「否定語を使わない」「人権に配慮する」……それを400名の職員全員で共有できている秘訣は?
ークオリスキッズ全体で、保育における共通認識として職員のみなさんで心がけていらっしゃることはありますか?
特別なことは、本当になにひとつしていないんですよ。
子どもと接するときに「否定語を使わない」とか、環境づくりにおいては、子どもたちの自主性を活かせるように間仕切りをしない空間づくりをしたり、おもちゃを自由に選べるように配置したり。あとは、着替えやプールのときなど、子どもの人権に配慮するとか……。
このあたりはクオリスキッズ全体でやっていることですが、どれも保育の基本ですよね。
ークオリスキッズは全体で36園、職員は400名にものぼるそうですね。「特別なことはしていない」とおっしゃっても、それを全園で共通して持つというのは難しいことなのではないでしょうか。
もし、こうして園をご覧になって、みんなが共有できていると感じていただけたとしたら、それはやっぱり「人」なんじゃないかと思います。20代から70代までの幅広い年齢の大人たちが、お互いにリスペクトしあい、保育の質を向上させるために意見を交わし、研修で学んだことを共有していくと、自然にこうした基本は共通した認識になっていくんじゃないでしょうか。
ーそういう環境を作るために意識されていることはありますか?
環境を作ろうと考えてのことではありませんが、先生たちひとりひとりの個性を大事にすることは意識しています。
これを見てください。クオリスキッズの職員採用のパンフレットです。
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「わたしたち「らしく」、楽しもう。
保育園って真っ白なキャンバス
どんな色だって どんな形だって ひとりひとりの個性 ひとりひとりのストーリー
描きたい 触れたい やってみたい その想いを繋いでいく」
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このメッセージは、入職3~4年目の職員のつぶやきを採用したものです。
個性が大事なのは、子どもだけじゃなくて大人も同じです。
ひとりひとりの個性を大事にして、お互いを尊重しながら一緒に協力していきたいという私たちみんなの想いを言葉にしてくれました。
子どもの個性は大事。同じように、大人の個性も大切にしたい
「適材適所」で、保育者がのびのび働けて、より輝けるように
あと意識しているのは、職員の「適材適所」です。
たとえば、当園には2名の男性保育士がいます。そのうちひとりは、これまでずっと幼児を担当していたのですが、彼の様子を見ていて「0歳児クラスを担当してもらうのがいいのではないか」と思い、本人に声をかけました。すると、「0歳児クラスに入ってもいいんですか?」と聞くんです。お着替えとかおむつ替えとか、男性が担当することに抵抗を感じる保護者もいると、本人もわかっているんですね。なので、「なにかあれば保護者へは私が説明するから大丈夫」と背中を押しました。
それから半年後、「0歳児クラスを見るようになって、これまで以上に保育が面白くなってきた」と言ってくれました。
保護者からの信頼も厚く、当初心配していたようなご相談はひとつもありませんでした。子どもたちも安心しているし、本人もとても居心地がよさそうです。
彼の「子どもを惹きつける力」は、誰もかなわないほどなんです。
前例の少ない「男性保育士による0歳児保育」を担当することで、男性も女性も関係ないということを実践してくれてるように思います。
それから、別の男性保育士は、手遊びがとっても得意で、何時間でも手遊びできちゃうような先生です。幼児さんにテンポがぴったりなので、幼児クラスを任せています。男性だ、女性だ、年齢だ…ではなく、一人ひとりのいいところを発揮できる場所を見つけてあげる。それが保護者の安心や信頼につながっていることを感じます。
ーできないことより得意なことに注目されているんですね。先生や保護者がそれを感じられるような取り組みはありますか?
得意なことで周囲からの評価を得られる仕組みとして「プロジェクト」という取り組みをしています。
運動、絵本・手遊び、おもちゃ、装飾、デザイン、手芸、ITなど全部で12種類あり、職員は学校の部活みたいに自分の好きなところに入って、活動をします。
クラスの配置も、こうしたプロジェクトも、適材適所。みんなが自分の能力を発揮して輝ける場所にいることで、保育はよりスムーズに、楽しくなります。
ちなみに、「絵本プロジェクト」には保護者も参加していますよ。
■デザイン部がデザインしたオリジナルの家具
イスは使う年齢によって座面の広さやひじ置き、背もたれの有無などデザインが違う
■手芸部がつくったキャンプ用の旗と、0歳児クラスのマット
園内のあちこちに、「好き」と「得意」があふれる実用的な作品が見られる
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