一口に保育所と言っても、様々な種類があります。「認可保育園」「認定こども園」など、聞いたことはあるけど具体的な違いはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は職場体験や保育実習でお世話になる可能性の高い保育施設を中心に、各施設の特徴や運営方法などを紹介していきます。
そもそも保育所(保育園)とは?
保育所とは、児童福祉法に定められた「児童福祉施設」にあたります。
管轄は厚生労働省で、そこで定める保育所保育指針に記載されるとおり、「養護」と「教育」の面から保育することを目的とする施設になります。
入所できるのは、保育の要件である「保育を必要とする乳幼児」とされる子どもです。保育を必要とする乳幼児とは、両親の就労や傷病、心身障害、産前産後など家庭での保育が難しい0歳から就学前までの子どものことを指します。
職員の配置人数も子どもの人数に応じて、以下のとおりに定められています。
年齢 | 配置人数 |
---|---|
0歳児 | 子ども3人につき保育士1人 |
1〜2歳児 | 子ども6人につき保育士1人 |
3歳児 | 子ども20人につき保育士1人 |
4〜5歳児 | 子ども30人につき保育士1人 |
法律上は「保育所」となりますが、自治体の条例で「保育園」と定められているところもあるようです。この記事では一般的な「保育園」を使って解説していきます。
認可保育園と認可外保育園の違い
保育園には大きくわけて「認可保育園」と「認可外保育園」の2つがあります。
認可保育園
認可保育園は、国で定められている厳しい設置基準(子ども一人当たりの施設の広さ、防災•衛生管理、職員の数など)をすべてクリアし、そのうえで都道府県知事による認可がされた施設です。安全に運営するため、各項目で高い基準が設けられている一方で、延長保育や一時保育にも規定があり、保護者のニーズに広くこたえられないという側面もあります。
認可外保育園
認可外保育園は認可保育園に比べて緩やかながら設置•運営基準があり、新規開設後に保育園側から自治体への届出が必要になります。一般に「無認可」などと呼ばれることも多いですが、運営側が独自の教育方法を取り入れていたり、保護者のニーズに柔軟にこたえてくれたりと多様性に富んだ施設と言えます。
認可保育園の種類と違い
認可保育園はさらに、「公立」「私立」「認定こども園」「小規模保育」に区分されます。保育実習でお世話になるのはほとんどがこの認可保育園のなかのいずれかになりますので、違いを知ったうえで実習にのぞむと、より視野の広い学び方ができるでしょう。
保育園の1日については『保育園での1日の流れ』で紹介してますので参考にしてみてください。
公立保育園
公立保育園の設置•運営は各自治体で行っています。そのため保育士は公務員となり、保育士資格を有するものが公務員試験を受けることで正職員になることができます。最近は民営化や人件費削減などの影響で、新たな正職員を雇わず契約(嘱託)職員や臨時職員を雇っている自治体も少なくありません。
また、同じ自治体で運営する保育園同士での異動があるため定期的に職員が入れ替わり、教育方針や行事などに差異が生まれにくい傾向にあります。ただし保護者側から見ると親しんでいた保育士が数年でいなくなってしまうというデメリットも考えられます。
公務員ですので長く働いている先生も多く、実習に行った際はベテランの保育士から経験に基づく「技」をたくさん学べるでしょう。
私立保育園
私立保育園の運営元は多くが社会福祉法人ですが、20年前に規制緩和があり、NPO法人や企業が運営する保育園も増えてきました。保育士資格を有するものがそれぞれの定めた試験や面接を受けることで職員になれますが、最初は契約社員として雇用され、その後試験を受けて正社員登用という形をとっている園も少なくありません。運営元が複数の保育園を経営している場合は職員の異動があることも多く、このあたりは公立と同様です。
また、私立保育園では各々の教育方針を打ち出しているところも多く、キリスト教や仏教などの宗教観にもとづいた保育を展開しているところもあります。
保育実習で行く場合は、事前にホームページなどで事業内容を確認しておくことで、特徴ある行事や保育内容を理解しやすくなるでしょう。
小規模保育
2015年に制定された「子ども•子育て支援制度」により、これまで認可外保育園だった園が認可保育園として認められ、国や自治体の補助を受けられるようになりました。その背景には待機児童問題があり、特に都市部において0歳から2歳児の受け入れ先として注目を集める形態のひとつです。
保育所保育指針にもとづいた保育ではありますが、受け入れる子どもが0歳から2歳児のため「養護」の面を重視しているといえます。
小規模保育では、その種類によって職員の資格の有無に差があります。全ての職員が保育士という園から、半数以上が保育士、そして家庭的保育者や子育て支援員がいる園まで様々です。
認定こども園
認定こども園は、幼稚園と保育園両方の機能を併せ持った施設です。
管轄は内閣府(文部科学省、厚生労働省と連携)です。2006年にスタートした制度で、幼稚園の施設を利用することで待機児童の解消をはかったり、育児不安を抱える専業主婦家庭への支援などを目的としています。
入園対象となるのは、0歳から就学前の子どもです。0歳から2歳は保護者に就労などで認定を受けた家庭の子ども、3歳から5歳は制限なしにすべての子どもが対象とされています。
認定こども園にはさらに4つのタイプがあり、それにより保育士に必要な資格なども変わってきます。
幼保連携型
幼稚園、保育所の両方の機能を併せ持つ「認定こども園」として独立した施設です。保育者は幼稚園教諭と保育士両方の資格を持つ「保育教諭」として働き、「幼保連携型認定子ども園教育•保育要領」をもとに教育、保育を実施します。
幼稚園型
既存の幼稚園に保育所の機能が備えられた施設です。学校であるという法的位置づけは変わらず、幼稚園教育要領をもとに教育、保育を実施します。保育者は保育士、幼稚園教諭両方の資格があることが望ましいとされていますが、満3歳以上の教育ではどちらかの免許•資格でも働けます。3歳未満の保育にあたる場合は保育士資格が必須です。
保育所型
既存の保育園に幼稚園の機能が備えられた施設です。こちらは児童福祉施設という法的位置づけのまま、保育所保育指針をもとに教育、保育を実施します。保育者の要件については幼稚園型と同様の扱いですが、満3歳以上の担当でも教育相当時間(4時間程度)外の保育にあたる場合は保育士資格が必要になります。
地方裁量型
認可外の幼稚園や保育園が、認定こども園としての機能を備えたタイプの施設です。教育、保育は認可されている園と変わりない基準がありますが、内閣府によると地方裁量型の認定こども園は全体の1%ほどしかなく(平成31年4月現在)保育実習で行くことはほとんどないでしょう。
認可外保育園の種類と違い
認可外保育園にもいくつかの種類があります。実習で行くことはあまりありませんが、保育園の種類として知っておくと就職先を考えるときの参考になるでしょう。
企業主導型保育園
2016年に創設された企業主導型保育事業により増えはじめている保育園の種類です。認可外の保育施設ながら、国からの助成金を受けることができます。企業で働く従業員の子どもを預けられるほか、地域枠として地域の子どもを受け入れることもできるため、都市部の待機児童解消の目的も担っています。
この保育園を設置することができるのは「子ども•子育て拠出金」という税金を負担している事業主で、複数の企業が共同で設置するケースもあります。
職員は、保育士資格を有するものが半数以上、その他は「子育て支援員研修」を修了したものとされています。
企業主導型保育園の大きな特徴は、短時間保育から延長保育や夜間保育など、保護者の働き方に応じて柔軟な対応ができることです。病児保育や一時保育を実施する園もあり、その多様性で保護者のニーズに応じることができます。
この他、「託児所」「院内保育所」「ベビーホテル」なども認可外保育園となります。
保育園と幼稚園は何が違うの?
ここまで保育園の種類について解説しましたが、幼稚園とはどの区分に入るのでしょう。保育に携わる方でなければ意外と知らない各施設の法的な違いを表にまとめてみました。
幼稚園 | 認可保育園 | 認定こども園 | |
法的根拠 | 学校 | 児童福祉施設 | 就学前の子どもに関する教育、保育等の 総合的な提供の推進に関する法律 |
所管 | 文部科学省 | 厚生労働省 | 内閣府、文部科学省、厚生労働省 |
対象年齢 | 満3歳から就学前まで | 0歳から就学前までの保育を必要とする乳幼児 | 0歳から就学前までの全ての家庭の子ども ※0歳から2歳については自治体の認定を受けた子ども |
保育者の資格 | 幼稚園教諭 | 保育士資格 | 幼稚園教諭と保育士両方の資格を有する保育教諭 ※0歳から2歳児は保育士資格 |
職員配置基準 (保育者1人当たりが 見れる子どもの人数) | 学級あたり担任1人 ※1学級は幼児35人以下 | ・0歳児3人 ・1〜2歳児6人に ・3歳児20人 ・4歳児以上30人 ※学級人数の基準はない | ・0〜2歳児はおおむね保育所と同じ ・満3〜満4歳未満児はおおむね20人 ・満4歳以上児はおおむね30人 ※学級編成は幼稚園と同じ |
上記の表にあるとおり、幼稚園は文部科学省の管轄です。教育基本法により設置される教育施設、つまり学校にあたります。学校教育法で、「幼稚園は幼児を保育し、適当な環境を与えてその心身の発達を助長することを目的とする。」と規定されており、その教育内容は幼稚園教育要領にもとづき行われています。職員は幼稚園教諭の資格を持つものが、公立では公務員試験を、私立であればそれぞれの園の試験を受けてなることができます。
入園できる子どもは3歳から小学校入学までで、どの家庭の子どもも対象になります。しかし2015年に施行された「子ども•子育て支援新制度」により、新制度に移行した幼稚園に入園するには自治体の認定が必要となりました。
園によってはプレクラスとして2歳児保育を導入している園があったり、預かり保育が充実していたりと保護者のニーズに大きく応える施設も増えつつあります。
実習は保育所と別で設定されていますので、保育園との現場の違いを感じることができるでしょう。
それぞれの保育園の違いを知って保育実習にのぞみましょう
今回は保育園の種類について解説しました。各保育園の種類や区分を知った上で実習に行く事ができれば、保育のねらいや保護者との関わりについて、より深い学びができるでしょう。