保育実習における指導案の書き方を解説! 書き方

保育実習における指導案の書き方を解説!

保育実習には、子どもたちや保育士のふるまいを見る観察実習や、保育士の補助を行う参加実習など、いろいろな形態があります。そのなかでも、学生にとって最も緊張する実習といえば、部分実習、責任実習ではないでしょうか?

自分で保育を計画し実行する部分実習責任実習は、事前に指導案を書く必要があります。この記事では、保育実習における指導案の書き方について紹介します。
実習時に自分で指導案を書くときの参考にしてみてください。

そもそも指導案とは何?

指導案とは、保育の内容を具体的に記した計画書のようなものです。保育のねらい、予想される子どもの姿などを時系列で記入します。

保育園は、指導計画と呼ばれる保育方針、保育目標を設定しています。保育士はこの指導計画に沿って、ねらいを達成できるように日々の保育を行います。
指導計画には、年間計画のように長期間を対象とするものと、週案や日案のように短期間を対象とするものがあります。実習で作る指導案は、短期の指導計画に分類されます。

では、なぜ保育士には指導案が必要なのでしょうか。
指導案の目的を3つ紹介します。

目標を達成するにあたって保育内容を具体化するため

目標に対してどのような活動をしたらよいのかを計画することは、保育所保育指針にも定められている義務です。指導案を立てるときは、自分の行動や子どもの反応をできるだけ具体的に想像しなければなりません。

指導案を作成することは、保育実践について具体的に考えるきっかけになるため、実習生にとっても大切な作業です。実習中に言われるまま動いているだけでは、本当の仕事内容や保育のねらいを知ることは難しいでしょう。しかし、自分が主導となり指導案を書かなければならないとなれば、「自分はこんなときどうするだろう?」、「こんなとき、先生はどんな声かけをしているのかな?」とより深い観察をするようになるはずです。

ほかの人に指導内容を伝えるため

指導案に書き起こした内容は、活動の予定としてほかの保育士とも共有します。保育園では、複数の担任が連携をとって仕事をしています。指導案を作ることで、他の保育士にどのように動いてもらいたいのか、自分がどのように動こうとしているのかを伝えることが可能となります。また、足りない点やもっとこうするとよいと思われる改良点などを指摘してもらうこともできるでしょう。

保育の姿を記録・反省するため

たとえ完璧な書き方で指導案を作ったとしても、子どもたちは予想どおりには動きません。しかし、それは当たり前のことです。どんなベテラン保育士でも、子どもたちを相手にしていれば予想外の事態は起きるものです。もしそういった予想外の事態がおきた場合でも、指導案があれば、どのような保育を行う予定だったのかを記録することができます。後々内容を振り返ることで、反省点を見つけたり、次年度の保育に活かしたりすることもできるのです。

保育実習における、部分実習や責任実習のあとは必ず指導案を見返しましょう。どこをどのようにすればよかったのか、書き方はこれでよかったのかなどを振り返ってみることで、今後の成長に繋がります。

指導案作成の事前準備

指導案を書き始める前に、事前に確認しておくべきポイントがいくつかあります。せっかく苦労して指導案を立てても、大きな修正指示が出ると最初から書き直しになることも少なくありません。ただでさえ忙しい保育実習期間ですので、できるだけスムーズに指導案が通るようにするためにも、事前準備はしっかりとするようにしましょう。

実習園の保育方針等を確認する

保育実習は、たとえ学生が行うものだとしても、子どもたち・保護者にとっては園内活動の一環です。いつもの保育と内容や方針があまりにも異なっているようでは、子どもたちも戸惑ってしまいます。そうならないためにも、まずは実習園の保育方針や、園ごとのルールなどを確認しましょう。

クラスの状態と子どもたちの姿を確認する

自分が実習を行うクラスの状態や子どもたちの姿は、きちんと確認しておくことが重要です。たとえば、クラスの中に配慮が必要な子はいないか、トラブルになりやすい人間関係はないか、興味を持っている遊びはなんなのかといった点を観察してみましょう。

また、子どもたちの発達状況もよく見ておいてください。自分で考えてトイレに行けているか、ハサミを使う活動は危険性がないかなどを確認することは、子どもたちに負担がかからない指導案を書くヒントとなります。一般的な年齢ごとの発達段階についても、よく復習しておきましょう。

デイリースケジュールを確認する

すでに保育実習がはじまっていれば、一日の流れはある程度わかってきているかもしれません。しかし、どのようなデイリースケジュールで保育が行われているのか、もう一度確認しておきましょう。実習日誌を見直したり担当保育士に聞いて確かめたりすることで、園のデイリースケジュールを知ることができ、それに沿った書き方ができます。

ただし、必ずしもデイリースケジュール通りに実習を行わなければならないというわけではありません。実習の内容によっては、担当保育士と相談しながら柔軟にスケジュールを組んでいくこともできます。

実習指導案の作成手順

事前準備が整ったら、いよいよ指導案を作成していきます。指導案の書き方やその手順を具体的に見ていきましょう。

①実習の柱となるねらい、保育の内容を決める

まずは、実習の柱となるねらい、保育内容を決めます。実習先の年間指導計画や月案・週案を見ると、園が目指している子どもの姿を知ることができるでしょう。自分の指導案のねらいを立てる際の参考になるのではないでしょうか。また、保育実習中に見た実際の子どもの姿から具体的なねらいを見つけることもできます。

②保育内容を展開するための手順、働きかけを考える

次に、保育内容を具体的に展開するための手順、実習生から子どもたちへの働きかけを考え、時系列順に記入します。保育内容は同じでも、遊び道具を紹介する手順や、保育者の声掛けの内容によって、子どもへの伝わりやすさは変わります。自分の動きを具体的に思い浮かべながら書いてみてください。

③子どもたちの反応を書く

指導案では、実習生の働きかけに対し「予想される子どもの姿」を書き込む欄があります。この欄を書くためには、普段の子どもの姿をきちんと観察しておくことが大切です。これまでに書いた実習日誌の記録を参考にして記入しましょう。

④環境構成を考える

実習を行うための環境構成について考え、指導案に記入します。簡易図を使って保育活動に必要な環境構成を書き込みます。図だけでは伝わらないような詳しい内容については、言葉でも説明してみてください。

⑤もしもの時に備えて副案も考えておく

天候に左右される活動は、実習の当日になって指導案を実行できないこともあります。そんなときに慌てないよう、代替となる副案も準備しておきましょう。たとえば、天気のいいときにしかできない活動(散歩、砂遊びなど)を本案にしているのであれば、副案は室内で実行できるものにします。

⑥担当保育士や園長にチェックしてもらう

指導案が完成したら、担当保育士や園長に見せて実行してもいいか確認してもらいましょう。先輩保育士からのアドバイスをもらうことで、新しい視点に気が付いたり、配慮の足りない部分が分かったりすることもあります。

⑦使用教材等の準備をする

指導案がチェックを通ったら、使用教材や遊具などの準備をします。できれば、子どもの数ぴったりの分を用意するのではなく、少し余裕をもって用意しておきたいところです。

教材によっては揃えるのに時間がかかる場合もあるので、早めに動きましょう。たとえば、トイレットペーパーの芯を用いた製作遊びをする場合、芯をどこからか集めてこなくてはなりません。園のものを集める、園児の家庭に協力してもらう、友達にお願いする……いずれにしても、早めに知らせておかないと実習に間に合わなくなるかもしれません。

部分実習指導案の書き方ポイント

部分実習とは、短時間のみ実習生主導の保育が行われる実習のことです。代表的なものに、朝の会、帰りの会、簡単なゲーム、絵本の読み聞かせなどがあります。

このあとに責任実習の指導案を書くことを考えると、部分実習の指導案を完成させることは大きな力になりますので、短くてもよく内容を考えて書きましょう。

ここでは部分実習指導案の書き方についてポイントを紹介します。

ねらいと活動内容

部分実習で行う活動と、活動を行うことで達成したいねらいを決めます。短い部分実習の場合でも、活動に対するねらいは必ず立てましょう。たとえば、絵本の読み聞かせなら「絵本の中で繰り返される言葉を楽しむ」、ドッジボールなら「ルールを守りながら、体を充分に動かす」など、活動に焦点を当てたねらいが考えられます。

環境構成

子どもたちが活動しやすい環境構成を考えます。たとえば、朝の会や絵本の読み聞かせでは、自分の立ち位置と子どもたちの集まる位置を具体的に考察します。子どもたちから、話をする保育士の姿が見やすくなるのはどこか。自分の席に座りながら話を聞くのか、実習生の周りに集まるのかなどを具体的に考えていきます。

保育形態と編成形態について

保育の形態にはさまざまなものがあります。

・一斉保育・・・保育士が子どもたちを主導し、みんなが同じ活動に取り組む

・自由保育・・・教材や環境などを準備し、好きな遊びを子どもが自分で選択できる

・縦割り保育(異年齢保育)・・・年齢別のクラスにとらわれず、異年齢の子ども同士で関わる

また、保育を行う際の編成形態においても、個別に活動を行う場合、友達同士でペアを組む場合、全体で取り組む場合などが想定されます。

保育形態・編成形態ごとのメリット、デメリットを考えながら、どの方法で活動を行うのか決めましょう。

導入

あちこちに興味が分散している子どもたちを、主となる活動に引き付けるには、事前の導入が大切です。たとえば、騒がしい教室でいきなり絵本を読みだしても、子どもたちは聞く姿勢ができていません。ざわざわしたクラスで自分に注意を引き付けるためには、どうすればよいのでしょうか。とくに保育実習ではこの導入がしっかりできているか注目される場合が多いです。手遊びやパペット人形など、いろいろな導入を考えてみましょう。

主活動について

実習先の子どもの姿を思い浮かべながら、発達に合った主活動内容を具体的に決めます。一日の流れの一部を任されるようになるので、指導してくれる担当保育士と相談しながら進めてください。自由に決めてよいのか、クラスで決まっている週案に添った内容を求められているのかなどによって書き方が変わってくるので、確認が必要です。

責任実習指導案の書き方ポイント

短時間保育を任される部分実習に対し、責任実習(全日保育)では、1日の保育をすべて実習生が担当します。保育実習中に学んださまざまなことを総動員して、この1日に凝縮するつもりで書いていきましょう。

つぎは責任実習指導案の書き方についてのポイントを紹介します。

ねらいと活動内容

責任実習では、主活動以外にも朝の会、給食、排泄などさまざまな場面にかかわります。主活動を主軸にしつつ、一日を通してのねらいを考えましょう。

たとえば、クリスマスに向けて牛乳パックでクリスマスツリーを作成することを主活動に据えるなら、「のりやハサミを使ってクリスマスツリーの制作を楽しみ、クリスマスへの期待を高める」というねらいが考えられます。また、朝の会ではサンタの登場する絵本を読んだり、帰りの会ではクリスマスに関する質問をしたり、一日のいろいろな活動にクリスマス要素を盛り込むといった工夫ができます。

環境構成

子どもたちは、一日中同じ教室にいるわけではありません。運動遊びなら園庭やホールに出て、給食の時間はテーブルにつきます。お昼寝の時間は午睡室に移動するかもしれません。責任実習では、場面場面に合わせた環境構成を考える必要があります。デイリープログラムとそれぞれの部屋の設備を確認し、普段はどのように生活しているのか担当保育士にアドバイスをもらうことも大切です。

保育形態と編成形態について

部分保育の項目でも説明したように、保育形態には一斉保育、自由保育、縦割り保育などがあります。園によっては朝の会は一斉保育、主活動は自由保育、給食は縦割り保育など保育形態を一日のなかで分けているところもあります。実習園の普段の取り組みを参考にしましょう。子どもたちへの編成形態を場面によって変えてみてもいいでしょう。活動によっては、全体に働きかけるより個別の方がいい場合もあります。

活動間の導入

長い一日のなかで活動と活動間の導入をどう持っていくのかは、責任実習の難しいところです。「主活動が終わったから、すぐに給食準備!」としたくても、片付けが終わっていない子や、まだはしゃいでいる子など、場が落ち着いていないことが予想されます。この点については、普段の観察実習で担当保育士の動きをよく見て参考にする必要があります。絵本や手遊びなどを挟むことで、活動と活動間の導入がスムーズになることでしょう。

主活動について

責任実習は、指導案全体が長くなりがちなので、主活動について詳細に書きすぎると見づらくなってしまう可能性があります。記号を使ったり、箇条書きにして読みやすい指導案になっているかを振り返ってみてください。主活動など詳しく書きたい部分だけ、別紙に記入するという書き方もあります。

指導案作りは実習を充実させるための第一歩

学生でありながら、保育士として子どもたちの活動を考える部分実習や責任実習は、とても緊張するものです。だからこそ、事前の計画をきちんと立てておくことが重要です。指導案の書き方を知り、その内容について具体的に考えることは、保育実習を充実させるためのステップのひとつです。

指導案通りに子どもたちが動いてくれなかった、しどろもどろになってしまった……などの失敗も大事な経験です。指導案作りを通して、保育士になった将来の自分を思い描いてみてください。

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