日々の生活のなかでの成功体験の積み上げが、子どもと先生双方の自己肯定感につながる
ー茶道のお時間を見せていただき、先生のお話をしっかり聞く子どもたちの様子から、日常の保育でそうした行動ができる土壌が育まれているように感じました。Picoナーサリでの普段の保育と、それを支えているスタッフのみなさんについて教えてください。
野上さん:日常の保育では子ども自身が自分を発揮できる場と言いますか、主体的に遊びに取り組んでいける環境を大事にしています。先生たちがそれぞれの子どものペースに寄り添い、子どもが自ら「やりたい」と意欲がわいたそのタイミングで「やれた」「できた」という成功体験を日々の生活のなかで積み上げていくことで、子どもの自己肯定感が育まれていくのではないでしょうか。
伊藤園長:私はPicoナーサリ和田堀公園の開園から園長を務めさせていただいていて、その前も別の施設で園長をしていたのですが、Picoナーサリでは働いている保育士の先生たちから「優里先生、今日こういうことができたんです!」というような、子どもたちの小さなエピソードの報告をもらうことがとても多いんです。私は保育に毎日入っているわけではないのに、入ったかのように一緒に楽しめる感覚がありますね。先生たちが、子ども一人ひとりをよく見ているからこそ、こうした報告ができるんだと思います。
野上さん:先生たちがそうして日常的に子どもの気持ちを受け止めていく、寄り添っていくからこそ、特別な体験で目いっぱい楽しむことができるのではないかなと思います。「今日はやりたくない」「これは好きじゃない」というときもまた、先生がその気持ちに寄り添って、一緒に見学し、「やっぱり少しだけやってみてもいいかな」と子どもの気持ちが変わったタイミングで参加を促す言葉かけができたり……。常々、「保育は先生」だと思います。保育園の先生って、子どもたちにとって、いちばん長い時間を一緒に過ごす人ですよね。親以外に関わるはじめての大人、その人たちのなかに子どもにいい影響を与えない人がいてはいけません。Picoナーサリの先生たちはみんな、子どものために最大限熱量をもって保育をしたいと心から思っている人たちです。
伊藤園長:当園では、「子どもを急かす場面」が見られないというのも感じています。たとえばお散歩に出るときに、靴をさっと履ける子もいれば、ちょっとゆっくりな子もいます。スタッフに余裕がないと、「急いで」と急かしたり、スタッフがささっと履かせてしまったりということもありますが、Picoではそれがありません。
次ページ>日常の保育で大切なのは、先生がよりよい状態で働けるということ