「共育て」で描く未来ー「保護者とともに育てる」とはどういうこと?
ー新井先生が目指す保護者との「共育て」について教えてください。
私たち保育園は、仕事として保護者から子どもをお預かりしていますが、これって、親の代わりに私たち大人がいるというだけだと思うんです。
保護者と同じ気持ちで、子どもたちを見る…そういう保育園でありたいですね。
目指すのは、「一緒の想いの保育園」「大人も子どもも楽しめる保育園」です。
絵本プロジェクトに保護者に参加いただいているのは、そういう想いからです。
もともとは先生が、「子どもが好きな本」とか「○○先生のおすすめ絵本」と展示していたんですが、これなら保護者にも参加してもらえるなと考えました。最初は募集のポスターを貼っていたんですが、今は次々と「来月僕やります!」って、お父さんも参加してくれています。なかには、海外の同じ絵本を3冊、出版社違いで持ってこられたりする方もいますよ。翻訳の表現が違うんですって。僕のおすすめはこの訳ですと教えてくださって。
今はコロナ禍で難しいですが、ゆくゆくは保護者主体のイベントもやりたいと思っています。
たとえば、保護者に電車の運転士さんがいたら、「電車博士」になってもらって、電車に興味のある子ども、大人に集まってもらったり。絵本プロジェクトに関わってくださる方を見ていると、大人にももっと保育園を楽しんでもらいたいと思いますね。
ー保護者にとっても保育園は「共に子育てをする仲間」で、仲間同士ともに園を楽しい場所にしていけるという考えはとても素敵ですね。
ここが、保護者にとっても思い入れのある場所になっているとうれしいですね。
そういえば先日、保護者から突然電話がかかってきて、「ランチをしていたら、近くの席に保活している方がいて、『クオリスという園が評判いいからそこにしたい』って言っているのが聞こえたんです」っておっしゃるんです。すごく興奮して、「自分が褒められているみたいで、わが子がそこに通っているっていうことがすごく嬉しくて」って。
コロナ禍で、保護者さんには園への立ち入りをご遠慮いただいていますし、行事もかなり制限していたので、園の活動に関わっていただく場面が少ないなか、お母さんがそのことをこんなに喜んでくれたのが嬉しかったですね。
ーその保護者さんには「共育て」の感覚を持っていただけているんでしょうね。こうした「共育て」につながったと感じる行事などはありますか?
保育参観や保護者会がなくなったかわりにはじめたGo to Parkという取り組みは、やってよかったと感じています。
保護者に事前に「○日と○日、○組さんがどこそこ公園に行きますよ」と告知し、リモートワークされている保護者の方が、都合のあうときにちょっと来てくださって、子どもと遊んだり、子ども同士遊んでいるのを見守ったりしていただく取り組みです。
参観とちがって気楽な取り組みで、こちらも事前にだれがいらっしゃるかも把握していません。予定があえば、いつでもいらしてくださいね、という感じで。
それが発展して、お楽しみ会として園内でやっていることを公園で発表する「野外劇場」も生まれました。
大事なのは、実際に園に見学に行って、自分の想いと合うかどうかを見極めること
ーでは最後に、これから保活する方にメッセージをお願いします。
少しずつ、保護者が園を選べるようになってきましたね。私は、これはとってもいいことだと思います。0歳から6歳の大事な時期、やはり「ここなら大丈夫」という安心をもって子どもを預けたいですよね。
それには、実際に園に見学に行って、先生たちの表情を見るのがいちばん大切だと思います。
保護者が、園の先生たちを見て、自分の目指す「こういう子育てをしたい」という想いと合うかどうか。園の先生たちが「一緒に子育てをしてくれそうか」を確認したほうがいいと思います。
園見学にいらっしゃる方にお話を聞くと、みなさん、通いやすさや0歳児の枠が何名あるかなどいろいろ考えて希望を書かれています。
「ここに入れたいけど、0歳児枠が少ないんですよね」など、本当は別に第一希望の園があるのに、入りやすそうなところを上に書いたり。そのお気持ちも、努力もわかります。どこにも入れなかったら困りますもんね。だけど、どこで逆転するかわからないんですよ、急に引っ越すご家庭が出ることもありますから。
0歳、1歳の子どもには、どこがいいかはわかりませんし選べません。だからこそ、保護者が見て、「こういう園がいいな」と思った第一希望を譲らないほうがいいと思います。
ここがいいと思った園であれば、任せるのも安心だし、先生との会話も弾むし、子どもからの話も面白いと思いますよ。
あと、見学なしに電話などでいくつか質問だけして希望を決める方もいらっしゃいます。そういうときに多い質問は、職員の人数についてです。みなさん「人数が多いほうがいい」と考えてらっしゃるようなのですが、私はそれはちょっと違うんじゃないかなと考えています。
うまく伝わるかわからないんですが、「大人の人数が多い=保育がきれい」ではないんですよ。
子どもには子どもの社会がありますから、大人が多すぎると、その子どもの社会がうまくまわらない。大人の人数が多すぎないほうが、子どもたちは自分で考えて動けるようになるんです。そうなると、保育がすごくきれいだなと感じます。
なので、人数を訊ねられたらいつも「多いほうが安心よね。でも、多ければいいっていうわけじゃないのよ」とお伝えしています。
もちろん、人数で解決できる問題もありますし、人手が少なくて職員が休憩や研修の時間をとれないような状態は論外です。そうしたゆとりある時間が確保できたうえで、さらに「多ければ多いほどよい」というわけではないということです。
適正な人数で、連携のとれたよい保育ができているか……こういったことも、「人」とつながるのですが、これもまず実際に見てみないとわからないので、保育園を探すときは、必ず見学をしてほしいと思います。
子どもたちの自主性と自立をうながす、「子どもの社会」がここにはある
(取材・文:山口美生、撮影:根本和大、編集:ホイシル編集部)
■クオリスキッズ駒込保育園
事業種別:認可保育所
定員:50名
職員数:20名
所在地:〒113-0021
東京都文京区本駒込5丁目71−6
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