保育園の1歳児クラスでは、0歳児からの進級児と新入園児が一緒に過ごしています。経験の差や月齢の差が大きいながらも、ほとんどの子が歩けるようになり遊びの空間が大きく広がる時期です。
身の回りのことや、食事などの生活面でできることが増え、自己主張も強くなっていきます。
では、1歳児クラスで保育実習を行う場合、実習生としてどのようなことに注意すればよいのでしょうか?
この記事では1歳児の発達段階や保育士の役割を確認し、保育実習のねらいや子どもとの接し方について詳しく紹介していきます。
1歳児の発達状況
1歳児クラスは4月1日の時点で1歳0か月~1歳11か月の子どもが生活しています。
月齢差が大きく、元気に走り回る子もいれば、まだ歩行が安定せずにつかまり立ちや伝い歩きの子もいる時期です。
月齢差が大きいため、保育園によっては高月齢児と低月齢児にわかれて活動を行う場合もあります。子ども一人ひとりの発達の様子にも目を向けていきましょう。
子どもの誕生日の状況によっては、保育実習に行った時点で2歳になっている子が多いという場合もあるでしょう。
この記事では1歳児の発達状況について記載していますので、2歳児クラスでの保育実習についての記事も参考にしてみてくださいね。
身体の発達
1歳児になると、おおむね歩行が安定し、移動範囲が大きく広がります。基本的な運動機能を獲得していく段階で、全身運動、指先の運動と発達のスピードが著しい時期です。
・靴を履いた状態で、長い距離を歩く。
・歩行が安定すると、走ることができる。
・ボールを投げたり転がしたりし、追いかけて楽しむ。
・指先を使ってつまんだり、ひっぱったりといった繰り返しの動作を楽しむ。
・積み木を積んで遊ぶ。
言葉や社会性の発達
喃語での会話から、徐々に意味のある言葉を発するようになります。
1語文から2語文へと言葉が増えていき、大人の言葉も理解する時期です。子どもにわかりやすい言葉を心がけていきましょう。
・自分の名前がわかり、返事をしたり手をあげたりする。
・玩具を使って、身近なものの見立て遊びをする。
・周りの人への興味関心が高まり、模倣を楽しむ。
・やりたいことがはっきりとしてくるため、思い通りにならないことで怒ったり泣いたりする姿が見られる。
生活習慣の発達
食事はつかみ食べから食具を使うようになり、排泄もオムツに出たことを知らせてくれる子もいます。
自分でできることを徐々に増やしていけるよう、保育士は子どもに合わせて適切な援助を心がけている時期です。
・ものや玩具を決まった場所に片付けようとする。
・スプーンを使い、こぼしながらも自分で食べようとする。
・大人に手伝ってもらいながら、自分も手足を動かして衣服の着脱に協力する。
・マークや色、形などから自分の持ち物がわかるようになる。
1歳児クラスの実習目標
次に、保育実習で必ず書く実習目標についてです。日々の目標が明確になると、保育実習中にどこに注目すべきかがわかり、より学びが深まります。
ここでは、保育士の役割や実習生の見るべき点を踏まえて、具体的な例文を紹介します。
1歳児に対する保育士の役割
1歳児クラスは月齢差が大きく、できることも大きく違います。
特に年度の初めは、走り回る子もいれば伝い歩きをしている子もいたり、食事もスプーンを使って落ち着いて食べる子もいれば、つかみ食べをする子もいたりとさまざまな状況です。
保育園ではクラスとして集団活動をしているものの、個々への援助が欠かせません。
1歳児クラスの保育士は子どもの様子や発達に合わせ、より丁寧な援助をする必要があります。
また、「自我」が芽生えてくるのもこの時期です。
「自分でやる」「これは自分の」という思いを主張させてあげることで、自我を発揮させます。子どもの思いを受け止めながらも、受け入れなられないことに対しては、その理由を伝えて感情を沈めたり気持ちを立て直せるように援助したりすることも保育士の大切な役割です。
実習生が見る視点
では保育実習で1歳児クラスに入った場合、実習生はどんなところに注目してみるとよいのでしょうか。
前述のとおり月齢差が大きい時期なので、保育士の対応や保育環境の工夫、室内のレイアウトなどに注目すると、1歳児ならではの配慮に気付くことができるはずです。
特に保育士の子どもへの対応をしっかり観察することをおすすめします。
たとえば、難しくて自文ではうまくできないようなことをして困っている子どもを、ただ見ているという場面があったとします。
「なんで手伝ってあげないの? 」と感じるかもしれませんが、1歳児は自分でなんでもやりたい時期です。下手に手を出すと「じぶんで! 」と泣き出してしまうことも少なくありません。
安全に配慮したうえで「見守る」というのも大事な援助方法なのです。
子ども自身、頑張ったけどできなくて気持ちが高ぶり、イライラしてしまうこともあるでしょう。保育実習中にそういった様子の子どもがいた場合、見守りながらも「手伝おうか?」や「手伝ってもいい?」と許可を得てから援助をするとスムーズにいきやすいですよ。
また、1歳児クラスは、少しずつ言葉でのコミュニケーションが取れるようになってきます。
そのため、子どもの言葉を聞き流さずに、おしゃべりに耳を傾けながら「そうだね」や「⚪︎⚪︎だったんだね」などと傾聴や反復で子どもの語彙力を高めるかかわりをすることが大切です。
目標の例文
1歳児の目標の例文について下記にまとめました。
より詳しく知りたいという方は、『【事例集あり】保育実習の目標の書き方』や『保育実習日誌の目標を立てるポイントとは?書き方の例も紹介!』をご覧ください。
- ・1歳児クラスの一日の生活の流れを知る
- ・1歳児のクラス環境の工夫を知る
- ・活動中の、低月齢と高月齢児に対する配慮や工夫を知る
- ・トラブルがあった際、保育士がどのように子どもの気持ちに寄り添っているかに注目する
- ・子どもと一緒に遊びを楽しむ
1歳児クラスの保育のねらい
保育実習では、部分実習や責任実習で実習生が保育のねらいを立てる場面があります。1歳児クラスで責任実習をすることはほとんどないのですが、なかには日々の保育や生活のねらいを実習生が考えて保育実習日誌に書くといったケースもあるようです。
1歳児クラスではどのようなねらいにするとよいか、ねらいの立て方や例文を紹介します。
ねらいの立て方
1歳児になると、子どもが自分の思いを表現するようになっていきます。
表現方法は言葉だけではなく、泣いたり怒ったり、指をさしてみたりとさまざまです。
自我の芽生えに保育士がどのように向き合い対応しているのかに注目して考えると、ねらいが立てやすくなりますよ。
ねらいの例文
1歳児のねらいの例文について下記に例文をまとめました。
より詳しく知りたいという方は、『【0~2歳児】保育実習日誌「ねらい」の書き方』をご覧ください。
- ・食事に興味を持ち、自分で食べようとする
- ・食具を持って自分で食事をする
- ・体のバランスを取りながら、歩行を楽しむ
- ・嫌なことがあったときなどに、自分で気持ちを切り替える
- ・生活のなかで、保育士に手伝ってもらいながら自分でできることは自分でしようとする
- ・遊びのやり取りを通してさまざまな言葉に親しむ
1歳児クラスでの自己紹介
保育実習の初日には、実習生が子どもの前で自己紹介をすることが多いです。
1歳児クラスで自己紹介をする場合はどのような配慮が必要なのでしょうか?
ポイントや例文を紹介いたします。
1歳児に向けた自己紹介のポイント
1歳児になると大人が話す言葉を聞こうという意思はあるものの、すべてを理解しているというわけではありません。
また、子どもによっては人見知りや場所見知りなど、いつもと違うことが怖いと感じる子もいます。
実習生のことを「知らない人」だと警戒して泣く子がいることも多いです。
1歳児で自己紹介をすることになった場合は、事前に担任の先生と打ち合わせをして、子どもの前で用意していた自己紹介をしてもよいか確認しておくと安心でしょう。
保育士が協力してくれて、子どもの出席調べの際に一緒に名前を呼んでもらったり、「あなたのお名前は♪」と曲に合わせて紹介してもらったりするケースもあるようです。
より詳しく知りたいという方は、『保育実習ですぐできる!!自己紹介の3つのポイント』の記事をご覧ください。
自己紹介の例文
- ①短く済ませる場合
- みなさんこんにちは、田中あかりです。たくさん一緒に遊ぼうね。よろしくおねがいします。
- ②協力してもらう場合
- 先生「あれ、あの先生は誰かな?みんなも一緒に聞いてみようか、『あーなたのおなまえは♪』」
- 実習生「田中あかりです」
- 先生「『あら素敵なお名前ね♪』」
- 実習生「たくさん遊ぼうね! よろしくおねがいします。」
1歳児との遊び
子ども同士のかかわり
1歳児になると友だちの存在がわかり、保育士の働きかけを受けながら少しずつかかわりを持つようになります。
一緒に遊んでいるように見えても、同じ空間でそれぞれ自分の世界を楽しむ平行遊びであることが多く、自分の思い通りに相手が動かなかったり、使っていた玩具をとられたりすると、手や口がでてしまいトラブルに発展することもある時期です。
子ども同士での解決は難しいため、保育士が相手の存在や気持ちを伝えるなどの対応をしていきます。
子どもの気持ちを大切にしつつ、社会性を身に付けられるように適切な対応を取ることが保育士の役割のひとつです。
クラス全体の月齢があがっていくとともに、ごっこあそびや追いかけっこなど、友だちや先生の真似をして楽しむ遊びができるようになりますよ。
保育士とのかかわり
周囲に興味が向くようになり、さまざまな模倣を楽しむようになる1歳児。
保育士が「まてまて~」と追いかけたとき、逃げるのではなく一緒になって「まてまて~」と追いかける素振りをみせるのがこの時期です。
追いかけっこが成立しなくとも、保育士はルールにとらわれず、子どもが楽しめるような工夫をしながら遊びを展開しています。
また、指先の発達を促す遊びを楽しむために、既存の玩具だけでなく手作りの玩具を使っていることも乳児クラスの特徴です。
遊びのなかで、保育士がどのような働きかけをしているかという部分も、保育実習で注目すべきポイントといえるでしょう。
どんな遊びが好きか
1歳児が好きな遊びと、その遊びのねらいとなるポイントを紹介します。保育実習で遊びの様子を見る際の参考にしてくださいね。
- ・おにごっこ(おいかけっこ)
友だちと身体を動かすことを楽しむ
大人の行動を真似る
・指先あそび(ぽっとんおとし、ストロー落としなど)
指先の発達を促す
集中力を鍛える
・おままごと
見立て遊びを楽しむ
大人の真似をして楽しむ
・お絵かき
なぐり描きをしながらクレヨンの使い方を知る
色を覚える
より詳しく子どもとの遊び方を知りたいという方は、『【職場体験で使える!!】保育士が教える子どもと遊ぶときのポイント』の記事をご覧ください。
1歳児クラスの感想と反省
保育実習日誌に、必ずといってよいほどある「感想」「反省」の欄。
1歳児クラスに入った場合はどんなことを書けばよいのでしょうか。
まずは全クラス共通のポイントとして、その日に立てた実習目標を念頭において1日を過ごし、それについてどうだったかを書くと文章を組み立てやすくなります。
1歳児クラスでは、0歳児との違いに注目するとより感想やエピソードを書きやすくなるでしょう。保育士の援助の様子や、生活の流れにどのような違いがあるのか知る、などの目標を立て、それについてわかるようなできごとがあればメモをとっておきます。
月齢差が大きいという特徴から、保育士が子どもにどのような援助をしているのかといった部分も注目すべきポイントです。
また、1歳児になると喃語から意味のある言葉を話すようになります。
情緒が豊かになる一方で、まだうまく自分の感情をコントロールできず、友だちを叩いたり、噛みそうになったりする姿も見られるでしょう。
保育実習中にそういった現場を見かけたら、保育士のかかわりや、子どもの気持ちの切り替えかたを観察し、エピソードとして記録をしておくとよりよい手立てを知ることができます。
さらに秋以降に保育実習に入った場合は、1歳児クラスから2歳児クラスへの進級に向けて、少しずつ子ども自身ができることを増やしていくための配慮を知ることができるでしょう。
生活面での自立に向けては、たとえば着脱一つにしても服の脱ぎ方や畳み方、保護者への衣服についてのお願いの方法までさまざまな配慮点があります。疑問に思った箇所はその日の反省会で保育士に尋ねるなどして、目で見えない部分への理解も深めていけると、さらに有意義な感想、反省になりますよ。
さらに詳しく感想と反省の書き方について知りたいという方は、『【文例で解説】保育実習での感想文の書き方』や『保育実習日誌の「反省と感想」の書き方を徹底解説!』の記事をご覧ください。
保育実習最終日のプレゼント
実習最終日に、お世話になった保育園の子どもたちにプレゼントを渡したいと思っている実習生もいるでしょう。
しかしなかには、実習生の負担を考えてプレゼントをNGにしている保育園もあります。
プレゼントを準備したいと考えている場合は、事前に保育園に確認してから準備してくださいね。
では、1歳児クラスにプレゼントを渡す場合、どのようなプレゼントが喜ばれるのでしょうか。
1歳児に渡すプレゼント
1歳児は、発達段階にもあったとおり、興味関心の幅が広がったり、指先の発達が著しく進んだりする時期です。
子どもたちの好きなイラストを描いたり、手作りの簡単な玩具を準備するのもいいでしょう。
玩具をプレゼントする場合、園によって規定があるので必ず確認してくださいね。
プレゼントの例
- イラストのお手紙(画用紙に大きく書き、全員で1枚)
- 手作りのマラカス
手作りのマラカスの場合、小さなペットボトルに生米、小豆、ビーズなどを入れて作ります。
ペットボトルはよく洗浄しておくこと、中身がこぼれないように接着剤でふたをし、テープでとめるといった対策をとっておきましょう。
中身によって振ると音が変わるので、何種類か作っても喜ばれますよ。
外側はマスキングテープやシールなどで飾り付けてもいいですね。
手作りのプレゼントについて、『保育実習で子どもに渡す手作りプレゼントのおすすめ3選』と『保育実習でクラスに渡す手作りプレゼントのおすすめ3選』の記事で紹介をしているので、ぜひご覧ください
子どもを理解して保育実習に臨もう
今回は保育実習で1歳児クラスに入る際のさまざまなポイントを紹介しました。
子どもの発達やかかわり、保育士の役割、実習生が注目すべき点などをおさえておくことで、短い期間でもさまざまな学びを得ることができるでしょう。
しかしこの記事だけですべてを学べるというわけではありません。普段の学校での学びや、保育実習の現場での学びを大切に、そしてわからないことは遠慮なく質問し、いろいろなことを吸収していってくださいね。