これから保育士として就職や復帰を目指す方にとって、求人倍率は就職のしやすさを測るのに参考になります。
現在、保育士の求人倍率は高いので就職しやすい状況です。しかし、少子化や世間のニーズなど、今後、保育士の仕事がどうなるのかについて、不安を感じている方も多いでしょう。
そこで、この記事では、今の有効求人倍率からこれからの保育士の需要について解説します。
「子どもが減ったら保育士の仕事は減るのでは」と考えている方は、この記事を読めば不安を解消できますよ。
保育士の有効求人倍率は高い
有効求人倍率とは、求人数に対する働きたい人の割合のことです。倍率が1なら「募集している仕事の数 = 働きたい人の数」になり、1より数が大きくなるほど仕事が沢山あることを示しています。
2022年1月現在、保育士の有効求人倍率は2.92倍(前年比▲0.02)です。これは、保育士100人の募集に対して、34人しか働きたい人が集まらない状況です。つまり、1人の保育士に対して2件以上の募集があることになります。
全職種の平均が1.27なので、その差は倍以上です。有効求人倍率の高さから、保育士が不足しているということが読み取れます。
今は、仕事の数が保育士として働きたい人よりも多いので、働きたい人が仕事を選べる状況です。
さらに、保育士が足りない状況を解消すべく、保育士の働く環境を良くする取り組みも進んでいます。そのため、自分のライフプランに合った、より労働環境の良い職場が見つけやすくなっていると言えます。
都道府県別の有効求人倍率
保育士の有効求人倍率は2.92倍と紹介しましたが、これは全国の平均値です。地域ごとに見た場合、求人状況は変わるのでしょうか。
以下に都道府県ごとの有効求人倍率を表にまとめたので、お住まいの地域を見てみましょう。
令和4年1月時点 | 有効求人倍率 |
全国平均 | 2.92 |
栃木 | 5.32 |
岡山 | 4.74 |
静岡 | 4.40 |
茨城 | 3.97 |
大阪 | 3.92 |
広島 | 3.79 |
福井 | 3.73 |
和歌山 | 3.59 |
埼玉 | 3.51 |
鳥取 | 3.49 |
徳島 | 3.47 |
東京 | 3.43 |
沖縄 | 3.43 |
愛媛 | 3.36 |
奈良 | 3.26 |
宮城 | 3.06 |
香川 | 3.04 |
京都 | 2.93 |
愛知 | 2.90 |
山梨 | 2.89 |
福岡 | 2.84 |
新潟 | 2.82 |
鹿児島 | 2.80 |
福島 | 2.79 |
岐阜 | 2.71 |
宮崎 | 2.64 |
大分 | 2.58 |
千葉 | 2.54 |
富山 | 2.53 |
兵庫 | 2.53 |
滋賀 | 2.40 |
熊本 | 2.36 |
佐賀 | 2.33 |
山形 | 2.16 |
長崎 | 2.11 |
北海道 | 2.10 |
島根 | 2.02 |
岩手 | 2.00 |
神奈川 | 2.00 |
三重 | 1.96 |
高知 | 1.94 |
石川 | 1.93 |
青森 | 1.92 |
群馬 | 1.92 |
長野 | 1.89 |
山口 | 1.89 |
秋田 | 1.46 |
大阪(3.92倍)や東京(3.43倍)など、大都市とその近郊は有効求人倍率が高い傾向にありますが、岡山(4.74倍)や静岡(4.40倍)など、地方部でも平均値を大きく上回っています。
単に、都市部の保育士が足りないという訳ではなさそうです。仕事や求人が多いのは都市部だけと思われがちですが、地方でも保育士の需要が高まっているといえます。
保育士の求人は年々増えている
現在の求人状況を見てきましたが、これから保育士として就職を考えるなら、今後の需要がどうなるのかも気になりますよね。
今後の需要を推測するため、直近6年の倍率を見てみましょう。
比較のため各年の1月を基準にしています。
年月 | 2016年1月 | 2017年1月 | 2018年1月 | 2019年1月 | 2020年1月 | 2021年1月 |
有効求人倍率 | 2.44 | 2.76 | 3.40 | 3.64 | 3.86 | 2.94 |
参考:H27〜H28 保育士の有効求人倍率の推移/厚生労働省
参考:H29〜R2 保育士の有効求人倍率の推移/厚生労働省
参考:R3〜R4 保育士の有効求人倍率の推移/厚生労働省
2020年までは有効求人倍率は増加傾向にあり、2016年の有効求人倍率の2.44から約1.6倍となっています。2021年になり少し減少しましたが、全職種平均の1.27と比べると、依然高い水準で推移しています。保育士の需要は高いといえます。
とはいえ、少子化により子どもが少なくなると、保育士が不要になるのではと不安視している方もいるでしょう。しかし、安心してください。子どもが減っても保育士が不要になることはありません。
保育士の需要が高い理由
理由は、保育を希望する人は増えているのに、保育士になる人は減ってきているためです。
近年、女性の社会進出や賃金低下などにより共働き世帯は増加し、三世代で暮らす家庭は減少しています。少子化により子どもの数が減っても、家庭内で育児ができる環境が整わない世帯が増えているため、長時間子どもを預けられる保育園の需要が高まっているのです。
政府が打ち出した「新子育て安心プラン」は、2021年から2024年までの4年間で新たに約14万人分の保育を可能にすることを目標としています。
こうした保育需要の高まりに応えるために、認定こども園や企業内保育など、新規施設の設立や、保育園の定員を増やすなどの取り組みが進められています。
しかし、受け入れ側の数が増えても、保育の担い手である保育士が集まりません。それは、「長時間労働」「賃金の低さ」などの労働環境の厳しさから、保育士を志願する人が減っているからです。
このように、保育需要に対して保育士が不足しているため、保育士の需要は高まり続けているのです。
待機児童の問題
この保育士不足が、待機児童を引き起こす要因のひとつともいわれています。
国は、待機児童ゼロを目標に掲げ、この7年間で70万人分以上の保育の受け入れを増やしました。全国的にみれば保育申込者の総数を超えています。定員割れをしている地方があるように地域差はありますが、いくら施設があっても保育士がいなければ保育はできません。
現在、資格がありながら保育士として働いていない、潜在保育士が約90万人いるとされています。保育士確保のために、処遇改善に加え、短時間勤務のような柔軟な働き方を推進したり、補助者を雇ったりする取り組みが求められています。
保育の多様化で活躍の場が増える
保育士の需要が高まっているのは、保育園だけではありません。年々、保育が必要とされる場が多様化してきており、様々な場所で保育士が必要とされています。
主な保育施設として以下があります。
• 認定こども園
• 小規模保育所
• 企業内保育所
• 院内保育所
• 児童福祉施設
• 託児所
• ベビーホテル
小規模保育所とは、地域の保育需要にきめ細かく対応するために、2015年にできた認可保育所の一種です。子どもの数が少ないので、一人ひとりの子どもに目が届きやすいのがメリットです。
最近では、子どもを持つ女性社員が育児と仕事を両立できるよう、会社の中に保育所を設置する企業も増えてきています。また、待機児童の解消を目指して、幼稚園と保育園の両方のメリットを併せもつ認定こども園が発足しました。
認定こども園にはさまざまな分類がありますが、その中でも、幼保連携型の認定こども園では、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要となり、これまでとは異なる働き方が求められます。
少子化でも保育士の将来性はある
少子化で子どもの数が減っても、保育需要が多様化しているため、保育士の仕事はなくなりません。むしろ、今後保育士の活躍の場はさらに広がると期待されています。
少子化や共働きによる世帯収入の増加により、家庭で子ども一人あたりにかけられるお金がこれまでよりも増えました。
これを背景に、「質の高い保育サービスを受けさせたい」「早くから集団の中で社会性やコミュニケーション力を身につけさせたい」というご両親の気持ちが強くなってきています。これまでの「仕事や家庭の都合で預ける」という思考から、「子どものために進んで預けたい」と、家庭の意識が変わりつつあるのです。
そのため、その子に合った保育を提供できる場として、独自性を打ち出す園が増加しています。保育士として、子ども1人ひとりに向き合える専門性の高いスキルを身につければ、活躍できるチャンスはより広がるでしょう。
保育士の需要は高い!
現在、保育士の有効求人倍率は高いです。
そのため、自分のライフプランに合った、より労働環境のいい職場を見つけやすくなっています。その背景には、共働きや核家族化など、社会環境の変化による保育需要の高まりがあります。
しかし、保育士の労働環境の厳しさにより、人員を募集しても保育士が集まらないことが問題とされています。保育士確保のために、処遇改善費増加による賃金アップの推進、短時間勤務の促進、保育補助者の設置など、労働環境における魅力向上のための取り組みが進められています。また、多様な保育需要に応えるために、認定こども園や企業内保育など、保育士の活躍の場は増えてきています。
これからの保育士は、子ども一人ひとりに向き合う専門性の高いスキルを身につけ、活躍できるチャンスをより広げていくことが求められます。