保育士資格を持っていても、一度保育現場を離れてしまうと復職したくてもブランクが気になり「私にできるかな?」と不安になってしまう人もいるでしょう。また保育士時代の待遇や忙しさを思い出し、「別の仕事がよいのでは」と復職を迷ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、現在は保育士の負担を軽減するための仕組みが次々と整ってきています。さらに保育士の復職を支援する嬉しい政策も多くの自治体で実施しています。保育現場へ復職する際に気にかけておきたいポイントをしっかり押さえて、保育士として再デビューを果たしませんか。
一昔前とは違う!近年の保育現場
保育士を離職した理由は、結婚や転居などいろいろな理由があるかと思いますが、中には低賃金や激務など労働環境が悪かったからという人もいるでしょう。しかし近年の保育現場では保育士が働きやすいよう様々な改革が行われ、復職しやすい環境が整備されつつあります。
保育士処遇改善
保育士不足は、専門職でありながら低賃金に抑えられてきた保育士の待遇が一因とされています。
そこで内閣府は平成27年度より処遇改善等加算という施策をスタートさせました。処遇改善等加算にはⅠとⅡの2つのバージョンがあります。Ⅰは保育士の給料を経験年数を配慮したうえで2~12%上乗せする等保育士全体の賃金を増やす制度です。一方Ⅱは中堅リーダーの役職に就いた保育士に特別手当を支給する制度です。また自治体によっては別途保育士手当を支給しているところもあります。
このように近年は保育士の賃金を向上するための施策が次々と実行されているのです。
ICT化で業務負荷が大幅に軽減
保育士は非常に忙しい仕事で、残業が頻発することもあります。そんな職場環境を変えるため、最近一般化され始めているのが保育施設向けのICT(情報通信技術)です。
例えばこれまで園児の登園降園時間は、保育士が玄関に立ち、目視と手書きで登降園のチェック業務を行うのが一般的でした。しかしこの方法では玄関に人手がとられてしまい、保護者に話かけられ受け答えをしているうちに間違いが発生したり、子どもの安全を十分に確保するのが難しいこともありました。ここにICTツールを導入すると、端末にICカードをタッチしたりスマートフォンのQRコードをタッチすることで、正確に登園降園時間を記録できるようになります。記録されたデータを使って保育料の計算なども自動化でき、ボタン一つで請求金額を管理することも実現できます。保護者と施設間の管理だけでなく、職員の勤怠管理やシフト管理も可能です。
また時間のかかる保育日誌や月案・週案の作成にもICTが活躍します。ツールの中に雛型があるので書類を1から作る必要がありません。また音声入力や定型文の活用ができるタイプのツールもあり、スムーズに書類作成が行えます。
このように保育業務の一部をICT化することで、煩わしい事務作業の業務負担を軽減しようとする保育園が年々増えてきています。
保育士の需要が高まっている
産後に仕事復帰する女性が増えたことや政府が子育て支援に力を入れ保育料無償化が導入されたことなどを背景に、保育士の需要はますます高まってきています。一般的に一度会社を離れた後の再就職は、ある程度キャリアがあっても難しいものです。それに対し売り手市場の保育業界では、保育士の資格さえ持っていればブランクはさほど問題になりません。
復職するメリット
保育士として保育現場に復職することは、金銭面でも働きやすさの面でも多くのメリットがあります。具体的に見ていきましょう。
保育士の復職を応援する貸付制度を利用できる
各自治体では保育士の復職を応援する貸付制度を実施しています。貸付金とはいっても一定期間保育士として勤務を続けることで、貸付金の返済は免除されます。
例えば再就職の際に必要な服の購入費、アパートの引っ越し代等を貸してくれる「保育士就職準備金貸付制度」があります。また自分の子どもを保育施設に預ける際の保育料を補助してくれる「未就学児をもつ保育士に対する保育料の一部貸付事業」という事業も魅力的です。
ただし貸付制度の有無や内容は地域によって異なります。詳細はお住まいの自治体に確認してみてください。
柔軟な働き方が可能
人手不足の保育業界では、正社員はもちろん契約社員やパートなど様々な雇用条件で保育士を募集しています。そのため時短勤務や昼からの出勤など、自分の都合に合わせた仕事環境を探しやすくなっています。子どもが小さい間はパートで働き、手がかからなくなったらフルタイムにシフトする、といった柔軟な働き方も可能です。
即戦力として重宝される
一度保育士として働いた人は経験者として重宝され、みんなから頼りにされます。キャリアがある分、新しい職業を探すよりスムーズに現場になじめるはずです。
人生経験を生かした仕事ができる
保育士は出産や子育てなど自分自身の経験を仕事に生かすチャンスがあふれています。また、一度保育士を辞めて別の仕事をしていたという人は、一般企業で働く保護者の環境をより理解しやすくなっているはずです。保育士は、一度現場を離れたということが活かせる職業なのです。
復職するにあたってのポイント
復職を決めた保育士が、実際に就職活動を始める前に心がけたいポイントについてまとめてみました。
体力を付けておく
保育士は子どもと遊んだり、掃除や片付けをしたりと体力を使う仕事です。しばらく運動をしていないと体はすぐになまってしまいます。保育士として復職する前には、軽いジョギングやウォーキングなどで体力をつけておくと良いでしょう。
保育士としてのアピールポイントを探す
保育業務に役立つアピールポイントを見つけておくと、ブランクがあっても自信を持って保育現場に立ちやすくなります。保育士の活躍の場はピアノ、読み聞かせ、工作、歌、運動などたくさんありますので、得意分野を探しやすいはずです。また面接で保育士としてのアピールポイントを聞かれる場合もあります。アピールポイントを探しておくことは、就職活動の一環としても重要です。
自分の勤務希望を書き出す
保育士の求人はたくさんありますが、後で思わぬ後悔をしないよう、自分が働きたい条件や環境を整理しておきましょう。「〇時~〇時の間なら勤務できる」「離職率の低い園が良い」「通勤時間30分圏内」など自分の譲れない勤務希望は就職活動の前に書き出しておきましょう。また派遣会社や転職サービスを利用するときは、自分の希望条件をしっかり伝えることが大事です。
保育士証は手元に準備しておく
保育士有資格者として働く場合、求人への応募時や就職決定時に保育士証の提出を求められることがあります。もし保育士証を紛失している場合は、速やかに再発行手続きを行いましょう。
また平成18年以前に離職をした人は保育士(保母)資格証明書しか持っていない場合があります。その際は保育士登録簿への登録手続きをして、都道府県知事の名前が入った保育士証を入手してくださいね。
急な復職に不安がある方は
現場とのブランク期間があればあるほど、復職は勇気がいるものです。いきなり仕事をスタートさせるのが不安な方にぜひ試してほしい2つの方法をご紹介します。
保育園で1日体験をしてみる
興味のある保育園があってもいきなり就職するのが不安という方は、先に一日職場体験を申し込んでみるという方法があります。職場体験をすることで昔の動きを思い出したり、園の内側の雰囲気をつかむことができるでしょう。また保育士求人サービスの中には職場見学をセッティングしてくれるところもありますので、上手に利用してください。
復職支援のためのセミナーを利用する
自治体の保育人材センター、保育士派遣会社、保育士求人サービスなど、様々なところで保育士の復職支援のためのセミナーが開かれています。最新の保育事情や書類の書き方などを教えてもらえるので、復職へのハードルを下げられるはずです。またセミナーで同じように復職への不安を抱えた保育士と出会ったり、支援員に心配事を相談したりすることも不安解消に役立ちます。
保育士へ復職するには今がチャンス!
一度離れた保育現場へ戻るのは、誰でも不安がいっぱいです。しかし、保育士としての服飾は、キャリアや私生活での経験がそのまま生かせるメリットが大きいです。保育士不足の現状では、潜在保育士に対する支援は大変手厚くなっています。貸付制度を利用したり、自分の思う時間で働くことができたりと復職しやすい環境が整っています。また最新の保育現場では保育士の待遇を改善するための政策が実施されています。一度保育士をあきらめた人も復職のポイントをしっかり押さえて、新しい保育士生活を始めてみてはどうでしょうか。