保育学生にとって悩ましいのが、職場選び。たくさんある保育園のなかで、どの園が自分にとって働きやすいのか、気になりますよね。
しかし、万人にとって働きやすい保育園というものはありません。就活では自分の価値観にあう、長所を生かせる保育園を見つけることが大切です。そして、自分に合う保育園を決めるためには、まず自分がどんな人間かをしっかりと知る必要があります。
この記事では、自己分析の具体的な方法を紹介しています。自分を知って、職場選びの基準を探っていきましょう。
なぜ自己分析が必要なの?
就活を始める前には、自己分析をすることが大切だといわれています。
自己分析とは、自分の性格や価値観、長所、短所、将来の希望などを具体的にする行為です。自己分析をすることは、普段自分では気がつかない一面に光を当てることでもあります。実際に自己分析をしてみると、自分でも知らなかった新しい発見があり、びっくりすることもあるのではないでしょうか。
また、漠然としていた考えを、過去の出来事に紐付けた「価値観」として確立するためのステップにもなります。自己分析をすることで、理想としている保育士の姿が明らかになれば、たくさんの保育園のなかから自分の考え方に合った園を選ぶのに役立つことでしょう。
さらに、自己分析で自分の長所や短所が分かれば、面接や応募書類で自己アピールする際、役立てることもできます。
どうやって自己分析を進めるの?
では、自己分析を行う具体的な方法を見ていきましょう。
自分の歴史年表(自分史)を作る
自己分析のタネは、過去の自分にあります。
まずは、自分の歴史年表を作り、過去の主だった出来事(保育園入園、小学校卒業、ピアノを習い始めるなど)をできるだけ書き出してみてください。次に、今の自分の価値観を作り出すきっかけになった印象的な出来事をピックアップしていきます。そして、その出来事に対し「何を感じたのか」「この出来事は今の自分にどういう影響を与えているのか」を考え、書き込んでみてください。こうすることで、今の自分の「保育士になりたい」という気持ちがどのような要素から形成されているのかを探ることができます。
例を見てみましょう。
①【中学校での保育園交流会】
感じたこと:小さい子たちにすごく懐かれた。手作りのおもちゃをプレゼントしたら喜んでもらえて、嬉しかった。
今の自分に与えている影響:保育士になりたいと感じたきっかけ。保育士になったら手作りのおもちゃをたくさん作って子どもたちと一緒に遊びたい。
②【高校の吹奏楽での部活動】
感じたこと:顧問にみんなの前で下手だと怒鳴られ、やる気をなくす。
今の自分に与えている影響:子どもがうまくできないからといって、みんなの前で怒るような保育士にはなりたくない。
成功体験、失敗体験を見直す
今までの体験の中で、成功した体験と失敗した体験に焦点を当てて自己分析する方法もあります。
例えば、学園祭の実行委員となってクラスメイトの間に入り、出し物の意見をまとめることができたのであれば、それは成功体験です。意見の違う人同士を1つの目標に導ける「リーダーシップ」という長所が見えてきます。
一方、失敗体験からも自分を知ることができます。例えば、テスト勉強を頑張りすぎて試験当日に体調を壊して赤点になってしまったとすれば、あなたは「行き過ぎた努力に注意が必要なタイプ」であるということが分析できます。
成功体験や失敗体験は自分の得意なこと、苦手なことを明らかにしてくれる要素なのです。
自分の理想の将来像を描く
歴史年表や成功体験、失敗体験からは、過去の自分の姿をもとに作られた価値観を見つけることができました。この価値観をもとに、次は自分の理想の将来像を描いてみましょう。
例えば、「将来、どのような保育士になりたいのか」を考えてみてください。保護者に信頼してもらえる保育士でしょうか、子どもの才能を自由に伸ばしてあげられる保育士でしょうか。今まで自分が出会ってきた人のなかで理想とする人物を思い浮かべると、自分の理想の将来像が考えやすくなります。
また、「保育士になることで何を手に入れたい」と考えていますか。高い収入でしょうか、結婚や出産に左右されない専門職としてのキャリアでしょうか。あるいはライフワークバランスの取れた生活でしょうか。
将来の理想像を考えることで、自分が保育士の仕事をする上で何を重視しているのかを具体的に知ることができるでしょう。
さまざまなツールを利用してみる
今まで紹介した自己分析のやり方が難しいと感じる人は、求人サイトなどで提供されている適性診断ツール、適職診断ツールを利用してみるという方法もあります。これらのツールでは、簡単な質問に答えるだけで、性格や強み、適した働き方などを紹介してもらえる点が魅力です。ただし、やり方が簡単な分、結果が画一的な面もあり、深く自分を掘り下げるのは難しいかもしれません。
また、自己分析のやり方が書かれている書籍を参考に自己分析をしてみるのも一つの手です。書き込み式のワークシートを使って自己分析ができる本もあるので、自分にとって使いやすいものを探してみましょう。
他人に自分を教えてもらう「他己分析」
ここまでは、自分で自分の内面を整理する自己分析の方法を行ってきました。しかし、自分で自分を振り返るときには、どうしても主観的になってしまいがちです。いろいろ考えすぎて、逆に自分を見失ってしまうこともあります。
そこで、自己分析と合わせて取り組みたいのが「他己分析」です。他己分析では、身近な他人に自分の長所・短所・特徴などを聞いていきます。家族や友人、恋人、学校の先生など、自分をよく知っている人に協力してもらいましょう。自分では気がつかなかった一面を指摘されたり、短所だと思っていたところが長所として褒められたりと、意外な発見があるかもしれません。客観的な「他己分析」を自己分析と組み合わせることで、より深く自分を知ることができるはずです。
自己分析の結果から自分に合う保育園を探す
自己分析ができたら、結果をもとに自分に合う保育園を探していきましょう。
自分の価値観に合った保育方針・保育形態の園を探す
自己分析で、自分の価値観を明確に知ることができたら、その価値観に合う保育を行っている園を探しましょう。
「保育園」と一口に言っても、各保育園ごとに多様な保育形態があります。例えば、自由保育を重んじ子どもたちの個性を伸ばそうとする保育園もあれば、集団活動で社会性を育てようとする保育園もあるでしょう。自分の価値観に照らし合わせて、共感できる保育方針、保育形態をとっている保育園を探してください。そして、理想の保育園が見つかったら積極的に説明会に参加したり、園見学に行って情報を集めてみてください。
自分の長所、短所をもとに保育園を探す
人間にはだれしも、長所と短所があります。長所を生かせる職場に就職すれば、自分の力を充分に発揮することができます。逆に、苦手なことばかりが続けば、仕事に対する意欲を失ってしまいます。ピアノが上手な人なら、音楽活動を重視する保育園は向いているといえるでしょう。一方で、工作が苦手な人が壁面製作に力を入れている園に就職すれば、ストレスを抱えてしまうことが想像できます。自分の良さを活かせる職場を探すことは、短期離職を防ぐことに繋がります。
将来像をもとに保育園を探す
自分の理想の将来像がしっかりしていれば、就職先の保育園を絞る指標になるはずです。例えば、「園全体の子どもとじっくり向き合う保育士になりたい」のであれば、ターゲットは小~中規模の保育園に絞れます。また、「出産後もキャリアを途切れさせたくない」と考えているのであれば、育休制度が整っているかどうかを職場選択のポイントにあげることができます。
絶対に譲れないポイントで判断する
自己分析の結果、園を選ぶためのたくさんの基準が見つかることもあるでしょう。すべての希望に合った園を見つけるのは、なかなか難しいものです。選択基準には、優先順位をつけていくことも大切です。
例えば、自己分析の結果、次の3つの基準を発見できたとします。
①子どもをほめて伸ばせる保育士になりたい
②ワークライフバランスがとれるよう週休2日の保育園で働きたい
③ピアノが得意なので、音楽を重視している園に勤めたい
仮に、週休2日で音楽活動が盛んな園が見つかったとします。しかし、そこはとても厳しく子どもをしつけようとする園でした。この園は、選択基準のうち2つを満たしています。しかしあなたの中で①の基準がもっとも高い価値を持つなら、その園はあなたには合わない可能性が高いです。
自分にとって、最も大切なものは何なのかを考えて園を選ぶようにしましょう。
自分にマッチする保育園を見つけよう
自己分析のやり方には、以下のような方法があります。
・過去の経験を振り返る「自分史」の作成
・成功体験・失敗体験の分析
・将来の理想像構築
・ツールの利用
・他己分析
これらの方法を組み合わせて自己分析を行い、自分にとって大事な価値観が何なのかを探し出せれば、理想の保育園像が見えてくるのではないでしょうか。
自分に合わない保育園に就職してしまうと、心身の不調や短期離職の危険性が高まります。やりがいのある保育士生活をスタートさせるためにも、自己分析の方法を上手に活用してみてください