昨今、人手不足と言われ続けている保育業界。
厚生労働省の調査では、保育士資格を持っているにも関わらず保育士として働いていない「潜在保育士」が90万人いると言われています。
そんな潜在保育士の中には、再就職したいけれどブランクがあるため不安を感じているという人もいるのではないでしょうか。
そのような方には、パート保育士での再就職がおすすめ! 様々なメリットや再就職への支援も充実しています。
なぜ90万人も潜在保育士がいるの?
潜在保育士とは、保育士資格を保有しているにも関わらず、保育に関係した職についていない人のことを言います。平成31年の調査では保育士登録者数が約147万人に対し、潜在保育士は90万人に上るとも言われています。
なぜ過半数もの人が潜在保育士となってしまうのか。その原因は人によってさまざまですが、大きく2つが考えられます。
①賃金と業務が見合わないと感じる
保育士は、「給料が安い」とよく言われますよね。
平成30年賃金構造基本統計調査によると、額面金額平均で23.9万円です。また、同じ調査で同じ国家資格の看護師は29.9万円です。
同じ国家資格でも給料が少ない背景として、保育園という施設を軽視してきた社会背景があります。
今でこそ、女性の社会進出が増えるにつれて子どもを保育所や幼稚園に預けることは普通になっていますが、昔は「子どもは家で女性が育てるもの」という考えが根強くありました。
そのため、保育園や保育士(昔は保母とも言われていました)はその延長と考えられていたため、仕事自体が軽視され給料が安く、今もその流れがなかなか変わらずにいます。
また、保育所は国や自治体からの税金と保護者からの保育料が運営費となるため、給料形態のみを大きく変えにくいというのも理由のひとつとして挙げられます。
保育士の仕事は看護師の仕事と比べ、命に関わる緊急性はないかもしれません。
しかし、命を育み、命を預かる大切な職業で、その仕事内容もハードなものです。
仕事内容に見合う賃金の引き上げが求められ続けるのは当然のことでしょう。
②待機児童を抱えている
2011年の調査では、潜在保育士の約6割が自分で育児をしている又は子育てがひと段落した方と言われています。その中で、保育所や幼稚園に預けずに自分自身で日中育児をしている人は69.2%です。
保育所に預けられずにいる人がどのくらいいるのかは調査したところ定かではありませんでしたが、恐らく一定数の人が子どもを保育所に預けることができずに自分自身で育てているのではないでしょうか。
厚生労働省の待機児童についてのページを見ると「育児休業明けの途中入園は特に難しい」とされているように、再就職しようと思っていても、子どもを預ける場がないために再就職を断念した人も多いという現状があることが分かります。
潜在保育士が持つ復帰への不安3つ
保育士に復帰できない方々の悩みとして、どのようなことが挙げられるのでしょうか。また、不安を解決するための手助けはあるのでしょうか。大きく3つに分けてお話ししていきます。
①今の保育についていけるかどうか不安
復帰を考える人の中でも、共通して思い浮かぶのが「今の自分に保育ができるの? 」ということです。
現役で保育士をしていたころでさえ、定期的に研修を受けに行ったり、マニュアルが変わったりして保育のやり方が日々新しいものとなっていたのに、ブランクのあるわたしが働いたらきっとついていけないのではないか、という不安がありますよね。
そんな不安を抱えている方への手助けになるように全国の大学や自治体では「潜在保育士支援研修」が行われています。
定期的にセミナーや講座を開催しており、なかには実技講習が受けられるところもあり安心です。
更に、国からは全国の保育所に向けて園内研修やOJTの為の費用負担がされています。
研修に足を運ぶ時間がないという人でも、再就職する保育園で研修が受けられたら助かりますね。
②家庭と両立できるかどうか不安
先に述べたように、潜在保育士には育児中の方が多いのが現状です。
働いていた頃のようにフルタイムや残業があると子どもの送り迎えが難しく、これではなかなか再就職しにくく感じます。
そのような方のために、国からは保育園に対してワークシェアリングの推進(施設側のシフト調整)や働いている園の系列園に自分の子どもを優先的に入れられるシステム作りが提案されています。
例えば、育児中の保育士はやはり日中の時間に働きたいという方が多くいますが、系列園に自分の子どもを預けていられるならば早朝や延長もでき、多少は働きやすくなるのではないでしょうか。
また、園がシフト調整をすることによって日中働ける潜在保育士の割合が多くなれば、時間帯的に働きやすくなります。
③体力がついていけるか不安
乳児クラスであれば抱っこやおんぶ、幼児クラスに入れば鬼ごっこやドッヂボールなどダイナミックな遊びも一緒に行うようになります。そのため、保育士の仕事は日々体力との勝負です。
しかし、こちらもシフト調整がうまくなされることで自分の体力に合わせて働く日数や時間帯を調整することが可能になるでしょう。
復帰に不安がある保育士はパートで再就職しよう!
多くの不安がありつつも、せっかく資格もあるし、再就職したい! と考えている方。
ぜひ、パートでの再就職をオススメします。
その理由として、パート保育士の存在は、保育園側にも再就職したい潜在保育士側にも需要があるからです。2016年の調査を見てみると、91.6%の保育施設がパート職員を配置しているという結果になっています。
これは紛れもなく、保育現場でパート職員が必要とされている証です。再就職には、その園との相性というのもとても大切なものです。そのため、パート職員として歓迎されている状態はとても再就職しやすい状態と言えるのではないでしょうか。
また、2020年の調査では、潜在保育士でパートで再就職したい! と考えている人が全体の7割を占めています。
それだけ、パートで再就職をすることにメリットを感じている人が多いということが結果に現れています。パートで働くメリットについては次の章でお話します。
現時点では不安に思っている方も、働くメリットがあり、職場環境として歓迎されているのであれば安心です。
パートで保育士に復帰する4つのメリット
いきなりフルタイムで保育士に復帰しようと考えると、「担任業務できるかな?」「採用してもらえるのだろうか?」など多くの不安があると思います。不安を感じる人は慣れるまでパートで勤務してみるのはいかがでしょうか。ここではパートで復帰するメリットを4つご紹介します。
メリット① 働く時間や曜日に融通がきく
保育園によって異なる部分はありますが、週に2〜5日、午前中のみや延長のみなど、自分の働きたい日数や時間帯で働けるのがパート保育士の大きなメリットです。
先に述べたように、「体力が不安」「家事との両立が不安」と思っている方でも非常に働きやすい就業形態だと言えます。
もちろんフルタイムでの求人もありますので、給料面や、最終的に正規職員への復帰を考えている方はフルタイム勤務にシフトチェンジしてもいいでしょう。
メリット② 保育や事務作業の負担が比較的に少ない
保育士の仕事は、子どもの保育だけではありません。
保育の準備からはじまり、書類作成や制作物など保育以外の作業時間も多いのが現状です。
その点、パートの保育士は時間が決まっており、書類作成など任される業務は正規職員と比べて少ないでしょう。そのため、純粋に子どもと関わる時間が多くとれ、伸び伸びと働くことができます。
メリット③ ブランクがあっても採用されやすい
全国の保育所の約9割がパート保育士を配置しており、日本の保育にパート保育士はなくてはならない存在と言えます。また、保育士は仕事をする方々の代わりとなって子育てをする職業。子育て中や、子育てを終えた方の育児経験や保育スキルは仕事で大いに活かされると考えられるので、採用されやすいのです。
メリット④ 可愛い子どもと満遍なく触れ合える
パート保育士になると、担任保育士のようにそのクラスに固定でされるのではなく、さまざまなクラスに補助として入ることが多くなります。そのため、担任業務をしていた頃よりも幅広く多くの子どもと関わることができます。
やはり子どもが好きでなった職業。多くの可愛い子ども達と関わることができるのは幸せなことです。担任業務をしていた頃よりも少し肩の荷を下ろして関わることができるので、精神的にも楽な部分が増えます。
このように、保育士のブランクはむしろプラスに捉えられることもありますので、心配せずに就職活動を行いましょう。
潜在保育士をサポートする支援
保育士登録者の過半数が潜在保育士という現状から、国でもさまざまな調査を元に支援がなされています。
【就職準備金】※各都道府県、指定都市にて実施
再就職する際に必要となる費用を貸付けてもらうことができます。
2020年には、20万から40万に引き上げられました。
※自治体によって金額が異なる場合があります。詳細は自治体のHPをご確認ください。
【未就学児を持つ潜在保育士の保育所復帰支援】※各都道府県、指定都市にて実施
未就学児を持つ潜在保育士が負担する保育料の一部を貸し付けてもらうことができます。
貸付額は月額2万7000円が上限です。
※上記の2つは2年間保育士として働けば返還を免除されます
【再就職支援】
各自治体に保育士・保育所支援センターを設置し、再就職に関する相談や求人情報の提供などを行なっています。マッチングシステムの強化も実施され、再就職をする人が自分にあった園を探しやすい環境づくりを行なっています。
【研修、指導の充実】
園内研修を行う際の費用や、現役保育士が再就職した方に対する指導(OJT)を行う際の費用を国が負担します。
不安を軽減して保育士に復帰してみよう!
保育士の再就職に関して、体力面や家庭との両立など悩みは尽きないですよね。
しかし、パート保育士なら今までの働き方より内容的にも時間帯的にも負担なく働くことが可能ですし、保育園側からも求められている大切な存在です。
また、国や自治体の支援も充実してきていますので、パート保育士はこの先さらに働きやすくなるでしょう。
ぜひ、この機会に保育士への復帰を検討してみてはいかがでしょうか。