保育園における5歳児クラスの1年は、就学に向けての大切な時期です。
手や指をより細やかに動かせるようになり、これまでの経験や知識を生かして創意工夫するなどの思考力も高まっていきます。
しかし、まだまだ子どもらしいところもあり、身近な大人に甘えながら気持ちを休める姿もあります。
子どもの気持ちをくみ取りながら、必要な援助をしていくことが大切です。
では、5歳児クラスで保育実習を行う場合、実習生としてどのようなことに注意すればよいのでしょうか?
この記事では、5歳児の発達段階や保育士の役割をまじえながら、保育実習における目標の立て方や子どもとのかかわりについて詳しくご紹介します。
5歳児の発達状況
5歳児クラスは、4月1日の時点で5歳0ヶ月~5歳11ヶ月までの子どもが生活しています。
保育園のなかで一番のお兄さんお姉さんであるという意識を持ちながら、就学へ向けて様々な準備をしていく時期です。
この時期の子どもたちの発達の特徴について見てみましょう。
身体の発達
5歳児になるとより全身を使った運動ができるようになり、跳び箱を跳んだり、縄跳びに挑戦したり、鉄棒で逆上がりができるようになったりと活動の幅も大きく広がります。
手指の発達がより細かくなり、微細な表現が可能になっていくのもこの時期です。
・身体全体の協応性が増し、複雑な運動遊びを楽しめるようになる。
・心肺機能が発達するため、より活発に、より長い時間身体を動かすことができる。
・手先が器用になり、自分の思うようにハサミを動かしたり、イメージを表現するようになる。
言葉や社会性の発達
個人差はありますがひらがなに興味を持ち、自分の名前の読み書きができるようになったり、友だちに手紙を書いて気持ちを表現したりといった姿が見られます。
・音としての数字を、実際の数として認識できるようになる。
・相手にわかりやすく伝えるための表現ができるようになり、意見を言ったり、相手の気持ちを聞いたりといったコミュニケーション力が高まる。
・友だち同士でのトラブルを、自分たちで解決しようとする。
生活習慣の発達
自立心が高まり、自分で考えて行動するようになります。
時間を見て行動することもできるようになり、見通しを持った活動が可能です。
自分がこうしたいという思いを保育者や友だちに伝えて、行動に移すようになります。
・身のまわりの生活に必要な行動を、おおむね1人でできるようになる。
・ものを大切に扱う、後片付けをするなど、次の人のことを考えて行動できるようになる。
・手伝いや年少児のお世話といった、人の役に立つことを喜び積極的に行動する。
5歳児クラスの実習目標
ここからは保育実習における目標設定について考えてみましょう。子どもの様子や保育士の様子を、どのような視点で見るとよいか紹介します。
5歳児に対する保育士の役割
身の回りのことは自分で行い、活動に対しても自分で考え、見通しを持って取り組むようになるのが5歳児クラスです。
保育士は、子どもの自立心を尊重し、自分で考えて行動できるような声かけや保育環境に配慮していく必要があります。
たとえば、時間割表を導入したり、カレンダーを用いたりすることで、活動に見通しを持てるような環境を整えることも配慮のひとつです。
保育者がどのような思いを込めて環境を設定しているのかについても、確認してみるとよいでしょう。
実習生が見る視点
では保育実習で5歳児クラスに入った場合、実習生はどんなところに注目してみるとよいのでしょうか。
5歳児はこれまでの保育園生活で、保育士が活動をすすめたり、準備をしたりする様子を見てきた経験から、自分たちで当番活動や係の仕事を行うことができるようになります。
当番活動や係活動は、グループ単位で行っていることが多く、子どもたちがそのなかでどのような役割をもっているのかにも注目してみるといいですね。
また、子どもが中心となって活動を行っているからこそ、子どもの思いをまとめあげる大人の存在も必要となります。
保育士が子ども一人ひとりの思いや意見をどのように一つにまとめていくのかに注目してみるとよいでしょう。
目標の例文
5歳児の目標の例文について下記にまとめました。
より詳しく知りたいという方は、『【事例集あり】保育実習の目標の書き方』や『保育実習日誌の目標を立てるポイントとは?書き方の例も紹介!』をご覧ください。
- ・5歳児クラスの一日の流れを知る
- ・当番活動、係活動を知る
- ・保育者の動きや、子どもに対する配慮を見る
- ・子ども同士の関わりのなかからそれぞれの役割分担を知る
- ・子どもの主体的な活動に、保育士がどのように援助しているのかを見る
- ・子ども主体のクラス運営を知る
5歳児クラスの保育のねらい
保育実習では実習生が保育のねらいを立てる場面が最低でも数回は出てきます。
ここでは、5歳児クラスでのねらいの立て方と例文を紹介しますので、参考にしてください。
ねらいの立て方
保育士は、子どもたちが就学に向けてさまざまな挑戦をしていけるような活動を取り入れながら、それにともなったねらいを立てています。
保育実習のなかで、保育士がどのように働きかけているか、その援助の方法などにも目を向けることで、実習生としてのねらいを立てられるようになるでしょう。
ねらいの例文
・季節や行事によるメニューや食材に興味を持つ
・友だちと遊ぶなかで、イメージを伝えあったり、意見を出し合いルールを決めたりする
・生活に見通しを持ち、自分のものの管理をしたり、次にすべきことを考えたりする
・手洗いうがいの大切さを理解して、丁寧に行おうとする
・チームで仲間意識を持ち、協力したり戦略を考えたりしようとする
5歳児クラスでの自己紹介
保育実習では、実習初日などに子どもに向けた自己紹介をする場面があります。
5歳児クラスで自己紹介をする場合はどのような配慮が必要なのでしょう。
ポイントや例文を紹介していきます。
5歳児に向けた自己紹介のポイント
5歳児クラスになると長い子では6年間保育園に通っていおり、毎年のように保育実習を受け入れている園では、実習生という存在を理解している子が多いです。
そのため、子どもたちは「この先生は一体どんなことをしてくれるのだろう」、「いつまでいるのかな」と気にしています。
特に、責任実習は5歳児で行うことも多いので「実習生の先生がやってくれる保育」を楽しみにしてくれる子もいます。
これまでに何名もの実習生とかかわってきた5歳児クラスの子どもたちは、子どもたちの目もシビアです。
笑顔、声の抑揚、話し方、仕草などから「この先生は面白い」「この先生は楽しそう」ということをいち早く察知します。
前に立つことは緊張するものですが、子どもの目をしっかり見て、笑顔ではきはきと話すように心がけましょう。
自己紹介の方法について、より詳しく知りたいという方は、『保育実習ですぐできる!!自己紹介の3つのポイント』の記事をご覧ください。
自己紹介の例文
- 「田中あかりです、保育園の先生になるために、こどもすくすく保育園に勉強しに来ました。うさぎ組のみんなと⚪︎日までたくさん遊びたいと思っています。先生のすきなことは、ご飯を食べることです。おにぎりが大好きで、好きな具はおかかです。みんなは何が好きですか?(子どもとのやりとり)ありがとうございます、みんなの好きなおにぎりの具が聞けて嬉しいです。うさぎ組にいる間、もっといろいろなお話をしましょうね。どうぞよろしくおねがいします! 」
5歳児との遊び
ここからは、5歳児クラスで楽しまれている遊びについて紹介いたします。
遊びのなかでの友だちとのかかわり、保育士との関係性についても触れていますので、保育実習へ行った際の参考にしてくださいね。
子ども同士のかかわり方
5歳児は、子ども同士での遊びがより濃くなり、ゲームのルールを自分たちで決めたり、友だちの作ったものを見て同じものを作ったりと、遊びの幅もさらに広がっていきます。協力してひとつのものを作るといった姿もあるでしょう。
特にドッジボールなどの対決する遊びでは、「〇〇ちゃんは投げるの速いから、〇〇ちゃんにボールを渡す」、「逃げるときはしゃがむ」とグループごと戦略を立てることもあります。
子どもたちだけで話がうまくすすんでいる場合は、一人ひとりが意見を出し合い、ひとつにまとめようとする姿をそっと見守ってみましょう。
保育士のかかわり
子ども同士で解決することができるようになるからこそ、保育者は過度に介入せず、子どもの考える様子を見守ります。
子どもたちの話が煮詰まったり、解決策が見つからなかったりするときには、ヒントを出し、解決に導けるように配慮しています。
ときには、ゲームに夢中になり過ぎて、ヒートアップしすぎてしまうこともあるでしょう。
子どもたちが自然とクールダウンできるように、休憩を間に入れたり、別の活動に切り替えたりしています。
活動や遊びのなかで、保育士がどのようなかかわりをしているかに注目することで、部分実習や責任実習の参考になるはずです。
どんな遊びが好きか
5歳児では友だちと協力したり、自分の力を試したりするような遊びが盛んになります。以下に遊びとその役割について、いくつか例を紹介しますので参考にしてみてください。
- ドッジボール
ボールを投げる、キャッチする動作を経験する
子ども同士で戦略を立てる
- カプラ
友だちと協力して積み上げる楽しさを味わう
大きな作品を作る達成感を味わう
- 巧技台
跳び箱を跳ぶ、平均台を渡るという経験から身体の使い方を知る
自分の限界に挑戦する
- 塗り絵、製作
細かな絵をはみ出さずに塗る
廃材を組み合わせ、自分の好きなものを表現する楽しさを味わう
5歳児クラスの感想と反省
保育実習日誌には、その日の感想と反省を書く欄があります。
何を書けばよいかわからないと悩むこともあるかと思いますが、まずはその日の実習目標を達成できたかどうかを軸に考えてみると書きやすくなるでしょう。
5歳児になると自分でなんでもできたり、活動中も援助を必要としなかったり、乳児クラスとくらべると実習生がかかわることが少なくなってきます。どのような視点で反省を書けばいいのか悩むこともあるかもしれません。
子どもたちが自分でできるからこそ、保育士はどのような存在であるのかに注目することで、日誌に書きたいと思えるエピソードを発見できるでしょう。
子ども同士のかかわりを見るのも大切ですが、保育士の姿や、異年齢児とのかかわり方などにも目を向けてみると、新たな発見がありますよ。
また、5歳児クラスは、就学に向けて成長する大切な1年です。
保育園生活の集大成として行事に臨むことはもちろんのこと、小学校に向けて机上での活動を増やす、ハンカチで手を拭く、排泄や給食は後始末まで行うといった、今まで保育士が行っていたことにも挑戦していきます。
保育園は卒業しても、子どもたちの未来はこれから先も続いていきます。
保育士がどのような思いを持って卒園をむかえられるようにしていくのかにも、目を向けていけるといいですね。
感想と反省の書き方について詳しくは、『【文例で解説】保育実習での感想文の書き方』『保育実習日誌の「反省と感想」の書き方を徹底解説!』を参考にしてください。
保育実習最終日のプレゼント
実習最終日に子どもたちにプレゼントを渡したいと考えている実習生もいるかと思います。
特に、5歳児で責任実習を行うことも多く、実習生にとっても思い入れが大きいクラスかもしれません。
しかし、保育園のなかには、実習生の負担を考えてプレゼントをNGにしている保育園もあるので、確認してから渡すようにしましょう。
ではプレゼントを渡す場合、5歳児はどのようなプレゼントが喜ばれるのでしょうか。
5歳児に渡すプレゼント
5歳児クラスの子どもは文字への興味が高まってきていますので、プレゼントに手紙や一言メッセージをつけてあげると喜ばれます。楽しかったこと、思い出に残ったことを書いてみましょう。
手紙を渡す際にひと工夫あると、より印象に残りますよ!
プレゼントの例
- メダル
- 手紙(8ツ切り1枚、飛び出す仕掛けをつけたカードなど)
- 折り紙で作った花
5歳児になると、ある程度玩具の扱いも理解してくるため、少し凝ったものを渡しても問題ありません。
また、実習生との思い出をとっておくために、全員で1つではなく、個々にメダルを作ったり、折り紙で花を作って渡したりするのも喜ばれます。
メダルの裏にメッセージを添えたり、飛び出すカードのような仕掛けのある手紙にしたりすると、特別感が出てさらに嬉しい気持ちになりますよ。
子どもを理解して保育実習に臨もう
5歳児クラスで保育実習する場合に知っておきたいことについて紹介いたしました。
部分実習や責任実習を行うことの多い5歳児クラスに入るには、子どもの発達や保育士の役割をあらかじめ予習しておくことが大きなポイントになります。
とはいえ、実際の現場では予習と違うことが起きたり、想像以上の学びを得たりできるものです。わからないことがあって当然ですので、保育実習では先輩の保育士に遠慮なく質問をぶつけてくださいね。