保育園の3歳児クラスは、乳児クラスから幼児クラスへと移行したばかりの学年です。
2歳児とくらべて活発に活動することが多くなりますが、担任の人数は少なくなるのでより細やかな配慮が必要になります。
では、3歳児クラスで保育実習を行う場合、実習生としてどのようなことに注意すればよいのでしょうか?
この記事では3歳児の発達段階や保育士の役割を確認しながら、保育実習のねらいや子どもとの接し方についてご紹介します。
3歳児の発達状況
3歳児クラスでは、4月1日の時点で3歳0ヶ月~3歳11ヶ月の子どもが生活しています。
保育実習に行く時期によっては、クラスの半数近くが4歳になっているということもあるでしょう。
ここでは3歳児という年齢についての発達段階について解説していますので、学年の状況によって4歳児の保育実習についての記事も参考にしてください。
発達段階を知ることで、部分実習や責任実習の活動内容もイメージしやすくなりますよ。
身体の発達
3歳児は基本的な運動機能が発達してくるため、身体をひねってなにかを投げたり、ボールを蹴るといった動作ができるようになります。
手先の発達も進み、はさみや筆記具の持ち方が少しずつ安定してくるのもこの時期です。
・力を込めて押したり引っ張ったり、ぶら下がったりといった上半身の動作、跳ねる、蹴る、またぐといった下半身の動きも一通りできるようになる。
・三輪車をこぐ、でんぐり返しをするといった回転の動きを獲得する。
・はさみの持ち方が安定し、連続切りができるようになる。
・閉じた⚪︎が描けるようになる。
言葉や社会性の発達
子ども同士のかかわりが増え、友だちとの会話を楽しむようになります。
子ども同士のかかわりが増え、友だちとの会話を楽しむようになります。「かして」など思いを言葉で言えるようになることから、遊びのルールや順番も少しずつ理解できるようになるのがこの時期です。
・語彙が豊富になり、日常生活でスムーズに会話できるようになる。
・「なぜ? 」「どうして? 」といった知的好奇心が著しく発達する。
・平行遊びをする一方で、遊具の貸し借りや模倣など友だちとのやりとりも増える。
・玩具の取り合いなどのトラブルも増え、そのなかでルールや順番を理解しはじめる。
生活習慣の発達
3歳児クラスになると、ほとんどの子が排泄の自立を完了させ、身の回りのことをある程度自分でできるようになります。
まだまだ個人差の大きい時期ですが、箸を使って食べたり、衣服を畳んで片付けたりとさまざまなことができはじめる時期です。
・食事や排泄、衣服の着脱などの基本的な生活習慣が、少しずつ自立していく。
・大人の手伝いをすることを喜び、率先してしようとする。
・まだまだ大人の助けを必要としながら「自分は一人前」という意識を持ちはじめる。
・自己決定できるようになり、決めたことをすすんでしようとする。
3歳児クラスの実習目標
次に、保育実習で学びを得るために欠かせない、実習目標の立て方についてです。
保育士の役割や、実習中どういった部分に注目すべきかがわかれば、おのずと目標が見えてくるでしょう。実習目標の例文もありますので参考にしてください。
目標の立て方について詳しく知りたいという方は、『【事例集あり】保育実習の目標の書き方』や『保育実習日誌の目標を立てるポイントとは?書き方の例も紹介!』をご覧ください。
3歳児に対する保育士の役割
3歳児クラスは、幼児クラス最初の学年です。
幼児クラスになると、保育士の人数も乳児クラスとくらべて一気に少なくなり、クラス担任は1人という保育園も少なくありません。
保育士は1人でクラスをまとめつつ、個々への対応をする必要がでてくるため、広い視野と臨機応変な行動が求められます。
子ども同士のかかわりが増え、なかよしの友だちができることでトラブルも増える時期です。子ども同士のかかわりを大切にしつつ、ルールを伝えたり、みんなで確認したりしながらクラスを運営していく役割を担っています。
実習生が見る視点
では保育実習で3歳児クラスに入った場合、実習生はどんなところに注目してみるとよいのでしょうか。
まず幼児クラスは、1人で担任を持つことが多くなります。乳児クラスの実習では保育士同士の連携を学ぶことができますが、幼児クラスになると保育士個人の技量を感じることができます。
保育士が子どもたちを次の活動に促すためにどのような工夫をしているのか、どのような声掛けをしているのかを見ていきましょう。
そのなかで、保育士が次々と子どもの対応をこなしながら別の場所のトラブルにも気づくといったような、一体いくつ目があるのかと思うような場面に遭遇することもあるでしょう。保育中、保育士はできるだけ全体が見えるような配慮をしていますので、その立ち位置にも目を向けてみると、1人担任での保育のコツに気付くことができるかもしれません。
次に子どもの様子の注目すべき点についてです。
3歳児クラスになると友だちとのかかわりが増え、保育士を介さずに子どもだけで遊びを楽しんだり、子ども同士で助け合う姿が見られるようになります。
そのなかで、おもちゃの取り合いなどのトラブルも増えますが、自分の気持ちを伝えたり、我慢したりという社会性を育む大切な機会ですので、そのような場面に出会ったときは子どもの気持ちをしっかり聞いてあげましょう。
また、特定の「なかよしのおともだち」ができるのもこの時期で、「友だちと一緒に〇〇する」、「友だちとお揃いにする」といった行動が見られます。
気をつけたいポイントは、3歳児になると言葉の理解も進むため、実習生のなにげない一言が子どもに大きな影響をもたらすこともあるという点です。
保育実習ではたくさんの子どもに囲まれるため、つい「あとでやろうね」と言ってしまいがちですが、その「あとで」をしっかり作れるのか、よく考えてから発言することを心がけてみてくださいね。
目標の例文
3歳児の目標の例文について以下にまとめました。
- ・1人担任の場合の保育士の動きを知る
- ・幼児クラスの生活の流れを知る
- ・幼児で合同で過ごすときの3歳児の動きを知る
- ・3歳児の発達の特徴を捉える
- ・保育者と子どものかかわりを見る
- ・子ども同士のかかわりを見る
3歳児クラスの保育のねらい
保育実習では、部分実習や責任実習といった場面で、実習生がねらいを立てる必要があります。なかには毎日のねらいを実習生が自分で考えて日誌に書くよう指示されるケースもあるようです。
ここでは3歳児クラスではどのようなねらいにするとよいか、ねらいの立て方や例文を紹介します。
ねらいの立て方
3歳児の保育のねらいは、子どもの主体的な行動を促すことができるような内容がよいでしょう。
大人がすべてやってあげるのではなく、子どもがやりたいと思うようなねらいをたてることで、子どもの意欲関心の向上にもつながります。
また、責任実習など1日通しての実習のねらいを立てるときは、主活動を軸に細かく立てていくことで、よりわかりやすくなりますよ。
ねらいの例文
- ・絵本の中の物語に親しみ、一緒に表現活動を楽しむ。
- ・自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
- ・自分の好きな色を選んで、製作を楽しむ。
- ・友だちと一緒に活動する中で、工夫や協力をして、達成感を味わう。
- ・簡単なルールのある遊びを友だちや保育者と一緒に行う。
- ・保育者の話を聞いて、次の活動を考えながら行動する。
3歳児クラスでの自己紹介
保育実習の初日や、入るクラスが変わったときに自己紹介をする場面があります。
3歳児クラスで自己紹介をする場合はどのような配慮が必要なのでしょうか?
ポイントや例文を紹介いたします。
3歳児に向けた自己紹介のポイント
3歳児になると生活に必要な言葉を不自由なく扱えるようになり、やり取りを楽しむことが増えていきます。
とはいえ大人のように語彙が多くありませんので、当然わからない言葉もあります。
むずかしい言葉は、簡単な言葉に置きかえるとわかりやすくなりますし、逆に少しむずかしい言葉を使うことで「それはなに?」「どういう意味?」と興味をひくことができるでしょう。
「好きな食べ物は『生姜』だけど、みんなは知っている?」というように、あまりなじみのないものをあげてみるのもおもしろいですね。
また、やりとり好きな3歳児のために、自己紹介をしたあとに実習生への質問タイムを設けてみてもよいでしょう。
子どもから多い質問は「好きな色」や「好きな食べ物」などですが、ときには「好きなとんかちは?」や「好きなお茶は?」と、3歳児ならではの解答に詰まるようなおもしろい質問を投げかけてくれることもありますよ。
質問タイムをする場合は、どこでおわりにするか難しいところがあります。「次でおしまいね」「今聞けなかった人は、遊ぶ時間になったらお話できるので聞きにきてくださいね」というように、当てられなかった子へのフォローも忘れないでください。
子どもとのやりとりを自ら増やす自己紹介は、実習生の技量が問われるので取り入れるかどうか迷いますが、子どもにとっては、自分の話を聞いてくれた! と、実習生に親しみを感じるきっかけにもなりますので、自分に合っていると思う方はぜひチャレンジしてください!
自己紹介について、より詳しく知りたいという方は、『保育実習ですぐできる!!自己紹介の3つのポイント』の記事をご覧ください。
自己紹介の例文
- みなさんこんにちは! 私の名前は田中あかりです。保育園の先生になるためにお勉強をしています。今日からうさぎ組のみなさんとたくさん遊びたいと思っているので、どうぞよろしくお願いします!
3歳児の遊び
ここからは、3歳児クラスの遊びの様子について紹介いたします。
友だちとはどのようにかかわっているのか、保育士はどの程度介入しているのか、そして一般的に好きな遊びについて記載していますので、保育実習に行ったときの参考にしてくださいね。
子ども同士のかかわり
3歳児になるとルールのある遊びを少しずつ理解できるようになり、友だち同士で楽しむ姿が見られます。
勝ち負けを理解すると「悔しい」「嬉しい」という感情を爆発させてしまうこともあるでしょう。
子ども同士でルールの解釈が異なりトラブルに発展してしまうこともありますが、その場合は落ち着いてお互いの気持ちを伝える場を設けてあげましょう。「目標」の項目にも記載したとおり、トラブルも社会性を育む大切な機会ですので、大人がすべて代弁せず、子どもの言葉を引き出してあげるような声かけをしてみてください。
まだまだ大人のフォローが必要ですが、経験をするにつれ、次第に子ども同士でも楽しめるようになっていきます。
また、4、5歳児と一緒に遊ぶことで、お兄さんお姉さんの姿からルールを理解するようになるのも、幼児クラスならではの子どものかかわりです。
保育士とのかかわり
ルールのある遊びは、最初のうちは保育士が一緒に遊びに参加し、ルールが理解できるようにゲームを誘導します。
たとえば鬼ごっこでは、最初は保育士が鬼になり、慣れてきたら子どもが鬼となり、徐々に保育士の誘導なしに子どもだけで遊びを展開していけるようにするといった具合です。
以前やったことのあるゲームでも、久しぶりに行う場合はルールを忘れている子がいるかもしれませんので、トラブルを防ぐためにも保育士が一度ルールを確認し、子どもたちが納得してから展開できるように進めていきます。
どんな遊びが好きか
3歳児が好きな遊びと、その遊びを通して子どもが得られる成長のポイントについて記載します。ねらいとしても活用できますので、保育実習でゲーム遊びを取り入れる際の参考にしてください。
- ・氷鬼(バナナ鬼)
つかまったときの行動、つかまった友だちに対する行動を知り、ゲームが長く続く楽しさを味わう
- ・かるた
文字に興味関心をしめす
多く札をとるよろこびを味わう
- ・神経衰弱
数字に興味関心をしめす
どこに何があったか、記憶力を育てる
- ・おままごと
布やハンカチなどの素材を利用し、畳む動作を身につける
ごっこ遊びの中で、自分の役割を演じる楽しさを味わう
3歳児クラスの感想と反省
保育実習日誌には、その日の感想と反省を書く欄があります。
その日に自分が立てた実習目標の内容に注目して1日過ごすことで、感想や反省が書きやすくなるでしょう。
3歳児クラスにはいった場合は、「保育士の役割」の項目に記載したように、乳児クラスとの違いについて目標にしておくと、「なにが違ったか」「保育士の動きはどうだったか」といった感想が出てくるでしょう。
また、感想や反省は書いて終わりではなく、次につなげることが重要です。
数日同じクラスに入る場合は、反省を踏まえて次の日の目標を立てることができますが、対象のクラスに入るのが1日しかないという場合もあります。
翌日別のクラスに入る場合は、今日注目してみたことについて「〇歳児ではどうだろう」と考えてみるとよいでしょう。
感想と反省の書き方について詳しくは、こちらの『【文例で解説】保育実習での感想文の書き方』や『保育実習日誌の「反省と感想」の書き方を徹底解説!』をご覧ください。
保育実習最終日のプレゼント
保育実習最終日は、実習生からプレゼントを渡すのが決まりと考えている方もいるかもしれませんが、そうではありません。
なかには、実習生の負担を考えてプレゼントをNGにしている保育園もあります。
プレゼントを渡したいと考えている場合は、保育園に確認してから準備するようにしましょう。
では3歳児にプレゼントを渡す場合、どのようなプレゼントが喜ばれるのでしょうか。
3歳児に渡すプレゼント
これまでの項目でお伝えしてきたとおり、3歳児は「ともだちと一緒」が嬉しい時期です。
メダルやベルトなど、友だちと同じものを身につけることができるプレゼントがおすすめといえるでしょう。
ただし幼児クラスになると人数も増えますので、個別に作る場合はできるだけ簡単に作れるプレゼントを選んでくださいね。
プレゼントの例
- 手作りメダル(個別)
- お礼のお手紙や壁面飾り(クラス)
- 折り紙で作った花束(クラス)
折り紙やマスキングテープ、シールなどで装飾するとかわいらしく仕上がります。
3歳児になると、少しずつ折り紙のレベルがあがっていきますので、やってみようと思えるくらいの簡単な折り紙のプレゼントもいいですね。
参考:折り紙でメダルの作り方
子どもを理解して保育実習に臨もう
今回は保育実習で3歳児クラスに入るときに知っておきたい、子どもの発達やかかわり、保育士の役割、実習生が注目すべき点などを紹介しました。
3歳児クラスで実習する期間は短いかもしれませんが、ポイントをおさえておくことで短い期間でもさまざまな学びを得ることができるでしょう。
しかし事前に勉強して保育実習に臨んだとしても、3歳児はトラブルも多く対応に困る場面も出てきます。その場合は遠慮なく保育士に質問して、自身の学びにつなげてくださいね。