保育士は子どもの命を預かり安全を守る責任重大な職業ですが、国家資格を取得して勤めているにもかかわらず「給料が安い」というイメージを持たれてしまう傾向があります。
現在、保育士を目指して就活をしている方のなかには、保育士の給料について不安に思っている方も多いのではないでしょうか。実際に保育士の退職理由のひとつとして、福利厚生や待遇が十分でなく「仕事量と給料が見あっていない」ことが多くあげられます。
「実際に保育士の給料はどれくらいなのか」「保育士の給料をあげることはできないのか」と心配になる方も多いと思いますが、給料や待遇は勤めている保育園や役職によって大きく変わります。自分の頑張り次第で、スキルアップをして給料を上げることも可能でしょう。
今回は、保育士として就職しようと考えている方に向けて、2021年時点での保育士の給料の実態について解説していきます。
保育士の給料はどれくらい?
まずはじめに、保育士の平均給料について解説していきます。
【保育士の平均給料(2020年度)】
月給:24.98万円
年間賞与:74.74万円
厚生労働省の2020年度「賃金構造基本統計調査」によると、正社員登用されている保育士に支給される月給給与額、年間賞与額は上記のように記されています。
月給から所得税や社会保険料などが控除されるので、実際に支給される手取り額は月給の75~85%といわれています。そのため、上記の月給の場合の月の手取り額はおよそ20万円前後といえます。
平均月給と年間賞与をもとに年収に換算すると、保育士の平均年収はおよそ347万円前後であるといえるでしょう。
年度 | 現金給与額 | 年間賞与等 |
2016年 | 22.99万円 | 66.25万円 |
2017年 | 23.93万円 | 70.77万円 |
2018年 | 24.45万円 | 70.06万円 |
2019年 | 24.25万円 | 70.06万円 |
平成27年から保育士の給料のベースアップを目的とした処遇改善加算Ⅰ、Ⅱが施行されています。
上記の表から少しずつではありますが、保育士の給料が年々上がっていることが分かります。政府が保育士の給料処遇改善に取り組んでいるため、今後も保育士の給料は改善されていくでしょう。
ただ同じ国家資格が必要な看護師はおよそ年収460万円といわれており、保育士の年収と比べてみると100万円以上違うことになります。
そのため保育士の給料の改善の余地はまだまだあるといえそうです。
出典:賃金構造基本統計調査/厚生労働省
働いている場所や役職によって保育士の給料は変わる
勤める保育園や役職、地域によって保育士の給料は変わります。今回は常勤として働いた場合の平均給与額をまとめました。
【役職別】
園長 | 57.8万円 |
副園長 | 50.1万円 |
主任保育士 | 46.0万円 |
【種別】
保育所
私立 | 公立 | |
施設長 | 56.5万円 | 63.2万円 |
主任保育士 | 42.2万円 | 56.1万円 |
保育士 | 30.1万円 | 30.3万円 |
幼稚園
私立 | 公立 | |
園長 | 45.3万円 | 62.5万円 |
副園長 | 41.3万円 | 57.0万円 |
教諭 | 28.7万円 | 37.8万円 |
出展:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】/内閣府
一般保育士であれば私立でも公立でもさほど差はないようですが、幼稚園教諭だと私立より公立のほうが10万円近く高いことが分かります。
そして役職があがるとさらに高くなり、私立の主任保育士だと42.2万円、公立の主任保育士だと56.1万円となっています。
種別や役職によって給料の金額は異なりますが、全体的に私立より公立のほうが給料は高い傾向にあるようです。
保育士の給料を上げるためには?
保育士の給料は年々改善されておりますが、「給料が安い」とイメージを持っている方はまだまだ多いでしょう。少しでもよい条件で納得して働くために、いまできる保育士の給料を上げるための方法についてご紹介します。
キャリアアップで昇給する
給料をあげる方法のひとつに役職に就くという方法があります。
保育士の役職は、園長、副園長、主任保育士などがあります。さきほど紹介した役職別の年収を見ていただいても分かるとおり、役職があがればあがるほど給料もアップしていることが分かります。
ただし園長、副園長、主任保育士などは園にひとりなど人数に限りがあるため、なかなかキャリアアップは難しい状況でした。しかし、近年は政府による保育士の処遇改善の施策により、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」といった新たな役職がつくられました。保育士の役職が増えたことにより、一般保育士がキャリアを積み上げやすくなったといえますが、これらの役職に就くためには、保育士のキャリアアップ研修を受講する必要があります。
保育士のキャリアアップ研修とは、保育士経験がおよそ3年以上の方を対象とした、昇格・待遇改善のための研修制度です。この保育士のキャリアアップ研修を受けて役職に就くと、最大で月4万円の手当が国や自治体から支給されます。
保育士のキャリアアップ研修ではさまざまな分野を扱っているので、受講することで保育の専門知識を深めることができます。
研修分野は以下の8つです。
1.乳児保育
2.幼児教育
3.障がい児保育
4.食育・アレルギー
5.保健衛生・アレルギー
6.保護者支援・子育て支援
7.保育実践
8.マネジメント
キャリアアップ研修の受講対象者は研修ごとに異なるため、事前に確認するようにしましょう。
キャリアアップ研修の修了資格は全国で通用するので、転職や復職をしたい滞在保育士の方も受講しておくことをおすすめします。
まとめ
今回は2021年時点の保育士の給料について解説しました。
保育士として働くためにも、給料は重要なポイントですよね。保育士の給料は比較的安いというイメージがありますが、政府により徐々に給料などの処遇は改善されています。そして自分の頑張り次第でさらに給料アップをすることもできるでしょう。
今後どのように保育士として働いていくかを考え、自分に合った職場や環境を見つけられるとよいですね。