0歳児は、運動面でも感覚面でも著しい発育と発達が見られる時期です。
この時期に、子どもの欲求に対して適切に対応することで、人に対する信頼が築かれていきます。
また、初対面の人や覚えていない人の顔を見ると泣くといった「人見知り行動」も始まり、保育士との信頼関係が重要です。
では、0歳児クラスで保育実習を行う場合、実習生としてどのようなことに注意をすればよいのでしょうか?
この記事では0歳児の発達段階や保育士の役割を確認し、保育実習のねらいや子どもとの接し方について詳しく紹介していきます。
0歳児の発達状況
保育園によって異なりますが、0歳児クラスは4月1日の時点で生後57日目~0歳11か月までの子どもが生活している場合が多いです。
産休明け保育を行っている保育園では、生後57日目以降のまだ首が座っていない子どもから、なかには歩き始めている子までおり、月齢差の大きい学年です。
生後57日目の子と、生後11か月の子では生活リズムも違うため、0歳児クラスでは個々の生活リズムを大切に、一人ひとりに合わせた保育を行っています。
0歳児は月齢と同時に発達の個人差も大きいため、ここで紹介する発達状況はあくまでも目安であることを覚えておいてくださいね。
身体の発達
0歳児クラスの子どもは、月齢差が大きいと同時に、成長が著しい学年でもあります。
まだ首が座らないうちに入園した子が、年度の終わりには歩けるようになっているというほどの発達が見られるのは0歳児ならではです。
6か月未満
・首が座る
・寝返りができるようになる。
・手を口にもっていったり、目の前のものをつかもうとしたりする。
・うつ伏せの状態で頭や肩をあげる。
6か月から1歳頃
・ずりばいやハイハイ、おすわり、つかまり立ちからつたい歩きといった段階を経て歩くようになる。
・興味のあるものに手を伸ばし、触る、持つ、打ちつけるといった動作を楽しむ。
・棒落としなどの玩具で遊ぶことを楽しむ。
言葉や社会性の発達
0歳児にとって大人に意思を伝える手段は「泣く」ことです。
オムツが汚れたことによる不快や、構ってもらいたいという気持ちを泣くことで伝えようとします。
その後、少しずつ喃語がでてきて、意味のある言葉を発するようになりますよ。
6か月未満
・不快の種類によって泣き方を変えたり、さまざまな発声を楽しんだりする。
・大人と視線を合わせ、あやすと笑うようになる。
・声や音のする方向を見ようとする。
6か月から1歳頃
・大人の表情、声、身振りから感情を理解しようとする。
・自分の欲求や発見を、指差しで伝えようとする。
・家族や保育士など身近な人の顔がわかるようになり、知らない人には人見知りをする。
生活習慣の発達
基本的に保育士や保護者が身の回りのことを行います。
オムツを替えることで「きれいになった」ということに気付くように声をかけたり、1歳児に向けて少しずつ幼児食に移行したりする時期です。
6か月未満
・口元に食べ物が来ると、自分から口を開けて食べようとする。
・咀嚼、嚥下は未発達なので舌でつぶすようにしながら食べる。
・午前と午後、夕方の3回寝が必要な子がいる。
6か月から1歳頃
・歯茎で噛むところから、次第に歯が生えてしっかり噛めるようになる。
・手づかみ食べをしたり、自分でコップを持って飲もうとしたりする。
・午前寝や夕寝が必要なくなり、生活リズムが安定してくる。
0歳児クラスの実習目標
保育実習日誌には、毎日その日の実習目標を書きます。
0歳児クラスではどのような目標が考えられるか、保育士の役割や実習生が注目すべき点から見ていきましょう。
0歳児に対する保育士の役割
0歳児クラスは月齢差が大きく、一人ひとりの姿が大きく違うことが特徴です。
生活リズムもさまざまで、午前寝や夕寝が必要な子もいれば、入園してすぐに1歳を迎えて、午睡のみで過ごす子もいます。
食事についても、ミルクの子はそれぞれの時間に合わせてミルクを調乳し、離乳食が始まれば家庭でクリアした食材を確認しながら、離乳初期、中期、後期と段階を踏み、集団生活といえども一人ひとりへの丁寧な対応が必要です。
そのため0歳児クラスでは子ども3名に対し保育士1名と定められており、保育士は子どもとその家庭との信頼関係を築き、安心して保育園生活を送ることができるよう日々配慮しています。
そのため、排泄、食事、睡眠といった生活面の対応は担当の保育者が行うという「育児担当制保育」を取り入れている保育園もあるほどです。
また、0歳児クラスは4月の段階で定員に達しておらず、年度の途中から入園する子もいます。保育園での集団生活の長さによっても、子どもの理解は違うので確認してみるのもいいでしょう。
実習生が見る視点
0歳児クラスへの保育実習は、多くても数日しか入ることがありません。
少ない日数のなかで学びを得るために、どのような点に注目するとよいのでしょうか。
まずは保育士が子どもへどのような声かけ、対応をしているかという点です。
0歳児クラスは2人以上の複数担任で保育をしていることがほとんどです。
保育士同士の連携についても観察すると、クラス全体の動きも見えてくるでしょう。
幼児クラスとは大きく違いますので、その違いを発見してみてください。
また、0歳児クラスでは、その年度の子どもの月齢によって、保育室内のレイアウトや使い方を工夫しています。
4〜8月生まれの多い年、早生まれが多い年での違いを保育士に聞いてみるのもおもしろいですよ。
では、子どもの様子はどこに注目するとよいでしょう。
0歳児の子どもは口にものを入れて「これはなんだろう」と確認します。
そのため、玩具は洗浄・消毒をしやすいものを選んだり、誤飲を防ぐための工夫をしたりしているはずです。
子どもの遊び方や、口に入れるなどの動作に注目し、環境設定の工夫を見つけてみましょう。
目標の例文
0歳児の目標の例文について下記にまとめました。
より詳しく知りたいという方は、『【事例集あり】保育実習の目標の書き方』や『保育実習日誌の目標を立てるポイントとは?書き方の例も紹介!』をご覧ください。
- ・0歳児クラスの一日の流れを知る
- ・クラス環境の工夫を知る
- ・子どもとの関わり方を知る
- ・保育士の連携を見る
- ・子どもにあわせた援助の仕方を知る
- ・子どもの生活リズムの違いにあわせたクラス運営の仕方をみる
0歳児クラスの保育のねらい
保育実習では、実習生が活動のねらいを立てる場面があります。0歳児クラスでは部分実習や責任実習を行うことはまずありませんが、なかには日々の保育のねらいを実習生が考えて日誌に書くといった保育園もあるようです。
ねらいの例文を紹介しますので、参考にしてみてくださいね。
ねらいの立て方
0歳児のねらいは、月齢の差で発達が大きく違うため、全体を見通したねらいと個別対応のねらいの2つを立てると、より理解を深めやすくなります。
月齢差による違いを保育実習中に確認しておくと、より具体的なねらいを考えられるようになるでしょう。
ねらいの例文
0歳児のねらいの例文について下記に例文をまとめました。
より詳しく知りたいという方は、『【0~2歳児】保育実習日誌「ねらい」の書き方』をご覧ください。
- ・個々の発達にあった離乳食の状態により、食事を自分でとりこめるようにする
- ・さまざまなものに触れる過程で、素材や形の違いを知っていく
- ・大人との1対1の関わりの中で、大人の身振りを真似て楽しむ
- ・遊びの中で全身運動を行い、四肢を十分に使って発達を促す
- ・安心した環境の中で睡眠や休息をとる
- ・絵本や手遊びを通して大人の真似を楽しむ
0歳児クラスでの自己紹介
保育実習初日に行われることが多い実習生の自己紹介ですが、その日に入ったクラスのなかで再度自己紹介を求められるケースも少なくありません。0歳児クラスではどのような自己紹介が適しているのでしょうか。
0歳児に向けた自己紹介のポイント
0歳児では朝の会や集まりといったことをせず、個人の生活リズムに合わせて活動を行っている保育園もあります。
高月齢児だけ朝の会をしていたり、クラス全体で集まりをしていたりと状態はさまざまですが、基本的には保育士に自己紹介すべきかどうか確認をとることをおすすめします。
0歳児は人見知りが始まり、知らない大人を怖がる子がいる場合もあるため、自己紹介は必要ないよと言われることもあるでしょう。
実習生の名前を伝えても、まだ理解できない子も多いです。
もし自己紹介をする必要がある場合は、子どもの集中力に合わせて、短時間で済ませるようにしましょう。
保育実習の時期にクラスの状態が落ち着いていれば、手遊び1つ程度であれば対応できる場合もありますよ。
より詳しく知りたいという方は、『保育実習ですぐできる!!自己紹介の3つのポイント』の記事をご覧ください。
自己紹介の例文
- 「田中あかりです、よろしくお願いします」
- 「田中あかりです、たくさん一緒に遊ぼうね」
0歳児との遊び
ここからは、0歳児クラスの遊びの様子について紹介いたします。
友だちとのかかわりはあるのか、保育士はどのように遊びに介入しているのか、そして一般的に好まれる遊びについて記載していますので、保育実習に行ったときの参考にしてくださいね。
子ども同士のかかわり
0歳児は、基本的には個々で遊んだり、大人と1対1で遊んでいいます。
子ども同士のかかわりは「かかわる」のではなく「そこにいる」という認識です。
日が経つにつれて、ただそこにいるだけだった存在から「いつもいる子」という認識に変わっていきます。
しかし一緒に玩具で遊ぶのではなく、遊んでいた延長線上に友だちがいた、ということが多いです。
保育士とのかかわり
0歳児は、情緒面での成長のためにも保育士とのかかわりが欠かせません。
1対1で向き合ってわらべうたを楽しんだり、簡単な赤ちゃん体操などで遊んだりしています。
わらべうたや体操で身体を動かすことは、四肢の発達にも繋がるので保育で取り扱われることが多いです。
また、「ちょうだい」「どうぞ」などのやりとりや、絵本を一緒に見るなかで、言葉に親しんだり保育者との信頼関係を築いたりします。
どんな遊びが好きか
0歳児がよくする遊びについて、遊びの種類とその遊びのねらいとなるポイントを合わせて紹介いたします。
より詳しく子どもとの遊び方を知りたいという方は、『【職場体験で使える!!】保育士が教える子どもと遊ぶときのポイント』の記事をご覧ください。
- ・おいかけっこ(歩行の安定をはかる)
- ・積み木(手指の発達を促す、積み上げてくずす楽しさを味わう)
- ・音の鳴る玩具(さまざまな素材の音を楽しむ、どこから音が鳴っているのか気づく)
- ・指先遊び/ぽっとん落とし(手指の発達を促す)
0歳児クラスの感想と反省
保育実習日誌には欠かすことのできない「感想と反省」ですが、0歳児に実習に入った場合はどのようなことを書けばよいのでしょうか。
0歳児は、月齢や子どもの状況によって生活リズムが変わってきます。
クラス全体を見て感想や反省を書くことも大切ですが、2日目、3日目と0歳児クラスに入ることがある場合には、低月齢児と高月齢児の生活リズムの違いについても注目すると、0歳児保育の理解がさらに深まるでしょう。
また、0歳児では個々での生活を送っていたところから、集団生活ができるようになる時期です。
最初のうちは全員バラバラに行動していたことが、年度の途中になってくると「朝の会」や「絵本を見るために集まる」といった行動がとれるようになり、年度末になるとほとんど全員が座って保育士の話を聞くようになります。
0歳児から1歳児クラスにむけて、どのようなねらいをたてているのかを考えながら実習すると、大きな発見があるかもしれませんね。
さらに詳しく感想と反省の書き方について知りたいという方は、『【文例で解説】保育実習での感想文の書き方』や『保育実習日誌の「反省と感想」の書き方を徹底解説!』の記事をご覧ください。
保育実習最終日に渡すプレゼント
実習最終日に入ったクラスにプレゼントを渡したいと考えている実習生もいるかと思います。
保育園の中には、実習生の負担を考えて、プレゼントをNGにしている保育園もあるので、確認してから渡すようにしましょう。
では、0歳児にはどのようなプレゼントが喜ばれるでしょうか。
0歳児に渡すプレゼント
0歳児は「一緒に遊んだ実習生」という記憶はほぼありません。担任ですら子どもに「0歳児の頃は覚えてない」と言われることもあります。
お手紙やイラストなどの思い出の品よりは、0歳児が遊べる玩具をプレゼントするといいですね。
プレゼントの例
手作りマラカス
お手玉
持ったり振ったりすると音が鳴って楽しめるような玩具は、特に好まれます。
しかし中身に細かなパーツを使うことが多いため、誤飲防止対策をしっかりとる必要がありますので作る際に注意してくださいね。
手作りのプレゼントについて、『保育実習で子どもに渡す手作りプレゼントのおすすめ3選』と『保育実習でクラスに渡す手作りプレゼントのおすすめ3選』の記事で紹介をしているので、ぜひご覧ください
子どもを理解して保育実習に臨もう
今回は保育実習で0歳児クラスに入るときに知っておきたい、さまざまなポイントについて紹介しました。
0歳児クラスで実習する期間は短いですが、事前にポイントをおさえておくことで短い期間でもしっかりと学びを得ることができるでしょう。
0歳児クラスは、言葉でのコミュニケーションを上手く行うことはできません。
そのため、子どもの喃語や身振り、指さしなどから気持ちを汲み取ることが重要です。
子どもがどうして泣いているのか、何に興味があるのかなどを考えて実習に取り組んでみてくださいね。