以前保育士をしていた人がもう一度保育士として働こうと考えたとき、「子育てと家庭の両立はできるかな」「今の保育についていけるか心配」という不安を感じる方は多いです。
事実、保育士の資格を持ちながら、現在は保育士として働いていない人が全国に約80万人います。
そこで今回は、再就職に不安を感じている保育士の方に、その不安の解消法や今の保育環境がどのように変わっているのか、詳しくご紹介します。
「子どもと接することが好き」「資格を活かして子どもと関わる仕事をしたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
保育士の働く環境は良くなってきている
資格保有者の約67%が保育士として働いていない「潜在保育士」であることをご存知でしょうか。
保育施設の数は増加しているものの、肝心の「待機児童」の問題は一向に解決しません。
その原因の一つとして、保育現場の人材不足があげられます。
そこで注目されているのが潜在保育士です。
潜在保育士を復職させるために、国や自治体による様々なサポートが展開されています。
例えば、「処遇改善手当の加算」「ICT導入で残業減への取り組み」「再就職支援」などです。
改善要望の多い、給与面や仕事面を国や自治体がサポートすることで、潜在保育士が復職したいと思える労働環境にするための改善が進んでいます。
以前、保育士として働いていた人が最近の求人情報を見たら「保育士の働く環境が良くなってきた」と感じるかもしれません。
出典:潜在保育士の6割が保育士として就労を希望/株式会社野村総合研究所 未来創発センター
処遇改善手当の増加により保育士の年収は増えている
厚生労働省の調査によると、保育士の退職の原因はずばり「給料の低さ」です。
命を預かる責任の重さや、仕事の量の多さから、給料が見合わないと感じている保育士が多くいます。
こうした現状から、2013年に「処遇改善手当」を支給する制度が作られました。処遇改善手当とは、「保育士の給料を増やす」ための補助金のことで、2017年には月額3万円ほど支給されています。
いったいどれくらい保育士の年収が増えているのか、平均年収の推移を表にまとめてみました。
年 | 平均年収 |
2018年 | 358万円 |
2017年 | 342万円 |
2016年 | 327万円 |
2015年 | 323万円 |
2014年 | 317万円 |
2013年 | 310万円 |
5年で約50万円ほど増えていますね。
これは、処遇改善手当が年々増加しているためです。
このように、国によって保育士の処遇改善が進められいますが、注意したいことが1つあります。それは、実際にどれくらいの手当が給料に反映するかは、園の方針によって異なるということです。
そのため、処遇改善手当を明確なカタチで支給している園は、保育士にとって働きやすい職場と言えます。
なお、処遇改善手当は基本給と別枠の扱いなので、求人情報には「基本月収22万円~+別途処遇改善手当〇〇円支給」のように記載しなくてはなりません。正しく記載されているか、求人情報を見る際は注意しましょう。
国や自治体の処遇改善について紹介していますのでご参考ください。
ICT導入で残業への意識改革が進む
ICTとは、保育記録や事務処理などをパソコンやスマートフォンを使って効率化・省力化するデジタル技術ことです。
例えば、連絡帳がスマートフォンから手軽に作成できたり、アプリを使ってお便りを配信できたりします。また、効率よくデジタル化することでペーパーレス化も実現してきています。
厚生労働省の調査によると、ICT導入により以下のような効果がでています。
主な作業 | ICT導入前 | ICT導入後 | 削減時間 |
月間指導計画 | 2.5時間 | 2.1時間 | 24分 |
個人記録 | 4.5時間 | 2.3時間 | 2時間12分 |
連絡帳 | 6.1時間 | 3.5時間 | 2時間36分 |
国は、ICTシステムの導入を積極的に支援しており、さまざまな補助金制度が用意されています。そのため、ICTシステムを導入を検討する園が増えてきています。
このように、残業を減らす取り組みが推進され、保育士のプライベートを充実させたり、子どもと向き合う時間を長くしたりする改革が進んでいます。
保育士不足解消のために国や自治体が再就職をサポート
潜在保育士の再就職を応援するさまざまな支援があることはご存知でしょうか。
なかでも、都道府県や地方自治体が中心となって運営している保育士・保育所支援センターでは、保育に特化した再就職サポートを中心に就業支援を行なっています。
サポートの内容はセンターによって異るので、ホームページなどを見たり、一度足を運んでみたりするのもいいかもしれません。
他にも、各自治体で独自に支援を行なっている場合があります。
例えば、東京都では「おかえり保育士」というガイドブックを発行し、潜在保育士の再就職をサポートする制度をわかりやすく紹介しています。
情報を得るためには、お住まいの都道府県や市区町村のHPを見てみましょう。
保育士復帰への不安を解消する方法3つ
「働く環境が良くなったなら再就職したい」と思う方もいるでしょう。しかし現実は、給料面に限らずさまざまな不安があるものです。
そこで、潜在保育士にとって不安を感じやすい「仕事と家庭の両立」「保育スキル」「人間関係」の3つの不安について、解消方法を紹介します。
仕事と家庭を両立できるか。時短や勤務形態を検討
現役時代に残業や持ち帰り仕事、休日出勤をバリバリこなしていた人ほど、仕事と家庭を両立できるかについて不安を感じると思います。
そんなときは、負担を減らした働き方を検討してみましょう。
例えば、担任業務をはずしてもらったり、負担が少ない業務から始められないか相談してみたりすることです。また、正社員であっても1日6時間ほどの時短勤務が可能な園もあります。
早朝・夜間保育、休日保育のない求人も増加傾向にあるので、ライフスタイルに応じた職場を探しやすくなってきています。
他にも、最初はパートやアルバイトとして補助業務をしながら、正社員を目指すことも可能です。そうすることによって、園の仕事環境や人間関係などの様子を見つつ、働くリズムを取り戻すことができます。
今の保育についていけるか。セミナー活用で知識をアップデート
一度現場を離れてしまうと、以前の保育が通用するか不安に感じると思います。
ブランクが長ければ長いほど「以前の知識が通用するか」「どんな遊びが子どもの興味を引くのか」など、気に病むこともあるでしょう。
そんなときは、保育士就職セミナーによる支援を利用しましょう。
保育士・保育所支援センターでは、「資格はあるけれど未経験」「経験はあるけれど長いブランクがある」という方に向けて研修会を開催しています。
内容はセンターによって異なりますが、園長先生から今の保育現場についての話しを聞いたり、保育指針の改定ポイントについての講習があったり、おむつ交換のような保育実習あったり、さまざまです。こうした支援センターで行う研修会は、受講料がかからないことがほとんどです。
新しい環境や人間関係についての不安。園見学やHPをチェック
給料面や労働環境面が改善されていても、人間関係が悪いと長く勤めることは難しくなります。
どんな人達がどのように働いているのかは、実際に働いてみないと分かりませんが、少しでも事前に知ることができたらいいですよね。
そんなときは、2つの方法で確かめてみてください。
1つ目は、園のホームページをみる方法
園のホームページには、保護者へのお知らせや、園行事のスケジュールなどが公開されています。
年間スケジュールに記載されている行事の数で忙しさをイメージしたり、お知らせに園内や子どもたちの写真が掲載されていれば、園や子どもたちの雰囲気を想像することができます。
2つ目は、園見学を行う方法
やはり、実際に保育方針や労働環境を自分の目で確認できることは大きいです。
見学する際は、離職率のようなちょっと失礼かもしれない……と思うことでもしっかり質問して疑問や不安を解消しましょう。園の見学については、求人情報に「見学可」と記載している園も多いです。
見学についての記載がない場合でも、電話で相談すれば許可してくれる園もあります。興味がある園には積極的に連絡してみましょう。
保育士の働く環境は改善されている
「子育てと家庭の両立ができるかな」「今の保育についていけるか心配」という不安を抱えている潜在保育士の方は大勢います。そうした不安を解消するために、国や自治体が中心となって保育士の働く環境が良くなる取り組みが行われています。
それは「処遇改善手当の加算」「ICT導入で残業減への取り組み」「再就職支援」などです。
「仕事と家庭の両立」「保育スキル」「人間関係」といった不安は、自治体のセミナーや園見学に行くことで解消することができます。
不安や悩みをひとつずつ確認しながら、理想の再就職をぜひ目指してください。