保育士になりたいけど、ピアノが弾けないから……。と、諦めている方はいませんか?
保育士は、子どもと一緒に歌をうたうこともあるので、ピアノが上手なイメージがありますよね。
しかし、実はピアノが弾けなくても保育士になれるんです。
実際に、現役保育士でも「ピアノが苦手」だと感じている人は少なくありません。
とはいえ、ピアノが弾けないままでいるのも心配になりますよね。
ピアノが弾けると自信にもなり、仕事の幅も広がります。
そこでこの記事では、ピアノが弾けなくても保育士になれる理由や、少しでもピアノがうまくなるための練習方法について紹介していきます。
ピアノが弾けなくても保育士になれる理由
なぜ、ピアノが弾けなくても保育士になれるのでしょうか。
保育士になれる理由として、たとえば以下のような理由が挙げられます。
- ピアノが得意な人に代わりに弾いてもらうことができる
- ほかの楽器・声でも代用できる
- CDなどの音源で代用できる など
上記のように代用できるケースも多いので『ピアノが弾けないと保育士になれない』というわけではありません。
具体的にひとつずつ、見ていきましょう。
代わりにピアノを弾いてもらうことができる
保育園は、複数の担任でクラス運営をしていくことがほとんどなので、自分が苦手な部分でも、他の保育士が得意なことも多々あります。
クラスでピアノを弾く際は、「代わりに弾いてくれる?」「いいよ」で済むケースも多いです。
入園式や卒園式といった大きな行事では、ピアノが上手な人が担当している場合も多いので、心配いりません。
ピアノ以外の楽器や声で代用できる
「ほかの人に頼むのが申し訳ないな」と感じる人もいるでしょう。
頼めないときには、ギターやハーモニカなどの楽器を使ったり、アカペラでも代用できます。
「保育は絶対にピアノでなければならない」ことはないので、自分ができるもので代用すれば、それで十分保育になります。
CDでピアノの代用ができる
保育園によってはピアノを置いていないところもあります。
例えば、託児所や企業内保育所などは、ピアノを置くスペースがない場合や住宅街の騒音対策など、園の立地や運営方針などから、ピアノではなくCDを使用していたりします。
このように、ピアノが弾けなくても保育士の仕事にそれほど大きな支障はありません。
ピアノが弾けないからといって、保育士を諦める必要はないのです。
しかし、保育士の「資格取得」のためにピアノ練習が必要になる場合や、保育園の面接時にピアノの実技試験をする園もあります。
保育士資格の取得方法によってピアノに触れる機会が変わる
保育士の資格を取るにあたり、短大・大学に進学するのか、通信教育などで資格を取得するのかで、ピアノに触れる機会が大きく変わってきます。
具体的に、2つの方法を見ていきましょう。
養成校ではピアノは「必修科目」
養成校へ入学すると、ほとんどの場合、授業の一環でピアノを習います。
教則本に沿って、講師に1からピアノの弾き方を教えてもらえます。
筆者も養成校に入学してからピアノを始めましたが、初心者でも安心して授業を受けることができました。
卒業するころにはピアノの腕も上達しているので、実技試験があっても問題なく弾けるレベルに達している場合が多いです。
ただし、養成校によってピアノへの力の入れ具合が変わってきます。
ピアノを重要と考えている学校では、クラス発表会を行うところや、指定の課題曲が出され、合格しないと単位がもらえない学校もあるので、短大・大学選びの際に調べておくといいでしょう。
養成校以外の場合は「ピアノ以外の選択肢がある」
養成校以外で保育士資格を取得する場合、国家試験を受けることになります。
国家試験には、「筆記試験」と「実技試験」があり、実技試験は筆記試験が合格した後に受けるという流れです。
実技試験の中には以下の3つの種類があり、そのうち2つを選んで受験します。
それぞれに条件や指定、時間制限なども設けられているので、ホームページや受験要綱などでよく確認しておきましょう。
【音楽表現】:課題曲を指定された楽器で弾き歌いする
【造形表現】:指定された条件の絵を描く(場面も指定されます)
【言語表現】:指定された中から選んで、お話をする(童話や昔話)
ピアノが苦手な場合は、音楽表現を選択せず、「造形」と「言語」を選択するとピアノを弾かなくても保育士試験に合格できます。
ちなみに、造形と言語を選択する場合にも課題の指定があるので、一例をご紹介します。
【例:言語表現】(令和2年実技試験から出題)
<内容>
3 歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定し、下記の1~4のお話のうち一つを選択し、子どもが集中して聴けるようなお話を行う。
求められる力:保育士として必要な基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方ができること。
<課題>
1.「ももたろう」(日本の昔話)
2.「3びきのこぶた 」(イギリスの昔話)
3.「おおきなかぶ」(ロシアの昔話)
4.「3びきのやぎのがらがらどん」(ノルウェーの昔話)
<条件>
・子どもは15人程度が自分の前にいることを想定する。
・一般的なあらすじを通して、3歳の子どもがお話の世界を楽しめるように、3分にまとめてください。
・お話の内容をイメージできるよう、適切な身振り・手振りを加えてください。
出展:一般社団法人 全国保育士養成協議会(https://www.hoyokyo.or.jp/)
造形表現でも同様に、指定や条件があります。
保育士試験ではピアノ以外の楽器も使える
実は、ピアノが弾けなくても「音楽表現」を選択することが可能です。
なぜなら、ピアノ以外で、「ギター(アコースティック)」や「アコーディオン」での弾き歌いも認められているからです。
仮に、音楽表現を選ぶとしましょう。
音楽表現を選ぶと、「課題曲2曲」を弾き歌いすることになります。
課題曲はコンサートのようなクラシック曲ではなく、童謡や手遊びなどの曲の中から事前に指定されます。
当日、楽譜を持参してもいいですが、「子どもの前で弾き歌いしている想定」なので、楽譜をずっと見ながら弾いているのは、よくありません。
間違えても止まらない、たまに楽譜から目を外すといったことも必要になります。
上記のことを、ピアノではなく、アコースティックギターやアコーディオンでできればOKです。
ピアノは弾けないが、ギターやアコーディオンならできるという方はチャレンジしてみるのもいいでしょう。
また、保育現場では、ピアノが弾けなくても、フルートやギターを使って子どもとの関わりを深めている保育士もいます。
アコースティックギターは子どもにも人気です。
保育園で求められるピアノのレベル
保育園で求められるピアノのレベルは「子どもの歌に合わせて伴奏ができる程度」です。目安として、「バイエル」という教則本で例えられていることが多くありますが、プロのような高い技術を必要としているわけではありません。
そのため、高いピアノスキルを持っているに越したことはありませんが、弾けなくても問題ないことの方が多いのです。
実際、童謡や手遊び、季節の歌を弾くことが多いため、「子どもに合わせて」「子どもを見ながら弾けるか」が重要になります。
例えば、「貨物列車」という歌を例に挙げてみます。
「貨物列車」は、子どもとのゲーム遊びの中で使うことが多いのですが、ずっと楽譜を見て弾いていては、周りの状況がわかりません。
楽譜を見ながら正確に弾くことより、リズミカルに弾く、テンポを変えて弾くなど、子どもが楽しめる工夫をすることが大事です。
ピアノの練習方法
ピアノを弾けなくても保育士にはなれますが、かといって全くピアノに触れないのも心配な方も多いのではないでしょうか。
少しでもピアノに慣れていた方が、仕事の幅が広がることは確かですので、この機会に挑戦してみるのもおすすめです。
ピアノの技能習得や練習方法は大きく分けて3通りあります。見ていきましょう。
短大・大学の授業でピアノを習う
まず、養成校へ進学し、授業で習う方法です。
養成校にもよりますが、集団で習うところと、マンツーマンで習うところがあります。
マンツーマンでの授業の際は、大学に勤務しているピアノの講師が自分のレベルに合わせたところから教えてくれます。
最初にピアノ経験などを聞かれることが多いので、正直に答えましょう。
無理して高いレベルを言うと、のちのち自分がつらくなります。
ピアノが弾けない、苦手な場合でも、1から基礎を教えてもらえるので安心です。
ピアノ教室に通う
ピアノ初心者が独学でピアノを習得するのは、かなり大変です。
保育園に就職するまでの間、少しでも上手になりたいと考えている場合は、ピアノ教室に通うことをおすすめします。
ピアノ教室では、音楽のプロの先生が指導してくれるので、上達が早いです。
また、自分の好きな曲を選んで練習させてもらうことも可能なので、楽しく続けられるでしょう。
マンツーマンの個人レッスンなので、恥ずかしがる必要もありません。
独学でピアノを練習する
ピアノ教室はどうしても授業料がかかるので、独学でがんばりたいという人もいることでしょう。
独学で学ぶ場合は、キーボードでの練習がおすすめです。
なぜなら、高額で、設置場所もとるピアノに比べ、キーボードはお手頃価格であり、しかも軽いからです。卓上型のキーボードもあるので、広いスペースがなくても練習できる点もおすすめです。
イヤホンをつければ練習時間も選ばないので、夜でも練習できます。
キーボードを選ぶ際には、76~88鍵盤のものを選びましょう。
あまり小さいキーボードだと、曲に対して鍵盤が足りない場合があるため、注意です。
ピアノを弾けなくても活躍している保育士は多くいる
ピアノを弾けなくても、活躍している保育士は多くいます。
「絵を描くのが好き」「折り紙をおるのが得意」など、自分の得意を活かしていきましょう。
自分の特徴を活かした保育
ピアノが弾けない保育士は自分の得意なこと、特徴を活かして日々保育に励んでいます。
どのように普段保育を行っているのか、実際の保育士のエピソードを紹介いたします。
エピソード1:【ピアノは弾けないが、アコースティックギターが弾ける】
保育園では月に一度、「おたのしみ会」が開かれます。
保育士が毎月ローテーションで出し物をします。
自分の番になり、趣味で習っているアコースティックギターを披露することに決め、子どもに人気の曲を弾きました。
すると、子どもたちが曲に合わせて歌ったり、踊ったりして笑顔に。
ピアノは弾けませんが、ギターを活かして楽しいおたのしみ会になりました。
エピソード2:【ピアノは弾けないが、折り紙が得意で動物園を作る】
小さいころから折り紙で作品を作ることが好きでした。
そこで、担任クラスでは、「作品展示会」に向けてクラスで折り紙の動物園を作ることに。
折り紙の動物ができるたびに、「ぼくもしたい!」「どうやって作るの?」と作り始める子どもも増え、あっという間にたくさんの動物が完成しました。
作品展示会当日には、他のクラスの先生や子どもも見に来て、大成功。
子どもたちがみんなうれしそうだったことが、1番うれしかったです。
ピアノ以外の保育技術でも保育士になれる!!
ピアノが弾けないからと保育士を諦めるのは、早いです。
養成校へ進学するとピアノは必修科目で習いますが、国家試験の実技試験ではピアノ以外の選択も可能です。
また、ピアノ以外の音楽との関わりを特徴としている保育園も多くありますので自分に合った職場を選ぶこともできます。
是非、自分の得意なことを伸ばして保育に役立てましょう。