保育実習日誌には、子どもの様子だけではなく一日の反省や考察、感想を書く欄がある場合がります。
「感想と反省」「気づきと反省(考察)」など、項目名は様式によってさまざまですが、そもそも、考察と反省の違いとはなんでしょうか?
どのように書けばいいのかわからずに、悩んでいる方も多いのではないかと思います。
今回は、考察と反省の違いや、考察を書くにあたって実習中にどんなことを意識すればいいのかについてまとめました。
実際に日誌の考察欄に書くための例文もあわせて紹介しているので、参考にしてみてくださいね。
保育実習日誌の考察と反省の違いとは?
保育実習日誌の欄にある考察と反省。
そもそも、考察と反省はどういう違いがあるのか、いまいちピンときませんよね。
まずは、考察と反省の違いを理解しましょう。
考察とは
考察とは、保育実習のなかで起きたできごとについて、考えられることや、推測されることをまとめたものです。
たとえば、「3歳児が友だちに手を出すトラブルがあった」という事実があったとします。
この事実から、まわりの様子や前後の流れを踏まえて「自分の玩具を横取りされたことによる不快感を、3歳児である本児の発達段階では言葉でうまく伝えられず、別の感情表現として手が出てしまったのではないかと考える」と推測し、まとめることが考察です。
考察をうまくまとめるためには、保育実習中の子どものやりとりや、保育士の子どもへの働きかけなどをしっかりと観察する必要があります。
反省とは
反省とは、保育実習をすすめるなかで自分に足りないと感じたことや、こうすればよかったと振り返ることです。
同様に、「3歳児が友だちに手を出すトラブルがあった」という事例で考えてみましょう。
「自分が近くにいたが、玩具を横取りされていたことに気がつかなかった。手が出る前に、子どもの思いをくみ取って間に入って話をできるようにしたい」と、自分がどうすればよかったのかを振り返り、まとめることが反省です。
保育実習中は「ああすればよかった」、「こうすればよかった」と思う場面が毎日のように出てきます。
その思いを反省としてまとめることにより、次の目標も見えてきますので、決して後ろ向きにならず、文章の最後は前向きな言葉で締めくくるようにしましょう。
保育実習日誌の反省の書き方については、こちらの記事をご参考ください。
保育実習中に意識すること
保育実習日誌の考察を書くために、実習中におきた出来事をより深く掘り下げられるようにしておく必要があります。
実習中は以下のことを意識しながら過ごしたり、保育士に確認したりしておくといいでしょう。
保育のねらい
1日の保育には、必ずねらいがあります。散歩ひとつを例にあげても、子どもの年齢や状況によって、ねらいはさまざまです。「散歩の道中、商店街の人に挨拶をする」というねらいから、「最後まで自分の足で歩く」や「公園へ行き、ルールを守って鬼ごっこを楽しむ」というものもあります。
ねらいによって保育士が「どのルートで」、「どのくらいのスピードで」、「どのくらいの時間をかけて」目的地に連れていくかも変わってくるのです。
可能であれば、その日の保育のねらいを保育士に確認しておきましょう。
保育士の声掛け
保育士は、子ども一人ひとりの状態にあわせて声掛けの仕方を変えています。
負けず嫌いな子や、言葉を強く受け止めてしまいやすい子など、子どもの性格はさまざまです。
保育士がそういった子どもの違いに対して、どのような配慮をしているのかに注目して観察するとよいでしょう。
子どもの興味や感情
子どもによって、同じ散歩道でも興味を持つ点は違います。
たとえば、赤い花が咲いていたとして、Aちゃんは「赤い花が咲いていてきれいだな」と思ったとしても、Bちゃんは「赤い花よりも、その隣の緑の草が気になるな」と思うかもしれません。
子どもがどんなものに興味を持っているのか、そのときにどんな感情をみせるのか……最初は、その違いを見つけることは難しいかもしれません。しかし、子どもの視点に立ってみると、いろいろな発見ができるようになりますよ。
子どもの行動や発言
前述した子どもの興味や感情によって、子どもの行動や発言も一人ひとり大きく違ってきます。
かけっこをして負けてしまったときにも、「あー楽しかった!」と走ることを楽しんでいる子もいれば、「くやしい!」と言葉と態度をあらわにする子もいて、その違いが保育士の対応の違いに繋がってくるのです。
子どもの行動や発言に目を向け、おもしろいな、気になるな、というものがあったら、積極的にメモを取ってくださいね。
保育実習日誌の考察の書き方のポイント
ここまでに紹介したことを意識して保育実習の1日を過ごしたら、いよいよ日誌に考察を書いていきます。
ここからは実際に考察を書くにあたって、読みやすい文章を書くポイントを紹介していきます。
文章を書くときには、日中のメモだけではなく、日々の反省会で得られる保育士のアドバイスも参考にしてみましょう。
保育士のねらいを考える
考察のために保育士の声掛けや行動を書くときには、発言をそのまま記入するのではなく、その裏にある保育士のねらいや配慮を考えて書いてみましょう。
保育者のねらいによっては、同じ声掛けでも違った意味合いを持つことがあるからです。
もし、改めてねらいや配慮を考えても、なぜ保育士がそのような声掛けや行動をしたのかがわからなかった場合は、疑問点としてメモを残しておき、次の日に質問してみてくださいね。
子どもの発言や行動を記載する
子どもの発言や行動についても、できるだけ細かく記載しましょう。そうすることで考察が読みやすくなり、後から読み返したときにもわかりやすくなります。
- Aちゃんはにんじんが苦手だが、給食に入っていたにんじんを自分で口に運んだ。前に座っていたBちゃんがにんじんをおいしそうに食べており、頑張って食べてみようという気になったのだと思う。
このように、事実に対する考察も合わせて記載することで、どういう経緯でそう考えたのかがわかりやすくなります。
この例文の状態で終わってしまうと「考察と反省」欄としては不十分なので、次にどういう行動をしたいか、どう感じたかの感想も忘れずに書いておきましょう。あとあと見返したときに「あのときはそう思ったのか」と振り返ることができますよ。
表記の注意点
保育実習日誌で感想や反省を書いていると、自分の考えをまとめるために「話し言葉」になりがちです。
トイレ関係の言葉は「トイレに行く」ではなく「排泄」という言葉に置き換えたり、「~させる」「~をしてあげる」という書き方ではなく「~を促す」という表現にしたりするなど、文章の表記の仕方に気を付けましょう。
固有名詞や子どもの個人名の表記など、保育園によっても対応の仕方が異なります。
特に、子どもの名前については、そのまま記載してよいという場合もあれば、イニシャルにちゃん付けをする、A・Bなどの記号で表す……というように、保育園や所属する学校によってかなり違いがあります。
保育実習が始まる前に、どのように表記したらいいのかを実習担当の先生に確認しておきましょう。
考察から反省点をあげる
一日を振り返り考察を記入したあとは、その考察をもとに反省点を記入します。
「自分は○○と考えたため、○○のように行動したが、その結果○○となった。だから次は○○したい」というように、反省の前に自分の考察を書いておくと、どうしてその反省になったのかが見えてきやすくなります。
保育実習中は、わからないことがたくさんあります。子どもの突拍子もない行動に驚かされることもたくさんあるかと思います。
失敗してしまった、もっといい声掛けがあったはず……とネガティブな反省ばかり思いついてしまいがちです。しかし、「Aちゃんが悲しんでおり、○○が原因だと考えたので、○○と言ったら喜んで遊んでくれた。この経験をもとにほかの子どもたちとも積極的に関わりたい」というように、ポジティブな反省点もあげられるようになるといいですね。
反省の書き方については、こちらの記事でもまとめています。(内部リンク)
保育実習日誌の考察の例文
考察の欄に書くことを想定した例文を、いくつか年齢別に紹介いたします。
「考察と反省」「感想(考察も含む)」などの項目の場合は、考察のあとに反省や感想を書いて次の実習につながるような文章にしてくださいね。
異年齢での活動に参加しました。クラスの活動とは異なり、5歳児が年下の子に優しく接する姿が印象的でした。普段ならできることなのに、3歳児が5歳児に甘えているのを見て、異年齢での活動で「甘えられる対象」がいるからこそ、普段できることも手伝ってもらおうとしているのだろうと考えました。(3歳児)
Aちゃんが泣いているのをみて、Bちゃんが「どうしたの? どこか痛いの?」と声をかけていました。覗き込もうとする姿や話し方がA保育士の声掛けに似ていたので、保育士の事をよく見ており、自分が言われて何か心に残っているからこそ、Aちゃんに同じように話しかけているのだなと考えました。(2歳児)
AくんとBくんが同じ玩具の取り合いをしていた。直前までAくんが使っていた玩具だったので、Bくんが急に来たことでAくんが戸惑っているように見えた。Bくんに「一緒に遊ぼうって声をかけてみよう」と提案することで解決した。(2歳児)
Aちゃんが玩具をもって「あ、あ」と喃語で話しかけてきた。直前にB保育者と「どうぞ」のやり取りをしていたので、繰り返し遊ぶことを楽しめる月齢なのだろうと考え、同じように玩具を受け取ると笑顔を見せてくれた。(0歳児)
自分の考えを素直に書こう!
保育実習日誌の考察についてまとめてみました。
考察と書かれると、難しいように感じて身構えてしまいがちですが、自分の考えや思ったこと、感じたことを素直に書くことが第一です。
考察をうまくまとめるためには、実習中の子どものやりとりや、保育士の様子などをしっかりと見ておきましょう。実習中にメモが可能な場合は、思ったことをその都度、メモに残しておけるといいですね。
保育実習日誌における考察は、あとあと見返したときに自分の糧になるはずです。
保育実習を有意義な日々にするためにも「適当でいいや」と思わず、自分がそのときに感じたことをしっかりと記入しておきましょう。