子どもたちの小さな「できた」を大切にし、保護者と保育士が互いに「子育て/保育」を楽しめる環境を目指して
ー先生の人数を増やすことにより、子どもにとっても保育士にとってもよりよい環境が作られていることがよくわかりました。そもそも、野上さんがこうした先生の待遇改善をはじめられたのはなぜでしょうか?
野上さん:保育の仕事は、熱意だけで続けられるものではないと思ったからです。
休憩なしで食事もぱっと食べて、残業して、さらには制作物を持ち帰って夜な夜な家で作業をして……という仕事のやり方は、若いうちは熱量でがんばれても、結婚・出産してからは難しくなりますよね。なので、保育の業界では、結婚や出産での退職が暗黙の了解のようになっていました。でも、保育者って、ある意味で子どもを持つことが最も仕事に生きる職業だと思うんです。保育者として親の気持ちがわかったり、子育てがうまくいかないとか、いろんな思いに共感できること、その経験もすごく大切だと。
熱意のある、子育てを経験することでよりよい保育をできるはずの方が、出産を機に辞めてしまうことがないよう、働き方を根本的に変えていかないといけないと思いました。
それらの改善方法が、まず人員を増やすことでした。
ー実際に、Picoナーサリでは産休・育休からの復帰率は2年連続100%とうかがっています。保育士のみなさんが余裕をもって、真摯に業務にあたっていらっしゃることも含め、待遇の改善の成果が出ていますね。
野上さん:ありがとうございます。ただ、待遇を改善し、保育士の配置人数を増やせた。ゆとりをもって保育ができるようになった。結婚・出産しても続けられるようになった……と言っても、それですべての課題が解決されたわけではありません。私たちはいま、次の課題を感じています。
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