保育実習が終わると、貴重な体験をさせていただいたことへの感謝の気持ちを込めて、実習先の保育園へお礼状を書くことになります。
社会人として相手方に出す「お礼状」は、友だちに書くような手紙とは違い、構成や挨拶文などの決まりを守って書く必要があります。
なかなか書き慣れないため、「文章の流れが分からない」、「普通に書いてはいけないの?」と戸惑いや疑問があることでしょう。
なかでも「時候の挨拶」は使い慣れない言葉が多いので、どのように書けばよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は保育実習後に出すお礼状について、特に時候の挨拶(季節の挨拶文)の書き方を中心に解説していきます。
四季によって変わる時候の挨拶について、例文も合わせて紹介していますので参考にしてみてくださいね。
お礼状の構成とは?
お礼状に限らず、手紙は一般的に、前文・主文・本文・末文の4つで構成されます。
- 【前文】
- お礼状の挨拶に当たる部分のことを言います。’’拝啓’’や’’拝呈’’などの「頭語」と「時候の挨拶」と「相手の身体を気遣う言葉」の3つで構成されています。
【主文】
手紙を書くうえで一番伝えたいことを書く重要な場所です。お礼状の場合は感謝の気持ちを伝えることが目的になりますので、保育実習をさせていただいたことへの感謝の気持ちを簡潔にまとめて書きましょう。
【本文】
実習で学んだことを具体的に書くようにしましょう。書きたいことがまとまらず、だらだらとした文章にならないよう、事前にエピソードをしぼって文章をまとめておくとよいですね。
【末文】
「結びの挨拶」と’’敬具’’や’’敬白’’などの「結語」から構成されています。結語は、「拝啓からはじまれば敬具」というように、必ず対になる言葉の決まりがあります。保育実習のお礼状の場合は、「拝啓」「敬具」の組み合わせで問題ありません。目上の方へ出すということも考えると、より丁寧な「謹啓」と「謹言」の組み合わせでもいいでしょう。
お礼状の基本的な書き方について詳しくはこちらをご覧ください。
お礼状における例文は必要なの?
先に述べたように、お礼状の前文は「頭語」と「時候の挨拶」と「相手への身体を気遣う言葉」の3つの要素によって構成されています。
頭語
手紙の切り口に書く言葉で、相手への敬意を表します。
暑中お見舞いや寒中お見舞いなど、季節の挨拶にはこの頭語は不要になりますが、今回のようなお礼状にはマナーとして必須なので、必ず書くようにしましょう。
また、頭語には必ず対となる「結語」がついてきます。
一般的なのは、「拝啓」と「敬具」の組み合わせですが、保育実習のお礼状は目上の方に宛てて出す手紙なので、より丁寧な「謹啓」と「謹言」の組み合わせでもいいでしょう。
時候の挨拶
手紙のなかでも、見積書などのビジネス文書と呼ばれる手紙の場合は、時候の挨拶を書かなくてもいいとされています。しかしお礼状の場合は、相手への気遣いとなる時候の挨拶を必ず入れるようにしましょう。
また、手紙を書いてみるとわかりますが、時候の挨拶は本文前の書く際のワンクッションとなるため、本文が書きやすくなります。
さらに日本人は古くから四季の移り変わりを大切にしてきたため、お礼状を出す際には、季節や天候に合わせた挨拶を書くといいでしょう。
各月の「時候の挨拶」の書き方と例文
では、12か月それぞれの時候の挨拶には、どのような言葉があるのでしょうか。
月ごとの注意点や例文を紹介します。
なお、時候の挨拶は頭語から1行あけて書き出すようにしましょう。
1月の時候の挨拶
新しい年を迎え心を新たにする月です。12か月のなかでも寒さが厳しい月でもあるので、寒さに共感できるような時候の挨拶が多くあります。
- ・厳冬の候
- ・初春の侯
- ・寒さが身にしみるこの頃
- ・厳寒の折
- ・吹く風一段と身にしみるこの頃
2月の時候の挨拶
寒さがまだまだ厳しい月です。しかし、暦の上では節分や立春があり、春が訪れるとされています。時候の挨拶のなかでも、春の気配を感じさせるような言葉を使うものが多いです。
- ・余寒の候
- ・春寒の候
- ・残寒厳しき折から
- ・どことなく春の気配が漂っています
- ・春はもうそこまで来ております
3月の時候の挨拶
さまざまな花が咲き始め、春の訪れを感じさせる月です。生活のなかでは、変化のある月でもあります。心新たに、明るくなるような言葉を使いましょう。
- ・初春の候
- ・春寒の候
- ・春光うららかな候
- ・春寒しだいにゆるむ折から
- ・日増しに暖かくなってまいりました
4月の時候の挨拶
春という季節の中心となるのがこの月です。草花が生茂る様子、春の暖かさを感じさせるような文言を入れるとこの月らしくなります。
- ・春暖の候
- ・桜花の候
- ・若草が目にも鮮やかに燃え立つ折から
- ・春色日増しに濃くなる折から
- ・花の便りが次々と舞い込むこのごろ
5月の時候の挨拶
5月は若葉の緑が美しい印象の月です。木々や風、空などの言葉を用いた、この月の爽やかな印象を与えるような時候の挨拶が多くあります。
- ・若葉の候
- ・残春の候
- ・若葉に風薫る今日このごろ
- ・若葉の緑もしだいに色濃くなってきました
- ・雲ひとつない五月晴れの空が広がっています
6月の時候の挨拶
雨が降り、じめじめとした気候で憂鬱な気分になりやすい月です。徐々に夏へ向けて鮮やかな緑が深まる様子を言葉にすることで、前向きな気持ちを表現しましょう。
- ・梅雨の候
- ・初夏の候
- ・雨にぬれた青葉が鮮やかに目に映えるころ
- ・降り続く雨に木々の緑も色を深めています
- ・雨後の新緑がより濃くなったように感じます
7月の時候の挨拶
厳しい夏が始まる月です。相手の気持ちを気遣う言葉がスムーズに続くよう、夏の暑さ、厳しさを感じさせるような言葉を入れるといいでしょう。
- ・猛暑の候
- ・盛夏の候
- ・真夏の青さがまぶしいこのごろ
- ・蝉の声が暑さをいっそうかき立てます
- ・お暑い折柄
8月の時候の挨拶
一年の中では最も暑さが厳しい月です。しかし、朝晩の涼しさを感じられる季節でもあります。夏が終わり、秋の訪れを感じさせるような時候の挨拶が多いです。
- ・残夏の候
- ・晩夏の候
- ・夏も終わりを告げようとしています
- ・ひぐらしの声に涼味を覚える今日このごろ
- ・しのびよる秋の気配が感じられるころ
9月の時候の挨拶
夜も徐々に長くなり、秋が深まっていく月です。涼しく、心地よく過ごせるようになった様子を表している時候の挨拶を使いましょう。
- ・秋涼の候
- ・初秋の候
- ・空高く澄みわたる今日このごろ
- ・木々のそよぎにも涼気が感じられるこのごろ
- ・秋風が肌に心地よい頃となりました
10月の時候の挨拶
10月は秋の真っただなかであり、自然が大きく変化する月です。風や空、木々が色づく様子など、五感で秋を感じられるような時候の挨拶が豊富です。
- ・秋冷の候
- ・紅葉の候
- ・秋気が心地よい今日このごろ
- ・木々の葉も色づいてまいりました
- ・夜空に月が冴えわたる季節になりました
11月の時候の挨拶
秋から冬に移行する月です。紅葉から季節が進み落ち葉となり、寒さが深まる様子を言葉にすると季節感が伝わるでしょう。
- ・向寒の候
- ・落葉の候
- ・日増しに寒くなる折から
- ・落ち葉に秋の深まりを感じる昨今
- ・朝夕めっきり冷え込むころとなりました
12月の時候の挨拶
冬が始まり、寒さが身に染みる月です。相手の気持ちや体調を気遣う文がスムーズに続くような時候の挨拶を選ぶと、続きが書きやすいでしょう。
- ・初冬の候
- ・寒気の候
- ・寒さひとしお身にしむ年の瀬
- ・寒風に落ち葉が舞っています
- ・師走の寒さはひとしおでございます
季節ごとの前文〜主文例文
ここまで紹介してきたことを踏まえ、前文から主文にかけて季節ごとの例文を用意しました。保育実習の時期に応じて、それぞれの季節の例文を参考にしながらお礼状を作成してくださいね。
春の挨拶例文
拝啓 花の便りが次々と舞い込むこのごろ、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
保育実習の折には、お忙しいなかさまざまなことを丁寧にご指導いただきまして、誠にありがとうございました。
拝啓 若葉の緑も次第に色濃くなってきました。園のみなさまにおかれましては、お変わりなくお過ごしのことと存じます。この度はお忙しいなか、保育実習においてご指導いただきありがとうございました。
夏の挨拶例文
拝啓 猛暑の候 園のみなさまにおかれましてはご健勝にお過ごしのこととお喜び申し上げます。この度はお忙しいなか、◯日間において保育実習をさせていただきましてありがとうございました。
拝啓 ひぐらしの声に涼味を覚える今日このごろ、園のみなさまにおかれましてはお変わりなくお過ごしのことと存じます。この度は保育実習の折、お忙しいなかご指導いただき、誠にありがとうございました。
秋の挨拶例文
拝啓 秋風が肌に心地よい頃となりました。園のみなさまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか。この度は〇日間、貴重な実習の機会を与えていただき、誠にありがとうございました。
拝啓 秋冷の候 園のみなさまにおかれましてはご健勝にお過ごしのことと存じます。保育実習の折には、お忙しいところ貴重なお時間を頂戴しご指導くださりまして、誠にありがとうございました。
冬の挨拶例文
拝啓 初冬の候 先生方におかれましてはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
この度はお忙しいなか、保育実習において毎日丁寧にご指導いただきありがとうございました。心より感謝しております。
拝啓 寒さが身にしみるこの頃 先生方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
この度は◯日間に渡り、実習の機会を与えてくださり、本当にありがとうございました。
お礼状の前文の書き方をマスターして、より思いの伝わるお礼状を書きましょう!
今回の記事でぜひ覚えておいてほしいのは、お礼状の構成と時候の挨拶についてです。
✔️前文、主文、本文、末文の4つで構成されている。
✔️そのなかでも前文は、「頭語」、「時候の挨拶」、「相手の身体を気遣う言葉」の3つの要素に分かれている。
この2つのポイントをおさえ、紹介した時候の挨拶を参考にすることで、社会人として恥ずかしくないお礼状の前文になるはずです。
そのさきは自分らしい感謝の気持ちを文章にして、相手に伝わるすてきなお礼状を作成してくださいね。
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