期間が空いてしまっても自由にやり直すことができます。最近では実技対策の動画を投稿している現役保育士の方がいたりと勉強できるコンテンツも増えていますので、昔ほど対策が難しい状況ではないと言えます。
デメリット
通信講座と同様、自分でスケジュールを立てて勉強を進めていくのが苦手な方には難しい方法と言えるでしょう。添削や試験があるわけではないので、1人でこつこつと勉強を積み重ねていく努力とモチベーションの維持が必要になります。
また、実技対策においては参考書や動画がある一方で、自分で自分の実技を確認しながら取り組むことになるため、どうしても効率が悪くなってしまいます。
もう一点、1人で取り組むデメリットがあります。それは法改正についての情報収集が難しいことです。数年単位で法改正が行われているため、古い情報をそのまま覚えてしまうと試験でのミスにつながります。参考書は最新の年度のものを選んだり、自分で厚生労働省のサイトをはじめ法改正が行われていないか検索して確認する必要があります。
保育士の国家試験の内容と受験資格
それでは実際の試験はどのような内容になっているのでしょうか。筆記試験、実技試験の内容について、そして気になる受験資格について簡単にご紹介します。
筆記試験
筆記試験は全部で8教科と広範囲に渡ります。マークシート方式で、1科目につき60点以上で合格となります。各教科は以下のとおりです。
● 保育原理
● 教育原理及び社会的養護
● 子ども家庭福祉
● 社会福祉
● 保育の心理学
● 子どもの保健
● 子どもの食と栄養
● 保育実習理論
ただし、2の教育原理及び社会的養護は2科目で1教科の扱いとなっているため、科目としては9科目あることになります。
それぞれの教科や出題について、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
実技試験
筆記試験を全てクリアすると、実技試験を受験することができます。
音楽、造形、言語の3つの分野から2つを選んで受験することになります。それぞれの課題など、内容については毎年違うためチェックが必要です。特に令和2年度は新型コロナウイルスの影響で音楽の分野は実施されませんでした。
実技について、詳しくはこちらの記事を参考にしてください
受験資格
保育士試験には受験資格があり、その資格がない方はそもそも受験することができません。せっかく勉強しても受験できないとなっては労力が水の泡になってしまいますので、事前にチェックしておきましょう。
基本的には「学校教育法に基づく」大学、短期大学、2年以上の専修課程がある専門学校などを卒業、または卒業予定であれば受験することが可能です。高校卒業については、平成3年以前の卒業生の場合や、児童福祉法に基づく施設での勤務経験などが必要ですので、不安な方は現在通っている高校や大学、そして社会人の方は卒業した学校へ問い合わせたり、インターネットで情報を収集するとよいでしょう。
参考:一般社団法人 全国保育士養成協議会「保育士試験受験資格」
養成校へ行かなくても試験対策は可能です!
今回は国家試験を受験して、保育士資格を取得する方法について紹介しました。保育士と言えば養成校を卒業している方がほとんどですが、独学で試験を突破している方もたくさんいます。
どうしても保育士になりたいという強い意思があれば、養成校に通わずともいろいろな対策ができますので、諦めずにここに紹介した方法を試してみてください。