保育園の運営法人について考えてみたことはありますか?
○○保育園の名前の前に、「社会福祉法人○○」「△△株式会社」というような名称がついているかと思います。それこそが保育園の運営法人です。
保育園の運営法人によって、保育士の働き方や保育にどんな違いがあるか、就職や実習で何か違う部分があるのか気になりますよね。
今回は保育園の運営法人の違いについてお話したいと思います。
保育園の運営法人には何があるの?
保育園の運営法人は、例に挙げた社会福祉法人や株式会社以外にもさまざまです。
どんなものがあるのか、まずは簡単に説明します。
社会福祉法人
社会福祉法人は「社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人」と定義されています。
保育所だけではなく介護施設といった高齢者サービスなど社会福祉法に基づいた社会福祉事業を行うことができます。
設立や運営には細かい決まりがあり、認可されると国から補助をうけることができます。
株式会社
事業を興す際に必要な資金を投資家から集め、それに対して株式(受け取った資金に対する証書)を発行する会社を「株式会社」といいます。
株式会社は営利目的での事業が認められており、設立も社会福祉法人と比べると容易に行うことが可能です。
保育業界では2000年に規制緩和され、関東圏を中心に保育施設を運営する株式会社が増えています。
宗教法人
宗教法人は,教義をひろめ,儀式行事を行い,及び信者を教化育成することを主たる目的とする団体,つまり「宗教団体」が都道府県知事若しくは文部科学大臣の認証を経て法人格を取得したものです。
宗教法人の中には、以下のようなものがあります。
・キリスト教系
・仏教系
・神道系
・諸教
働く保育士が必ずその宗教の信者である必要はありません。
ですが、宗教行事や宗教の考えを保育に取り入れている保育園は多いです。
参考:宗教法人概要|文化庁
学校法人
学校法人とは、私立の幼稚園や中学校、高校、大学などの設置を目的に設立される公益法人のことです。株式会社のように営利を目的とするのではなく、公益の増進を図るために設立されます。
保育園の管轄は厚生労働省で、学校法人の承認は文部科学省となるため、学校法人が直接運営元になっている保育園はそこまで多くありません。
幼稚園に併設された保育園や、認定こども園に多いです。
NPO法人
NPO法人は特定非営利活動法人の略です。
特定非営利活動(定められた20種類)を行う団体に法人格を付与すること等により、 ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進することを目的として、平成10年12月に施行されました。
お母さんたち数人で保育園を一から立ち上げた、元々は小規模な保育園だったというような保育園が多いです。
参考:特定非営利活動法人(NPO法人)制度の概要 | NPOホームページ
個人経営
法人や株式会社といった形態をとらず、個人で運営している保育園です。代表者が個人事業主として保育園を運営しています。最近はほとんどみませんが、園長先生が運営者と考えるとわかりやすいかと思います。
運営法人による違いはある?
保育園の運営法人によって違いはあるのか、これから実習や就職を控えていると気になるところですよね。一般的な違いを簡単にまとめてみました。
社会福祉法人 | 株式会社 | |
事業の目的 | 福祉事業 | 特に制限なし |
資金 | 寄付金・補助金など | 株式・債券発行など |
設立のために必要な人数 | 規定有 | 経営者1人でも可 |
税金 | 原則非課税 | 課税 |
補助金(施設設備) | あり | なし |
補助金(運営) | あり | あり |
自治体による補助金加算 | あり | なしのところが多い |
認定こども園の参入 | 可 | 保育所型・地方裁量型のみ可 |
これから働く保育士にとって直接関係してくるのは補助金のところでしょう。
社会福祉法人は施設設備に対しても補助金がでますが、株式会社にはありません。株式会社は施設維持のため、別のところから資金を補う必要があります。
一方で、社会福祉法人は営利を目的としていないため、株式会社に比べて園内の備品や玩具に予算が取りずらい場合があります。
具体的に社会福祉法人と株式会社でどんな違いがあるのか見ていきましょう。
参考:社会福祉法人の現状|厚生労働省、子ども子育て新制度について|文部科学省
社会福祉法人の保育園で働くメリット
運営の違いはあるにせよ、社会福祉法人の保育園で働くことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
経営が長くしっかりしているところが多い
株式会社が保育園事業に参入したのは2000年からですが、社会福祉法人はそれよりも前から保育園を運営しています。
例え、その保育園が最近設立されたとしても、保育園の運営法人はもっと前からあり、系列で違う園を何十年も経営しているという所も多いです。
経営が長いため保育方針や経営方針がしっかりしており、保育ノウハウが定まっているため、新卒で働いたとしても先輩がしっかりフォローし、指導する体制を整えられています。
働いている保育士の年齢層が厚い
長く運営している保育園が多いため、年齢層が厚く、幅広い世代の保育士が働いているところが多いです。若い先生だけだと子育てをしたことが無い人が多く、保護者支援について知っている先生が少ないということもあります。
年齢層が厚く、さまざまな意見を取り入れられるのは歴史の長い社会福祉法人ならではです。
地域に根付いた保育を行っている
長い間保育園を運営していたり、近くで高齢者向けの社会福祉施設を運営していたりする社会福祉法人が多く、地域から愛されている傾向が強いです。
特に保育園や幼稚園に対し「子どもの声が騒音だから外遊びを控えてほしい」「新しい園を作ることに反対」というニュースを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
地域に根付いた運営を行っているからこそ、そういったトラブルが少ないのも社会福祉法人の保育園の魅力です。
安定した法人は賞与額が多い傾向
株式会社の保育園と違い、補助金や助成金で運営されている社会福祉法人は、業績に左右されるということが少ないため、賞与額が多い傾向にあります。
全ての社会福祉法人の保育園に当てはまるというわけではありませんが、株式会社の保育園は業績により賞与額が毎年異なるのに対し、社会福祉法人はほぼ一定の額を毎年与えられることができています。
安定して働きたいという場合には、社会福祉法人の保育園は魅力的と言えるでしょう。
株式会社の保育園で働くメリット
株式会社というと「子どもを商品だと思っているのではないか」という不安を抱く方が多少なりともいらっしゃると思います。
確かに営利を目的としている会社のため、保育を一部のサービスとして捉えている視点は少なからず持ち合わせている可能性は高いです。一方で、サービスの一部と考えることで『子どものため』『保護者のため』と利用者を第一に考えている側面もあります。
福利厚生が充実
株式会社が運営している保育園の中には、保育業界以外で活躍している企業も多くあります。例えば、大手建築会社や大手出版会社など一般企業が保育事業も展開しているケースもあります。
運営法人が様々な業界に活躍しているからこそ、福利厚生が充実しており、多数の保養所を所有していたり、外部の福利厚生サービスを活用できるというところは大きなメリットです。また、系列会社のサービスを社員価格で安く利用できるという株式会社もあります。
就職活動などで会社情報を調べる時は福利厚生が充実しているかも確認することをおすすめします。
系列園が多く、転居や異動が可能
関東を中心に多いところでは全国に100以上の保育園を運営している株式会社もあります。
結婚して旦那さんの職場の近いところに引っ越すとなったときでも、系列園が多い株式会社の場合、退職ではなく異動という選択をとることも可能です。
退職してしまうと有給休暇が無くなったり、転職活動が必要になったりしますが、異動であれば環境は変わるものの、有給休暇はそのまま持ち越され、基本的には同じ系列なので保育内容に大きな違いはありません。
規模が大きい株式会社だからこそできる魅力ですね。
同世代の若い先生が多い
系列園の数が多いので、新卒保育士や、中途保育士の採用率も高く、同世代の先生が多いです。保育園によっては平均年齢が20代という保育園もあります。
同世代の先生が多いので、お互い意見も言いやすく、仕事がしやすいというメリットがあります。
本部付の職員などキャリアの幅が広い
系列園が多く新園を開設することも頻繁に行われているため、A園の主任が新園で園長に。空いた主任のポジションをA園で働く保育士から選出……と、キャリアアップ(昇進)のタイミングが多くあります。
また、保育園で働く保育士だけではなく、本部(株式会社直属)付の保育士として、多数の保育園のサポートに入る役職に就いたり、保育士の経験を活かして人事部に異動したりと、保育以外のキャリアを目指すこともできます。
さまざまな挑戦ができるのは、規模が大きい株式会社ならではです。
自分に合った保育園探しが大事!
株式会社、社会福祉法人など保育園の運営法人はさまざまですが、どこの運営法人でも「子ども」を大切に考えていることに違いはありません。
それぞれに良いところがあるので、自分のやりたい保育や、目指している保育像にあった方針をかかげている保育園を選ぶと良いですね。