保育実習は、リアルな保育現場を経験できる貴重な機会です。毎日記入する保育実習日誌は、実習の記録として、とても重要な存在です。しかし記入項目が多いので、書き方に戸惑うこともあるでしょう。
この記事では、保育実習日誌の書き方について、具体的に解説します。これから保育実習を控えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
保育実習日誌って何?
保育実習日誌とは、実習中の保育内容について詳しく記載するとともに、その日の感想・反省を書いておく「保育実習中の日々の記録」です。保育実習日誌は「日誌」の名前の通り、毎日記入するものです。しかし、ただ記入するだけではありません。日誌は、実習担当の保育者、主任、園長や副園長などに見てもらう大事な提出書類でもあるのです。
保育実習日誌を書く目的は?
慣れない環境でへとへとになった実習のあと、さらに保育実習日誌を書かなくてはならないのは、とても大変ですよね。それでも日誌を書くのは、重要な目的があるからです。
実習の内容を忘れずに記録し、気づきを得るため
保育実習中は、とにかく目まぐるしく時間が過ぎ、いつの間にか一日が終わってしまうという人も多いと思います。ところが、見過ごしがちな子どもの行動や、保育者のちょっとした発言には保育実践のポイントが隠れています。
どんな声かけで子どもたちの気持ちを高めているのか、活動中に気になる子はいなかったかなどに気がつくと、部分実習や責任実習においても役立つことでしょう。一日の終わりに実習の内容を整理することで、このようなポイントに気がつきやすくなるというわけです。
反省をして次の目標を立てるため
日誌を書くことで、自分の行動を見直すことができます。そこから反省が生まれ、「明日はこうしよう」という新しい目標ができます。実習をやりっぱなしにしないためにも、一日を振り返る「書く」行為はとても大事なのです。
指導の手掛かりにしてもらうため
保育実習日誌には、実習生の成長や、悩んでいる点が現れてきます。指導する立場の保育者は、保育実習日誌の内容から、実習生に対してどうアドバイスしたらよいかを考えることができます。実習中にはなかなか質問する時間がないという場合でも日誌があればそこに疑問点を書いておくことができますし、保育者もしっかり考えてから答えを出せるので一石二鳥です。
書類作成の練習のため
将来保育士になれば、たくさんの書類を書かなければなりません。行事記録、指導計画、連絡帳、月案・日案、クラス便り、研修報告、そして園の保育日誌。保育士は、「書く」という仕事に慣れる必要があるのです。とくに文章構成や文末の書き方など、保育園ならではの書き方も多いので学んでおいて損はありません。保育実習日誌は、将来の書類作成練習と捉えることもできます。
保育実習日誌の内容は?
保育実習日誌にはさまざまな形式があります。そのなかでも、一般的な保育実習日誌によく登場する項目について、具体的に見ていきましょう。
目標・ねらい
目標・ねらいの欄は、その日の目標を記入するところです。ここをしっかり設定しておくと、その日の実習内容にメリハリが出てきます。
目標を立てるときに参考にしたいのが、「保育所保育指針」や「幼稚園教育要領」です。これらには、保育の目標や年齢別のねらいなどが書かれています。とくに、健康、人間関係、環境、言葉、表現(いわゆる五領域)の項では、保育士のかかわり方について留意すべき点が具体的に示されています。
また、以下のような目標設定方法もあります。
・翌日の保育予定を事前に聞いておき、そこから目標やねらいを考える
・前日の自分の反省や気づきをもとに考える
目標は毎日たてるものなので、初日の目標は「保育の1日の流れを知る」のような簡単なもので構いません。実習が進むにつれて、より深く具体的な目標を立てられるようにしていきましょう。
なお、目標・ねらいの項目には実習学生の目標ではなく、クラス活動の目標を書く場合もあります。事前にどちらを記入するのか、園や担当の保育者に確認しておきましょう。
主な子どもの活動
一日の子どもの活動を、時系列順に書いていきます。自分が指導計画を作るときに、「活動をするときにどのような時間配分にしたらよいか」を考える目安になるので、活動時刻の記入についてもいい加減にならないように注意しましょう。
子どもたちの活動を書くときは、できるだけ具体的にその姿を捉えるようにします。たとえば、「園庭で好きなように遊ぶ」「朝の会をする」だけでは、後で読み返したとき何をしていたのかはっきりとは分かりません。そこで、「おにごっこや遊具など」というような遊びの内容や、「今月の歌である『どんぐりころころ』を歌う」といった曲名なども一緒に書き込んでおくようにしましょう。
このとき「活動の大きな流れ」と「内容の詳細」について同時に書くことになりますので、文字の大きさを変えたり記号を入れたりして、読んだときに区別できるような書き方をするとよいでしょう。
例 大きな流れは〇、詳細は・で記入している。
〇朝の会
・ピアノの音に合わせて、朝の挨拶をする
・当番が前に出て、クラスの子の名前を呼ぶ(出欠確認)
・「おはようのうた」「うんどうかい」を歌う
・「とんとんとんとんひげじいさん」の手遊び
・「かけっこ かけっこ」の絵本を読む
・今日の活動(公園への散歩)について知る
保育者の援助
子どもたちの活動に対して、保育者がどのように働きかけているのかを記入する部分です。こちらも、指導計画作成時に非常に参考になるところなので、よく観察して具体的な内容を書くようにしましょう。
ここを簡潔に書きすぎると、保育者の意図を見落としてしまう可能性があります。たとえば、遊びに夢中な子どもに対してはこのような働きかけがあります。
・「お片付けをしたら、おいしいおやつの時間だよ」と声をかける
・「みんながお片付け上手なところを、〇〇先生(実習生)に見せてあげよう!」と励ます
・ピアノで「おかたづけ」の曲を弾いて、子どもに気づかせる
これらは、子どもたちが自発的に片付けを行えるように保育者が考える工夫の一端です。このような内容を「保育者が片付けを促す」のひと言で終わらせてしまうのは、少々もったいないです。保育者の言葉の内容や行動を具体的に記入して、子どもたちの気持ちを振り向かせる術を学びましょう。
実習生の活動・気づき
実習生自身の活動や気づきを記入する欄です。活動について書くときは、どうしてそのように動いたのか、自分の意図についても書き込んでおくとよいでしょう。
声掛けの内容についても、「保育者の援助」同様に具体的な書き方をします。また、保育者の動きを見て自分で気がついたことがあれば、それについてもしっかり記入していきましょう。
たとえば、このような書き方があります。
実習生の活動
・床に散らばったおもちゃを箱に片付けた
※子どもがおもちゃを踏んで転倒しないようにした。
気づき
・保育者が絵カードを用いることで、子どもたちが次にすることをイメージしやすくなる。
環境構成
環境構成は、保育空間の物体・人物の配置について書くための欄です。たとえば、保育室内の机の位置、おもちゃ・工作材料の配置、保育者の立ち位置、子どもの位置などを記入します。書き方としては、言葉で書く方法と、簡易図を用いる方法があります。どちらか一方だけでは、細かい内容が伝わりにくくなりますので、言葉と図の両方を使って、環境構成を示します。
なお、環境構成を図で表す際は、定規を使って綺麗な線で表現するようにしましょう。
感想・反省
最後に、一日の実習を振り返り、感想・反省を書きます。実習中の感想、気づき、「こうすればよかった」と後で反省したことを具体的に書いていきます。
この欄を書くときに意識したいのが、最初に設定した「目標・ねらい」です。実習中は、多くの印象的な出来事が起こりますが、すべてを書こうとすると大事な内容がぼやけてしまいます。そこで、目標やねらいにポイントを絞って実習を見直すことで、焦点の定まった実習日誌を書くことができます。また、今日の目標・ねらいが達成できたかどうか、この欄で自己評価をしてみましょう。
感想・反省の欄でもうひとつ大切なのが「感じたことを投げっぱなしにしないこと」です。保育実習では、子どもの意図を誤解してしまったり、気持ちがうまく伝わらず困ってしまったりすることもあるでしょう。また、保育者が子どもを上手に誘導する様子に驚くこともあるかもしれません。このようなとき、ただ「上手くいきませんでした」「先生はすごいと思いました」で終わらせず、明日からの実習にその経験をどう活かしていきたいのかを考えます。それについて具体的な書き方ができるとよい感想になるでしょう。たとえば、このような事例が考えられます。
・自分で着替えをしたがるA君を無理に手伝ってしまい、泣かせてしまいました。そこに駆けつけてくれた担当の先生は、まずA君の気持ちに共感し、次にA君が意識しないようにさりげなく手伝っていました。明日の実習では、子どもの気持ちを大事にして関わっていきたいと思います。
保育実習中に意識したい観察ポイント
保育実習中は、多くの出来事が同時に進行します。すべてを観察するのは不可能です。ここでは、保育実習中に意識したい観察のポイントを紹介します。
一日のスケジュールにポイントを当てる
まずは、一日のスケジュールに注目してみましょう。保育園のタイムスケジュールは、ある程度決まっています。前もって保育者に流れを聞いておくと、あらかじめ保育観察がしやすい場面を想定することができるはずです。「朝の会の様子に注目してみよう」「工作遊びではどのような声掛けをするのだろう」など、自分なりの観察ポイントを設定してみてください。
保育者の動きや声掛けを観察してみよう
「保育者の動きや声掛けがどのように行われているのか」をよく観察することは、自分が保育をするときにとても参考になります。保育者の動きや声掛けをよく見てみると、「子どもをこちらに誘導したい」「子どもに興味を持ってもらいたい」など、さまざまな意図が隠れていることに気がつくのではないでしょうか。保育者がどうしてそのような行動をしたのか、考えながら観察してみましょう。
子どもの行動や言葉を観察してみよう
子どもの何気ない行動や言葉をよく観察するのは、子どもを理解するために重要です。子どもがさまざまな現象についてどれくらい理解しているいか、言葉の裏に隠れた本当の気持ちはなにか、友達への思いやりと嫉妬を感じる行動など、子どもを観察することで気づくことはたくさんあります。印象に残った子どもの行動や言葉は覚えておいて、実習日誌の種としてください。
保育実習日誌を書くときに気を付けたいこと
実名で記録してよいのか確認する
これまで紹介した内容から考えると、保育実習日誌を書くときには、特定の保育者や子どもに焦点を当てたい場面も出てくるでしょう。このときに注意したいのが「実名で記録してもよいかどうか」です。
保育現場では子どもの障害や、家庭の複雑な事情などセンシティブな内容を記録しなければならない場面もあり、書類に個人名を記載することはタブーとされる場合も多くあります。ただし、実習日誌の実名表記が可能かどうかは園によって違います。担当保育士に匿名の方がよいのかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
書き言葉を使用し、誤字脱字に気を付ける
SNSで文章を発信することが多い現代、つい実習日誌にも友達同士で使っている言葉を書いてしまいそうになるかもしれません。しかし、実習日誌は園長や主任も目を通す書類です。正しく丁寧な言葉をつかった書き方をするようにしましょう。
言葉には、「話し言葉」と「書き言葉」の二種類があります。実習日誌は書き言葉で記入します。話し言葉の中には、書き言葉と間違いやすい物もいくつかあるので、事前にチェックしておくといいですね。
例
~なんか(話し言葉) → ~など(書き言葉)
~みたい(話し言葉 )→ ~のよう(書き言葉)
ちゃんと(話し言葉) → きちんと(書き言葉)
いっぱい(話し言葉) → たくさん(書き言葉)
また、誤字脱字に注意し、分からない文字があったら辞書を引いて確かめてください。なお実習日誌は上記のとおり、れっきとした提出書類です。書くときは鉛筆でなく、黒のペンを用いるようにしてください。
5W1Hを意識して書く
文章を書き慣れていないと、まず何から書き出していいのか分からない場合もあるでしょう。そんなとき頼りになるのが、文章の基本5W1Hです。「いつ(when)」「、どこで(where)」、「だれが(who)」、「何を(what)」、「なぜ(why)」、「どのように(how)」を意識した書き方をすると、骨格がしっかりした伝わりやすい文章になります。
メモを取る頻度に注意
保育実習日誌に細かい内容を書き込むためには、実習中にメモを取りたいところです。ただし、いつもメモ帳を見ていては「子どもを見ていない」「実習に集中していない」と担当の保育者に悪い印象を与えてしまう可能性もあります。
また、園によっては、筆記用具の先端が子どもにあたってしまう危険性からメモが禁止されている場合もあります。実習先のメモに対する考え方は、事前に確認しておきましょう。
保育実習日誌は充実した実習に繋がる大切な書類
保育実習日誌を書くことで、一日の保育実習を振り返り、次の日に繋げることができます。また、自分の悩みや感想を正直に書くことで、実習担当の保育者が指導しやすくなるというメリットもあります。
実習中の忙しい身で、保育実習日誌を書くのは大変なことです。しかし、実習で学んだ内容を具体的に記録することによって、実習はより充実したものになるはずです。思いの詰まった保育実習日誌は、夢だった保育士に一歩近づくための重要なアイテムになるでしょう。今回学んだ日誌の書き方を参考にして、振り返りやすい実習日誌を作成してみてください。